205.これは、まさにエレベーターの進化バージョン!?
「...」
「あれ?」
「今回は、」
「えっ!とか言わないんだね。」
陽葵は、思いのほか薄い反応に逆に驚いてしまった。
「もう、驚き疲れた。」
「心の中では叫んでるけどさ」
「もう、驚きすぎて声が出ないよ。」
一気に聞くには多すぎたということだ。
「それもそうだね。」
「でも、八重さんは」
「えっと、奥さんの名前ね。」
「お母さんのいない私にとって」
「ずっとお母さんみたいな存在だったから。」
そう話す陽葵の顔は幸せそうだった。
「お母さんみたい?」
「あぁ、それはね」
「って、私自分語りしすぎじゃない!?」
「続きは後でするから」
「とりあえず逃げよう!」
「時間も迫ってるし!」
「ちょっと、」
「急に急かされても!」
「てか、逃げるたって」
「どこから逃げるの!」
「時間が迫ってるって!」
急に何かを思い出したかのように
陽葵は、走って扉を開けた。
「逃げ出せる場所は」
「ここから階段で3階上がったところの」
「使われてない牢屋の階」
「いつもは、兵隊が歩いてるんだけど」
「この時間は、絶対にいないの!」
そう言って、陽葵は走り出してしまった。
「ちょっと!」
「お前らもここで死にたくなかったら」
「着いてこい!」
司もそう言い捨てて走ってしまった。
「なんなのこれ!」
「ドラマチックの欠けらも無い!」
それに続いてみんなも走り出した。
──────
26人全員が階段を全速力で駆け上がり
確実に行きよりも早く階段を進むことができた。
「よし、」
「誰もいない!」
陽葵は、角から兵士がいないか確認してから
前へ進んだ。
「なんか、不気味」
地下ということもあって
薄暗く何故か地面の所々に水たまりができていた。
「ここは、あまり人が来ないし」
「掃除をする必要も無いからね」
「まぁ、昔も同じぐらいの汚さだったけどね。」
「陽葵は、ここ知ってるの?」
「もちろん!」
「ここ、お母様が死んでから」
「城から抜け出すまで」
「私の部屋だったから。」
「えぇぇぇ!」
さすがに、驚き疲れても
声が出てしまった。
「こんな汚いところに」
「しかも、この国のお姫様が?」
悪いことをしたとしても
ここには入れないだろ。
「でも、そのお陰で今抜け出せるよ?」
「そうなんだけどさ」
「...」
「陽葵、帰ったら頭いいこいいこさせてね」
「なに言ってんの花」
「いや、長女としてそうしなきゃいけない気がして」
「そ、そうか?」
──────
「それじゃあ帰ろっか」
「でも、ここに出口なんかないぞ?」
蓮の言う通り
出口に繋がるとすればさっきの階段だけで
あとは薄汚れた石でできた壁しかない。
「ちっちっち、」
「私は出口を堂々と作るばかではないの」
「ちょっと見てて」
陽葵は、そう言って何の変哲もない壁に手を伸ばした。
「幻想魔法」
「解除」
さっきも聞いたことのある言葉だ。
陽葵が言い放ったあと
壁の一部が一瞬歪みを見せたかと思えば
壁自体が消えてしまった。
そのところには人一人分のくぼみができ
床のところには見覚えのある魔法陣が書かれていた。
「これって、」
「空間魔法?」
「そう!」
「ここに自分の魔力を少し流すと」
「外に出れるよ!」
「なにそれすご!」
まるで、エレベーターの進化版のようだ。
「じゃあ」
「みんなは先に」
「戻っていて」
「陽葵は、行かないの?」
「いや、すぐ行くよ」
「でも、取りに行かなきゃ行けないものがあるからね。」
「?」
「この先絶対に必要なものを」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回も、少しだけこの世界に付き合ってもらえたら嬉しいです。




