別れと再会
5話
朝になって
紗奈は、ノスリに言った。
「ありがとう。大変な任務を果たしてくれたね。
お前は肝心な時に慌てる。
だから自分をしっかり守れ!
二度と人間に捕まったりするな!
羽を切られるな!
じゃあ、元気でな!」
「うん,何度も助けてくれてホントにありがとう。
紗奈、ぼくの目を見て!」
ノスリの目が青く光った。
紗奈はノスリと目を合わせた。
すると、岩の上に立つ甲斐犬。甲斐犬の言葉。影と戦う甲斐犬。黄金色に輝きながら落ちていく勾玉。次々と迫り、ぶつかる木々の枝。円を描いて落下が止まった勾玉。星。
ノスリが昨日見た情景が紗奈の目に映された。
「お、お前も,神獣だったのか!そうだよな。話せる鳥なんて変だよ。「置いて行っちゃダメ」って言ったもんな。なんとも思わず担いできたけど。
私を助けるために遣わされたんだね。」
「うん,実は神産霊のお祖父様が行けって。命を受けたのは初めてだから嬉しくて紗奈のところに向かったの。でも・・・。
だからありがとう。紗奈のこと大好きだよ。」
「うん。」
紗奈もこの世話の焼けるノスリを手放すのは辛かった。
「さあ、自由だ!飛べ!高い空はお前のものだ!」
「紗奈!ぼく忘れない!」
そう言うとノスリは、紗奈の腕から飛び立って山の稜線のはるか上に点となり、
そして、ついに消えてしまった。
宮殿へと向かい、上皇に案内された紗奈。
紗奈は、上皇にお辞儀をしてから
「地の草木と花の間に住む紗奈が、黄金勾玉をお届けに参りました。」と言った。
「ご苦労であった。紗奈が好むと言う蜂蜜の菓子と茶を用意させておる。ゆるりとくつろぐが良い。褒美も忘れずに持つのだぞ!」
天皇は,嬉しそうに言った。
紗奈は、帰りにいっぱいのお菓子と褒美を持たせてもらって背中の袋はいっぱいだった。
鼻歌を歌いながら歩いていると風が胸を吹き向けた。
お呼びだ!
紗奈は三柱神の下に向かった。
そして、三柱神の前でいつものように正座をして、手をついて3角を作り、頭をそこに乗せるお辞儀をした。
神産巣日神が、「紗奈,おもてをあげよ!良くやった。褒めて遣わすぞ。」と髭 を撫でた。
天御中主神と高御産巣日神も頷いた。
紗奈はゆっくり頭を上げた。
「そなたが生まれたときは透き通るような赤子でのう。
今にもダイヤモンドダストの輝きと共に消え去ってしまいそうじゃった。
それがどうじゃ。今はたくましく,おのこのようじゃ。紗奈と名付けたのはワシじゃが、
もっとふさわしい名をわしらで考えておるぞ。」
それから巻き物を取って広げた。
紗奈よここにそなたの名を改める。知恵と物おじしない取り組み方と心根の優しさを持つその名は、智悠。
今よりそなたは智悠と呼ばれる。」
傍に控えている神官が巻き物を持ってきた。
「ありがとうございます。」そう言って両手を頭の上まで上げて受け取った。
「何か望みはあるか?叶えようぞ。」
高御産巣日の神が智悠を覗き込むように見た。
「はい!私は甲斐犬と共に呪文を狙った者たちを暴きに参りとうございます。それで、神獣の牙でも裂くことのできない衣を賜りますようお願い申し上げます。」
「ほう!また行くのじゃな。」
「鷹はそなたに褒美として授けよう!」
「ピューーーーー」微かに聞きなれた声。
聞いた瞬間、今まで我慢していた何かが崩れた。
頬を伝って涙が大理石の床に落ち、美しい雫の音がした。
ノスリが「ピューーー」と遠くから鳴きながら飛んできた。
肩に止まり、涙でグチャグチャになった智悠の顔をそっと突いた。
おしまい
おまけ
三柱神から賜った神獣の牙でも裂くことのできない衣を纏った紗奈、改め智悠は、ノスリと共に甲斐犬の元に赴き、その知恵と甲斐犬の機敏さとノスリの機転のよってついに黒幕を暴き、天宮に報告した。そして兵によって捕えられ、天牢に入れられた。
こうして一人の人間と2種類の神獣の活躍で、世の災いが取り除かれ、時代が引き継がれていくのだった。




