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覇王竜は暇を潰す  作者: コミネカズキ
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パーちゃんと大魔王ギデゴガ

ソレは彼方から飛来した。

風を切り雲を割き海を渡り、恐らくソレを発した主より遥かな距離を先じてこの場に辿り着いたのだ。

大魔王の黒曜神の剣と激しく衝突したソレはその場でクルクルと回りながら、まるで俺を庇うかの様に空中に浮遊し続けている。


「な!?」


大魔王ギデゴガにとっても因縁浅からぬソレをみて、ヤツも思わず声を上げ一歩後ずさる。

そりゃあそうだろう、散々苦しめられたのだ。

300年たっても苦渋の記憶は薄れていないらしい。


「まさか……勇者ナイトの……フルキャンセルシールド……だと??馬鹿な!!」


フルキャンセルシールド……真月の盾と呼ばれるソレは数多の女神の祝福を受け、ありとあらゆる攻撃・呪文・能力・特技を打ち消す能力を持つ。

抜群の相性の良さ(悪さ)を発揮し、先の戦いにおいて大魔王ギデゴガを多大に苦しめたのだ。


「人間の寿命はせいぜい100年弱のはず!なぜ持ち主を選ぶこの盾が!?」


「残念だったなギデゴガ!俺の力を太陽神の剣……じゃ無い、今は黒曜神の剣だったか?に封じても、それはあくまで直接的な俺の力だけでしかねーんだよ。……力ってのはな、自分で発揮する以外にも、もう一つ発揮の仕方が有るんだ。」


もっとも、その事を俺が学んだのもここ最近なんだが。

ギデゴガが意味がわからないといった表情でこちらを睨む。


「今からくるヤツは勇者ナイトの力と俺の力を受け継いだハイブリットだぜ!」


ついでに駄女神の修行も受けてさらに強くなっているだろうが……癪なのでそれは割愛します。


「た、確かにとんでもない力を秘めたヤツがこちらに高速で近づいている……。合流されると面倒くさいな。ならば!」


そう言うと大魔王ギデゴガは黒曜神の剣を再び振りかぶる。


「今すぐ貴様を完全に封じてやる!」


「ゲ〜キ〜ヒ〜マ〜デスっ!!」


ドゴゴワワーーーーン!!!


その時、巨大な火炎の大波がギデゴガを薙ぎ払った。


「おいおいギデゴガ、俺の力と経験を受け継いだのは1人では無いんだぜ?油断するなよ?」


炎が通り過ぎ視界が開く。

そこに立っていたのは、我らが次期魔王候補、大魔神官パーデスだった。


「なに?お前は余の一撃で葬ったハズ!?なぜ生きている!?」


パーちゃんを舐めるなよ?毎日俺がぶっ飛ばしてるんだからな、主にストレス発散の為に!

その甲斐があって今ではちょっとやそっとの攻撃(ツッコミ)じゃあ死ななくなったのだ。


「ちょっとアンタ!イキナリ攻撃してくるとか何なんですか!超痛かったじゃ無いですか!一瞬気を失いましたよ!?」


「大魔王の攻撃を受けて……超痛かった……だけだと……?こいつ、何者だ?」


「我こそは覇王竜様の一番弟子にして未来の大魔王!戦慄の闇神官!大魔神官パーデスです!!」


いやいやいや、誰が一番弟子だ!

あとやっぱり大魔王の座を諦めていなかったのね。

ブレ無いな〜こいつ。

あと二つ名がウザい。


「だ、大魔神官パーデス……だと?き、聞いたことが無いぞ?」


まあそうだよな。


「無礼な!いくら可愛い顔した女子と云えど容赦しませんぞ!?名を名乗りなさい!」


「な!?……か、かかか……可愛い!?余が……可愛いだと!……ハレンチなー!!」


うわ〜そうきたか。

大魔王がウネウネしながらツンデレっぽくなったので、代わりに俺からパーちゃんに説明する事にした。


「えーとな、一応そいつが大魔王だ」


「は?」


困惑するパーデス。


「いやだから、そいつが!大魔王ギデゴガだよ〜〜!」


「え?」


駄目だ、あいつの脳みその処理が追い付いてない。

しかし当の大魔王本人はワナワナしながらパーデスに向き直した。


「……そうじゃ。余が大魔王ギデゴガじゃこの不埒者がーーっ!」


そう叫ぶと複数の最上級呪文を連発しながらパーデスに向かい突っ込んでいく。

上級火炎魔法ゲキヒマデス。

上級風魔法キタカゼマッパ。

上級氷結魔法クロヒョウケツマ。

上級水流魔法バクスイマーズ。

上級大地魔法ダイバクハツマ。

正に魔力の宝石箱や〜。

いや、魔法の百科事典や〜。

しかもその一つ一つが通常のそれよりもとんでも無く高火力である。


「え!?うえ〜!?ぎょえ〜〜っ!!」


うん、イイぞ!良い悲鳴だパーデス君!


「熱いっ!寒いっ!痛いっ!熱いっ!寒いっ!痛いっ!熱いっ!寒いっ!痛いっ!助けてっ!!」


パーちゃんが小刻みで心地の良い多種多様な悲鳴を上げながら逃げ惑う。


「不埒者っ!不埒者っ!不埒者っ!不埒者っ!不埒者っ!死ねぇ〜!」


ギデゴガが顔を真っ赤にしながら追いかける。

しかしギリギリの所でパーデスが避ける。

良く見ると小癪にも微弱な風魔法をこっそり唱えてその反動で微妙に身体の軸をずらして避けている。

しかも多少喰らってしまった時は即座に治癒魔法で回復している。

……何度も何度も俺や赤竜にぶっ飛ばされているうちに回避と防御が極端に上手くなった様だ。

何となく面白くない。


しかし、やはり数分後には体力の限界が来たらしく回避行動中に足が絡まり無様にゴロゴロと転がりこけてしまった。


あーー、限界かな〜〜。


「さあいよいよ追い詰めたぞ……殺してやる不埒者め!」


「ひぃ〜〜お助け〜〜」


健闘虚しく大魔王に追い詰められ、悲鳴を上げるパーデス。


しかし悪運が強いと言うか何というか、パーデスにトドメを刺す寸前で大魔王ギデゴガの動きがピタリと止まった。


一瞬遅れて俺もその理由を理解する。


「来る……強い力を持つ者が……。」


一瞬の後……俺とギデゴガの中間辺りに真っ赤な鎧に身を包んだ少女がまるで彗星の様に飛来した。


つづく。

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