56.家族との記憶〜自分のために〜
「私もね」
『あなたは私の子供じゃない―』
「おかあさ、んに言われたことがある。」
いつものように明るく話している陽葵だか、その目には、悲しさがあった。
「陽葵、、」
幼なじみである、司は陽葵と、家族関係性を知っていたのかもしれない。
「じゃあ産むなよって」
「言いたくなるけど...」
陽葵は、何故かそこで止まってしまった。
「言いたくなるけど」
「それを思い出すとここが暖かくなるんだよね」
陽葵は、そう言いながら胸の当たりをとんっと触れた。優しい顔をしながら。
「変なんだけどさ」
「多分お母さんが話した言葉で一番はっきりと覚えてるからかな。」
陽葵の話し方にさっきから引っかかるものがあった。
―あぁ、きっと
みんなは、続きを聞くことをやめた。
「お父さんは、もう何年も会ってないんだ。」
「...」
それは、つまり陽葵は、元の世界に帰ったら一人ぼっちになってしまうのだろう。
明るく陽葵は、話しているがみんなはかける言葉に困っていた。
「私も、元の世界に帰ったとしても」
「私の帰りを心配して待ってくれる人はいない。」
「それでも、この国の王を倒さなきゃ」
陽葵は、そう付け加えた。
じっと、大輝の方を見ながら。
「でも、」
大輝は、悩むように言った。
「王を倒さないと」
「もし、大輝が元の世界に帰りたくなっても」
「その世界が消えてちゃ意味無いでしょ。」
改めて思う、私たちがこの国の王を倒す理由それは、清き心でも誰かの頼みでなく。
―自分のためである。
「そうか、」
大輝も、納得していた。
「そうだよ!」
「帰るか帰らないかは全て終わったあとにしよう」
陽葵は、優しく微笑んだ。
「陽葵、ありがとう」
大輝は、お辞儀をしながら言った。
「やめてよ!」
「恥ずかしいじゃん」
陽葵は、頭を掻きながら照れるように言った。
──────
「陽葵に、そんな過去があったなんて」
陽葵は、体調があまり良くないようで自室で、寝ていた。これが月イチである。
「意外だったわよね」
花が、静かに言った。
「いつも、あんなに元気なのに」
陽葵の、思いがけない過去の話にみんなは驚きを隠せないでいた。
「だけど、陽葵は強いな」
「そんなことを俺たちに感じさせないんだからさ」
蓮が、言った。
たまに思う、素直に恥ずかしげもなく相手を褒める蓮がすごいと。
「そうだな」
司が珍しく蓮の意見に賛成していた。
「俺たち頑張るしかないな!」
なぜ、陽葵は、お母さんの記憶をあんなにも覚えていなかったのだろうか。
きっと子供だったからかな。
そう思っていた。
第56話を見てくださり、ありがとうございます!!陽葵の一面をお見せすることはできたでしょうか。次回も良かったら見ていってください!




