49.陽葵に包丁は危険です。
――1週間後
「はっ、はっ...」
蓮は手を自分の太ももに置いて、息を整えていた。
蓮の顔には、沢山の汗が垂れていた。
「おい」
「こんなで、へばるな」
司は、どこか見覚えのある黒いフードの着いた服を着ていた。
そう、服屋で見立ててもらった、あの服だ。
花の家族にあってから1週間たったあとに、服屋に行ってもらった。
「この服に慣れろ」
動きやすい服を選んだが、やはりいつものように1枚布の方が通気性が抜群だ。
「あっちぃ」
蓮は、いよいよ座って手で風をおこしながら体の熱を外へと逃がそうとしていた。
「おい」
「たてっ!」
「お前」
「熱血教師かよ。」
蓮は、思わず突っ込んでしまった。
「なんだそれ」
異世界人の司には通じなかったらしい。
「うわっ」
「すごい汗」
陽葵が、いつの間にか訓練所に来ていた。
蓮の汗を見ながらびっくりしていた。
「どうしたんだ?」
魔法の使えない陽葵が、訓練所に来るということは滅多になかった。
「えっとね」
「私にできることはなんだろうって考えたの」
陽葵は、少し照れながら言った。
きっと陽葵も、自分がみんなとは違うことに少しの焦りがあったのだろう。
「だから、」
「お料理をしようと思って」
陽葵の目に、キラキラと光が見えた気がした。
やる気に満ちている、考えなくても分かった。
「やめた方がいい」
いつもは賛成してすぐにやらせるはずの司が何故か今回は食い気味に反対をした。
「なんでよ」
陽葵は、少し悲しそうにしながら言った。
「あのこと忘れたのか?」
「くっ...」
どうやら陽葵は、料理に関する前科があるらしい。
「あのことってなんだよ」
話を聞いていた蓮が質問をした。
「あぁ、」
「何年か前も今みたいに料理をするって意気込んでたんだよ」
「だがな、包丁で野菜を切ろうとしたら」
「...」
「自分の指を切ってたんだよ」
蓮の喉の奥から「ヒュッ」という音が聞こえた。
陽葵は、運動、勉強全般ができないが今日からは料理もそこに加わった。
「だから危ない」
「ダメだ。」
「その代わりこれを運んでくれないか」
最初は司もいよいよ陽葵に冷たくなかったと思ったがやっぱり甘かった。
陽葵を、悲しませないために軽めの司達が訓練で使っていた本を持ってもらうように頼んでいた。
「分かった」
少し不貞腐れながら陽葵は、とぼとぼと歩いてった。
「全く陽葵は」
陽葵の丸まった背中をみながらニコッと笑う司をみながら蓮はニヤリと微笑んだ。
「きしょいぞ」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




