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愛さえあれば

 ガット家が司法機関に取り調べを受けた。どれほどの取り調べを受けたとしても決して蹴口を開かず今のところ証拠不十分で放免された。

 一応ギリギリで逮捕されなかった。されなかったが常に監視の目が光っている状態だ。何かあればすぐに取り潰されてしまうだろう。

 キルヒャーは年齢が若く学生という身分であったため無関係であり連行逮捕対象ではなかったが家が潰されたら野垂れ死に以外の道は残されていないだろう。

「あんまりっす、あんまりっす、どうして兄貴ばっかりあんな不幸なことに」

 今日もグレンは通常営業中だった。

「いや、なんでって」

「昨日のこともう忘れたんだろうか」

 ピーターとクルトがひそひそと囁き合っていたが聞いていない。

「兄貴はあんな不幸な目に、家族は今はこっちにいるけどいつ捕まっていなくなるかわからないんですよ、仲間に裏切られて家族まで失うことになるなんて」

「そうだな、また証拠固めが終わっていないみたいだな」

 色々とガット家の悪い噂を聞いたし、司法機関も周囲を嗅ぎまわっていた。だがいまだに証拠らしいものは見つかっていないようだ。

 そして、カーライルあたりがピーターが伯母から聞き出した習慣から割り出したちょっと後ろ暗いルーティンを密告したのだが。

 祖のルーティンの際にちょっと怪しげなものが見つかったりしたのだが。あくまで部下の仕業と手下を切り捨てて言い逃れたのだが疑いの目が晴れるわけがない。

 そんなわけであちらのご近所では夜逃げを選ぶか捕まるかで二派にわかれ熾烈な賭けが始まっているらしい。

 どちらにしてもキルヒャーの未来は暗いだろう。

「こちらにできることは無いな」

 カーライルはそう冷たく言った。あったとしてもやるつもりはなかったろうが。

「我々にできることは無い、何かできるとしたらお前だけだ」

 いきなり何を言い出すんだとピーターとクルトは目をむいた。

 しかしそんな様子はグレンには全く気が付かない。

 カーライルはグレンの目を覗き込んだ。

「愛があればどんなこともかなうと言っていただろう」

「愛があれば」

「そうだ、お前だけがあの男を救えるんだ、お前が行くべきなのはどこなのかわからないはずないだろう」

「俺だけが?」

 カーライルはグレンに言った。

「この場合行動あるのみだろう」

 グレンはそのまま駆け去った。

「あの、どういうことなんだよ」

「これから先、あいつはあのあほに心からの愛を持って尽くすだろう、どんなことがあってもな」

 カーライルは冷たく笑う。

「いや、不細工な男に尽くされてうれしいもんか?」

 キルヒャーは基本的にかわいい女の子が好きな男だ。チェリアも性格はともかくかなり愛らしい容姿の持ち主だった。

「決して愛せない相手に付きまとわれるのがどれほど苦痛か思い知ることになるだろうか、あいつは決してあきらめないだろうし」

「もしかしてグレンって」

 クルトが酢を飲んだような顔になる。

「かなり高確率で無自覚な同性愛者だ。おそらくチェリアと無理やりくっつけようとしたのもそれによって疑似恋愛しているつもりだったんだ」

「うわあ」

 ピーターが呻く。

「地獄までついていくだろう、真実の愛ゆえにな」

 カーライルは悪魔のように笑った。


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