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255/255

255.龍真と天龍、最初の出会い。

「あなたこそ誰ですか?」


その声はこの、薄汚れた場所とは不釣り合いな女の子の声だった。


俺は、深く考えずにその声がした方に歩いていった。


「あんたか?」


そうして、檻の前に立った時

俺は久しぶりに驚いた。


「王女様?」


何度かしか見たことがないが

俺でも分かった。


整った顔に美しい金髪。

吸い込まれそうな瞳。


街で、王女様の話をしている人の大体は容姿についてだったから。


「あなたは?」


否定しないということは

俺の発言は合っているということだろうか。


色々質問したいことはあったが、

とりあえず質問には答えた。


「龍真」


何となく、勇者ではなく名前を答えた。


「そう、龍真」

「いい名前ね。」

「私にも名前に龍が入ってるの。」


くまの酷い目をくしゃっとしながら笑った。


「あの、なんで王女様はここにいるんですか?」


敬語で話した方がいいよな。

一応王族だし。


「それは」


まずいことを聞いたか?


「お父様の期待に応えられなかったからかな。」


ボソッと消えそうな程の小さな声で言った。


「父さん」


この時の俺にはその言葉は重かった。


「私のことはいいから」

「あなたの話を聞かせて?」


「えっ?」


「久しぶりに誰かとお話がしたいの!」


そう笑う君は、本当に楽しそうだった。

だから、いつもだったらしないのに

俺はつい自分の話をしてしまったんだ。


「俺、勇者なんだ。」


「まぁ、」

「じゃあ龍真のお父様も、」


しまった。

また、何かを言われるんじゃないか

父さんをバカにされる。


「それは、」


もう、嫌だ。


「きっと、ものすごい努力をしてきたのね。」


「は?」


想像をしていた言葉とは離れすぎていて思わず

失礼なことを言ってしまった。


「だって、」

「あなたの手にはこんなにも努力の証があるじゃない。」


そう言って、君は俺の手をとった。


そういえば、何度も何度も剣を握ったから

俺の手は、1年前に比べてボロボロだったな。


「こんなのは勇者になったんだから」


「当たり前なの?」

「私は剣を握ったことがないから本でしか知らないけど」

「あなたの立ち振る舞いも視線も全て」

「龍真自身が努力をしてたからでしょ?」


そうか、無意識にしてたから自分でも気づかなかった。

俺も、俺なりに成長できていたのかもしれない。


「それにね、」

「私あなたのお父様に1度だけお会いしたことあるの。」


「そうなんですか?」


「うん」

「私、あなたのお父様を見て」

「単純だけどかっこいいと思ったわ」


君は、そう言った。


「なんで?」

「王女様は知らないの?」

「父さんはたった一人の女の子を守って死んだんだよ?」


もしかしたら、捕まってるから何が起きていたのか知らないのかもしれない。

じゃないとこんなこと思うはずない。


「えぇ」

「もちろん知ってるわよ。」


「ならなんで?」

「勇者は大勢を守らないと」


なんで、俺はこんなに熱くなってるんだよ。

こんなことしても、意味ないのに。


「それは、違うと思う。」

「確かに、その女の子を助けなければ」

「あなたのお父様は、生きていたのかもしれない。」

「未来に繋げるために一人の命を犠牲にしてもいい。」


君は、俺の手をそっと離し下を向いた。


「でも、あなたのお父様はきっと違ったんじゃないかな。」

「お父様は、未来よりも今自分ができる最大限を」

「その国民1人に費やしたんじゃないかな。」


「...」


君は、再び俺の手を両手で握り。


「そうだとしたら」

「あなたのお父様はこの国にとって」

「最も誇るべき勇者様だね。」


「っ、」


そう言ってくれた君の笑顔は

今でも忘れることはない。


今まで言葉に表すことの出来ない感情を表せないまま心の中からすっと消してくれた。


俺のことも父さんのことも君はそんな笑顔を見せてくれるほど信じてくれた。


だから、俺は...

ここまで読んでくださってありがとうございます。

今回は、3年B組のみんなに会うちょっと前の龍真と天龍2人だけのお話でした、いかがだったでしょうか。これからも、陽葵達をよろしくお願いします。

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