ミラクルとマジカル
パーデス君のピンチに修行を終えたアルトが駆けつけた。はたして……
赤い彗星の様に空から舞い降りたソイツは俺の知っているソイツとは若干違っていた。
短めだった髪の毛は肩まで伸び、心無しか身長も伸び、何より放っている気の質があからさまに濃厚に力強く変化していた。
「あ、アルト……か?」
その変化はおそらく悠久の空間で1年間修行をしたからだろう。
しかし、昨日までの姿とこうも変わってしまうと、そう質問せずにはいられなかった。
「は……ハーさーん!会いたかったっ!!」
こちらに満面の笑みを浮かべたソイツ……アルトは勢い良く駆け寄ってくると俺にしがみついた。
「わ、わ~~!?」
イキナリの展開にしどろもどろになる俺。
もと魔王の麺木丸つぶれである。
「あっ!ゴメンナサイっ!一年ぶりに会えたから嬉しくってつい……!」
「あ、いや大丈夫だ!大丈夫だけどビックリした!」
前にも述べたが俺は女に対して余り免疫が無い。
修行とバトルに明け暮れる日々だったから、この300年。
目線を上げるとコチラをみてパーデスがニヤニヤしている。
ギデゴガに関しては男友達の部屋でエロ本を見つけてしまった思春期の娘の様に真っ赤になってる。
お前ら何なの!?
さっきまで殺し合ってたよね!?!?
ホント何なの!?
こっち見んなよ!!
「え~~ゴホン!」
いたたまれなくなったのか、いつの間にか近寄って来ていた赤竜が咳払いを一つして喋り始めた。
「アルト様、あちらでパーデス様に剣を振りかぶっている女子は……この度封印を解き復活しました大魔王ギデゴガでございます。
えー、ギデゴガさん。こちらの女性は勇者アルトさん。勇者ナイト殿の力を受け継いだ現在の勇者で覇王竜様の弟子でもあります。」
「「あ、どうも。」」
赤竜の解説を聴きお互いに会釈する大魔王と勇者。
なにこの構図?合コンじゃねーんだぞ?
「アルトさん!助けてくださ~い!」
ギリギリで命拾いしたパーデスがか細い声で叫ぶ。
あ、忘れてた。
てかコイツさっきまでニヤニヤしてなかったっけ?
「あ、はい。今助けますね~。」
心無しかアルトの対応も雑である。
しかし、このやりとりを見て何故か憤慨した奴がいた。
他ならぬ大魔王ギデゴガその人である。
「おい、不埒者。貴様余に可愛いとか言っておきながらあの勇者にヘラヘラ話しかけるとは……どう言う了見だ!」
あれあれ?雲行きがおかしいぞ?
「この浮気者ぉ~~~!!!」
「えええ~~~~?????」
チュッドーーーーーンッ!!!
ギデゴガの放った爆発魔法でギャグ漫画みたいに吹っ飛ぶパーちゃん。
「余と言うものがありながら……勇者アルトよ!お主は敵じゃ!恋敵じゃ!世界諸共討ち滅ぼしてくれるわっ!!!」
とんだヤンデレである。
当のアルト本人は訳が分からず困惑している。
てかパーデスがモテてること自体が俺的には大困惑なんだが……。
ともあれ
「アルト!俺の力の殆どがアイツの剣に封じられちまった。何とかしてアイツから剣を奪ってぶっ壊してくれ!」
弟子に頼むのは気が引けるし情けないが……背に腹は変えられない。
するとアルトが、何故か満面の笑顔になった。
え??何で??
「解りました!……てゆうか、なんかハーさんに頼み事されるのが新鮮で……嬉しいです。なんか自然とニヤニヤしちゃいます。」
ギャーーーー!超恥ずかしいっ!!助けて~~!!!
「と、言うわけで大魔王!その剣に封じられたハーさんの力、返してもらいますよ!」
「ぐぬぬっ!こヤツ二股かっ!!」
お前はお前で何言ってんだ!?
「良いだろう!貴様の様なビッチ、腸を喰らい尽くしてくれるわ~!」
ビッチって言うなや!
てか腸云々は決めゼリフなの?
バラ〇ス憧れなの?
