第9話 2回戦・魔法使い
闘技場、二回戦。
対戦相手は魔法使いだった。
ローブをまとった痩せた男が、杖を手に立っている。
そして――
ミオも、魔法使いの衣装だった。
観客席がざわめく。
「おい」
「格闘家じゃなかったのか?」
「魔法も使うのか?」
戸惑いが広がる。
魔法使いは鼻で笑った。
「……馬鹿にしおって」
杖を掲げ、詠唱を始める。
「炎よ、我が声に応えよ――」
観客が息をのむ。
ファイアボール。
この国では、最も基本的で、そして確実な攻撃魔法だった。
だが――
ミオは動かない。
ただ立っている。
詠唱もしない。
観客席からざわめきが漏れる。
「おい」
「何してる」
「このままじゃ……」
魔法使いの詠唱が終わりに近づく。
その瞬間だった。
ミオが口を開いた。
「炎よ――」
短い。
驚くほど短い詠唱だった。
そして次の瞬間。
ドンッ!!
火球が炸裂した。
魔法使いの目の前で。
「なっ……!?」
魔法使いがよろめく。
観客席がどよめいた。
「今の……」
「詠唱、終わってなかったぞ?」
魔法使いはミオを睨みつける。
「そんな詠唱は……」
ミオはにこっと笑った。
「詠唱、再構成したんだ!」
嬉しそうに続ける。
「すごいでしょ!」
観客席がざわつく。
魔法使いの顔が歪む。
「この……魔女が!」
杖を振り上げる。
「凍てつく刃よ――」
氷の魔法。
だが。
ミオは少し首をかしげた。
「遅いよ?」
そう言うと、静かに詠唱した。
「雷よ」
「空より落ちよ」
次の瞬間。
バリィンッ!!
落雷が魔法使いを直撃した。
砂煙が舞う。
観客席が凍りつく。
サンダー。
この国では――
まだ誰も見たことがない魔法だった。
審判の声が震える。
「勝者――ミオ!」
歓声が爆発した。
大戦が終わり、ミオが控室に戻る。
だが――
そこにあったのは、異様な光景だった。
王国軍の兵士が二人。
主人の前に立っている。
主人はソファに座っていたが、動けないような空気だった。
まるで。
軟禁だった。
ミオが入ると、兵士の一人が振り向く。
「あなたがミオさんですね」
言葉は丁寧だった。
だが、声は冷たい。
兵士は一歩近づく。
「こちらに来ていただきます」
ミオは主人を見る。
主人は少しだけ目を伏せた。
「……行きなさい」
小さく言った。
ミオは頷いた。
兵士について歩く。
廊下を抜け、階段を降りる。
扉が開く。
そこにあったのは――
牢屋だった。
鉄格子。
石の床。
ミオは小さくつぶやく。
「どうして?」
答える者はいなかった。
歓声に包まれていたはずの少女は、
この王国で――
受け入れられない存在になりつつあった。
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