↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰雪のベルクレア  作者: ラッキー中学生
旅立ち編②
PR
48/54

第47話 『帰還』

 

 その後僕たちは、再び屋根へと上がった。

 クルエルは街の奥へ視線を向け、静かに言ってくる。


「俺は今から、投げた剣を取りに行く。お前は先に、ティエラのもとへ戻っていてくれ」


「そう言われても、どこに隠れてるかなんて分かんねぇよ」


「もう魔物はいないんだ。呼べばいいだろ」


 そう言われ、屋根上を跳ねるように移動しながら声を張った。


「ティエラー!」


 空っぽの街に、僕の声が響いた。

 それはまるで、父さんと思いっきり騒いでいた浴室の中のように。


「ティエラー! どこだー! 返事してくれー!」


「イザヤーーッ! こっちよ!」


 見れば、彼女は大きく手を振りながら笑っていた。


 少しして、ティエラはムシュキとジェナを連れて玄関から現れた。


「大丈夫だった!? あれ、クルエルは?」


「あぁ。クルエルなら直ぐに来るよ」


 そう言うと、本当にクルエルが奥から現れた。


「おーい。お前らぁー」


 少し間抜けた声で、僕たちのほうに、とぼとぼと近づいてくる。

 鞘に収められた剣を、子供の頭でも撫でるみたいに撫でながら。


 そして僕たちは合流し、潜ってきたダンジョンゲートを探して再び歩き出した。

 その道中、クルエルがティエラへ質問した。


「なにか、話していたのか?」


「えぇ、少しだけ」


 その声は、いつもの調子より少し柔らかかった


          ――けれど。


 そんな彼女の表情は、どこか感情の置き場を失い、宙を彷徨っているようにも見えた。


「この子たち、近々誕生日を迎えるお母さまにプレゼントを用意する為に、ダンジョンへ潜ったそうなの。お金が、どうしても必要だったらしいのよ」


「そうか。たしかにダンジョンで得られる討伐証は、多くの金が手に入るからな」


「二人はアバンダスから来たみたいなの。あなた達が良ければ、一緒について行かない?」


「あぁいいだろう」

「俺も賛成だ」


 直後、クルエルがムシュキたちに向けて言う。


「これはお前たちのモノだ。受け取ってくれ」


 そう言って、クルエルはさっきの討伐証を差し出した。

 けれどムシュキは、すぐに首を横に振った。


「いいえ受け取れません! 僕たちは命を救ってもらったんです。それ以上、何かを得ることは出来ません」


 隣のジェナも、小さく首を横に振っていた。

 言葉にはしなかったけれど、その行動だけで『受け取れない』と言っているのが分かった。


 そんな二人を、クルエルはしばらく見つめていた。


「...そうか」


 そう言って、討伐証を持つ手を下ろした。


 僕はそのやり取りを見ながら、胸の奥が少し詰まるのを感じた。

 二人は金が欲しくて、危険なダンジョンへ入ったのに。


 ややあって、僕たちはゲートの前まで辿り着いた。

 赤い靄が、相変わらず門の内側で揺らいでいた。

 だがその色が、少し薄くなっているように見えた。


 それが、ボスを倒したからなのか。

 それとも、単なる気のせいなのかは分からない。


 そんなことを考えていると、クルエルが振り返ってきた。


「ちゃんと全員いるな。よし、帰るぞ」


 そうして僕たちは、赤い靄の中へと足を踏み入れた。


 すると瞼の裏が赤く滲み、再び耳の奥で『ザザー』と強い雨音のようなものが鳴り響いた。


 そして次の瞬間。

 僕たちは、元々いた森の中に立っていたのだ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

図々しいお願いで恐縮ですが、評価やブックマークで応援いただけると、飛んで喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。