せめてゾー〇にしろよ。
「誰がビッチだーっ!!」
そう言うとアルトは魔力と気を高める。
「ゴウライゲキマ・アームド!!」
雷系魔法の最強呪文を容易く見に纏う。
あからさまに昨日までのアルトとは魔力の質量が違う。
悠久の空間での修行の成果が如実に出ている。
ここまで育てるとは……やるな~ルナティック。
「だっ!!」
全身に雷撃を纏い正に電光石火で一気に距離を詰めるアルト。
一瞬ギョッとした表情をみせるギデゴガ。
しかし……
「甘いわっ!」
既の所で身を翻す。
雷と一体化したアルトの攻撃を時にかわし或いはいなし、クリーンヒットをさせない。
「だあっ!」
気合いで放ったアルトの一撃を華麗に避けたギデゴガは、流れる様な動きでそのままアルトを蹴り飛ばそうとした……が、アルトとギデゴガの間を先程まで空中でクルクル回っていた真月の盾が塞ぐ。
「くっ!?フルキャンセルシールドか!?」
真月の盾はそのままアルトの左腕に吸い込まれる様に装着された。
「覇王竜擊斬っ!」
装着した盾で間髪入れず必殺の一撃を放つアルト。
「うわ!?」
慌てて魔力障壁を貼るギデゴガ……だが、残念!
その技は魔力障壁だけじゃ防げないぜ?
俺のオリジナル技である覇王竜擊波は魔力と気を練り合わせて放つ技だ。
その派生技である覇王竜擊斬もしかり。
魔力だけでは防ぎ切れない。
ズバババっ!
激しい黒い稲光の斬撃をくらい彼方まで吹っ飛ぶ……かと思ったのだが、数メートル程で耐えて停止する。
流石に大魔王である。
「なかなかヤルが……しかし所詮は人間。最終形態の余の敵では無いわ!」
「なるほどなるほど、流石に素手や盾ではダメージは与えられませんか。……じゃあ」
そう言うとアルトは背中に手を回し、本日まだ鞘から1度も抜かれていなかった愛刀を抜き放った。
「そちらも剣を持ってるみたいですし、僕も剣で戦って構いませんよね?」
試練を乗り越えアルト専用に錬成された剣……アルトの剣である。
だが、本人は頑なにこう呼んでいる。
「マジカルハートソードっ!!」
アチャー、叫んじゃった。
大魔王様のあんぐり顔が目に浮かぶ。
「な!?ま、マジカルハートソード……だと!?か……可愛いじゃないか!!」
流石大魔王様だ。
俺の想像の斜め上の反応をする。
「な、ならば余の件も黒曜神の剣などと言う無粋な名前は……捨てるぞ!今日からこの剣は、ミラクル……ミラクルブラックブレイドだっ!!」
やめたげてっ!伝説の太陽神の剣さん涙目になるわ!
「ふっ、私の【真・大魔王の杖】のネーミングセンスには敵いませんよっ!」
パーデス君ややこしくなるから参戦するな!
「な!?自分の杖に余の名前を入れるだと……!やはり貴様っ……不埒者!?」
はいますますややこしくなった~めんどくせ~
「ご、ゴホン!まあ良い。では貴様のマジカルハートソードと余のミラクルブラックブレイド、どちらが上か勝負だ!」
アルトの剣とギデゴガの黒曜神……じゃないミラクルブラックブレイドはもともとは同じ鉱石から作られた武器である。
しかもどちらも勇者の武器として錬成されている。
つまり潜在能力は同等……なので持ち主の力で優劣が付く。
そして確かにアルトはルナティックの修行前より遥かに力を増しているが、それでも大魔王と比較すると俺には心許ないように見える。
「はーーっ!」
「はあっっ!」
二本の剣がぶつかり合う。
ガキイイイーーーーン!!
弾ける閃光。
そして、力負けしたのはやはりアルトだった。
「うわーーっ!」
数メートル先まで吹き飛び地面に叩きつけられるアルト。
「ふ、どうやら余のミラクルブラックブレイドの方に軍配があがったようだな。」
不敵に微笑む大魔王ギデゴガ。
「アイタタタ……。今の攻撃ではっきりわかりました。どうやら今の僕ではアナタには勝てそうもありません。」
おいおい、まじかアルト。
「ふふ、あきらめが良いな勇者よ。では我が軍門に下り……」
「あーあ!ハーさんと戦う時までとっておきたかったんですけどね。仕方ない。」
「え?」
言葉を遮られ若干キョドる大魔王。
「アナタに負けちゃったらハーさんとも戦えませんからね。行きますよ!」
アルトはそう言うと身体をピンとし垂直に立ち目を閉じる。
次の瞬間、アルトの身体から神の力……神力が溢れ出した。
「神化っ!!!」
つづく。
次回、アルト変身します




