華王女学院
そして、気がつけば、オレは、ちょうど十校目にとりかかっていた。
いつものようにヒロが、華王女学院のデータを携えて自宅まできてくれた。
華王女学院は、有名なスポーツ選手を数多く輩出していることで名の通った学校だ。
オレは、自室の机に座り、オレのベッドに勝手に寝転んでマンガを読んでいるヒロを横目に、ディスプレイに表示される華王女学院の女子生徒のデータを流し見していた。
オレは、いつも、まずデータの中から自分の好みの女の子を何人か選び出し、さらにその中から一、二人に絞りこむようにしている。
さすがに一校につき何人もの女の子をナンパしに行くのは大変だし、また一校にそれほど時間をかけてはいられない。
そのため、オレは一校あたり多くても二人、できるだけ一人に絞り込むようにしている。
その絞り込みは、専らオレの主観、フィーリングに拠ることになる。
その絞り込みによる取りこぼしがあるかもしれないと考えないわけではなかったが、そこは自分の感性を信じるしかない。
自分が好きになるかもしれない女性をオレが見逃すわけがないという根拠のない自信もどこかにあった。
こうして、オレは、一人の女の子をセレクトした。
その女の子の氏名は、綾瀬ミカ。
十六歳の高校二年生。
特にクラブ活動などはしていない。
主な立ち回り先は、総合格闘技KAZ道場。
(総合格闘技KAZ、なんだこれは?)
オレは、格闘技とかには全く興味がないため、皆目見当がつかなかった。
「ヒロ、総合格闘技のKAZって知っているか?」
オレは、まだマンガを夢中で読んでいるヒロに尋ねてみた。
「ハヤタ、知らないのか?今、流行のセミダイブ型VRを使った格闘技だよ。詳しいことを知りたければ、『KAZ』で検索してみな。」
ヒロが、読んでいるマンガから目を離そうともせずに、面倒くさそうに教えてくれた。
オレは、早速「KAZ」で検索をしてみた。
その結果、それがいわゆるeスポーツの一種であることが分かった。
eスポーツとは、「電子機器を使って競うスポーツ」を意味している。
そして、セミダイブ型VRというのは、現実世界での身体の動きを仮想空間でのそれに変換するバーチャルリアリティのことらしい。
一時期、フルダイブ型VRを使った格闘技というのものも流行ったが、それは完全に仮想空間に入り込み、脳からの電気信号だけで仮想空間の身体の動きをコントロールするものであった。
そのため、現実世界での身体の動きは不要で、要は完全なゲームの世界の格闘技にすぎなかった。
これに対して、セミダイブ型VRを使った格闘技であるKAZでは、現実世界での身体の動きが必要となる。
格闘技を行うのは、あくまで仮想空間の中の3Dアバターであるが、そこでの3Dアバターの動きの基本となるのは現実世界でのプレーヤーの身体の動きである。
その現実世界でのプレーヤーの身体の動きに、仮想空間での武器や攻撃による効果などを加えて、相手と闘うようになっている。
そして、この格闘技におけるスキルは、単にゲームとしての技術だけではなく、どちらかというと現実世界での身体の動きに重きが置かれている。
よって、競技者は、現実の格闘技や武術さながらの身体の動きを要求される。
フルダイブ型VRを使った格闘技が大きなヘッドギアをつけたまま寝た状態で行うのに対し、セミダイブ型VRを使った格闘技であるKAZでは、最軽量化されたゴーグルとヘッドセットのみを装着して、映し出されたスクリーンの画像を見ながら、三畳ほどの広さのスペースで実際に身体を動かして行う。




