第6話 下準備
[依頼]
《ポーションの素材集め》
依頼内容; ヴェールの森の中に住まう魔獣の討伐及び素材集め……クリア報酬は出来高制(難易度⭐︎⭐︎⭐︎)
そう、これが今回の依頼内容だ。
依頼を受注できたのは良いがまずは準備が必要だ。
俺とニーナは一度ギルドを離れ、依頼に供えて街で装備品の充実を図ることにした。
「そういえばニーナは今どんな武器を使ってるんだ?」
「私はこれです」
ニーナは腰からダガーを取り出す。
俺はそれを手に取って吟味する。
「これ、まだ新品だろ──しかも魔力加工もされてない」
「よく分からないですけど、一番可愛いかった物を選びました」
先が思いやられる。
始めに俺達は武器屋を訪れることにした。
市販の剣…銀貨3枚 市販の弓矢…銀貨3枚
良質の剣…銀貨6枚 良質の弓矢…銀貨6枚
至高の剣…銀貨12枚 至高の弓矢…銀貨12枚
「──けっこう色々あるんですね」
「そりゃな。それに武器は消耗品、こまめにメンテナンスをするか、それが面倒なら買い替えるかしない」
──んん?
市販の剣の中に、やけに質の良い物が何本か混ざっている。高度な魔力加工が施されていて、尚且つとても繊細に仕上げられている。至高の更に上、これは最上の剣と呼んでも差し支えないだろ。
銘はN.W…
ニーナは終始〈至高の剣〉を欲しがっていた。そんなニーナを俺はなんとか説得し、この店でそれぞれ〈市販の剣〉を購入。ついでに受付けの目の前に置いてあった松明を2本購入した。
いつまでもぶうぶう言うニーナをなだめながら、薬屋へ向かうことにした。
「エイトさん、どこか病気でもしてたんですか?」
「備えあれば憂いなしというやつだ」
何も分からないニーナにいちいち説明するのも面倒だ。特に言うこともなく薬屋のドアを開けた。
店内を見渡せば一際存在感を放つポーションエリア。ポーションだけでも数十種類が陳列されていた。
エナジーP…銅貨2枚 エイドP…銀貨1枚
ライフP……銀貨2枚 マナP……銀貨2枚
クイックP…銀貨1枚 PDX……銀貨3枚
プレミアムP…銀貨5枚 EXP……金貨1枚
「──私、初めて来ましたけど、ポーションってこんなに種類があったんですか?」
「それだけよく売れるってことだ。現代病としてポーション中毒なんて言葉があるくらいだ。そもそもこの後、そのポーションの素材を集めに行く分だしな」
俺はこの店でエナジーポーション2本にその他ポーションを3本購入した。
大体の準備が整い、俺達はヴェールの森へと出発する。
とにかく俺は楽をしたかったので銀貨3枚を生贄にして、馬車で移動することにした。
──グビッグビッ
「エイトさん、本当にそれが好きなんですね?」
「なんか飲むのが癖になってしまった。ニーナの分も買ってあるぞ」
「今はいいです──それよりずっと気になっていたんだすけど、素材集めの素材ってなんですか?」
「討伐依頼は初めてだもんな──」
俺は素材についておおまかに説明を始める。
「魔獣には魔力が濃く宿っている部分がある。例えばホーンラビットならツノ、ファングボアなら牙とかな。まぁ、詳しいことはギルドの【魔獣図鑑その1】に載っているから、時間があるのときに目を通せばいいさ」
ニーナはほうほうと頷いてはいたが、理解しているかどうかは少し怪しい。
「要するに、エイトさんが狩猟して私がそれを回収するってことですね」
確かにそれが一番手っ取り早いが、ニーナに言われると少し腹が立つ。
◆
「──きゃっ……やっ……やめてっ、こっち来ないで」
「さっきから何遊んでだ! 情けないなあ」
森の中に入っていくと、魔獣が次から次に姿を現す。そしてニーナは絶賛、魔獣と格闘中であった。
──シュパッ……スパッ
「それにしてもこの市販の剣、たったの銀貨3枚の買い物とは思えねえくれぇ、すげえ〜斬れ味」
俺は俺で魔獣の素材だけを狙って部位を削ぎ落とすという単純な業務作業に励んでいた。
魔力の大部分を失った魔獣達は森の奥へと逃げて行く。
「てか、エイトさんは魔獣を討伐しないんですか?」
「しねーよ、だって可哀想じゃん」
俺の中で魔獣は少しだけ凶暴な動物という位置付け。無益な殺生はしないのが俺の流儀。と、言うのは建前で本当は倒そうが素材だけを持ち帰ろうが報酬はほとんど変わらない。
なら荷物にならないように必要最低限に抑えたいというのが本音だ。
「とりあえずニーナは落ちている魔獣の素材を回収していってくれ」
「分かりました」
──キラーン
【名前】
ニーナ•ルドルフ
【職業】
[荷物持ち]→[収納上手な荷物持ち]
「やりました! 職業向上しましたよ」
褒めるとすぐに調子に乗りそうだから今回は褒めない。だがニーナは本当にその分野において才能はあるのかもしれない。
「──痛っ」
「どうした? 見せてみろ」
「さっきの魔獣との戦いで、手やら足やら少し怪我したみたいで」
低レベルの魔獣との初実戦。習性や行動パターンも何も分からない状態での戦いをしいられている。怪我するなと言う方が無理な話。
「ニーナ、これを飲んでみろ」
俺は腰に常備させていたクイックポーションをニーナに手渡す。
──グビッグビッ
「凄いですよエイトさん! 傷が一瞬にして治癒しましたよ」
それくらいの軽傷ならすぐ治る。それがポーションのうりなんだから。
──ピーピピ、ピーピピ、ピーピピ…
──ピーピピ、ピーピピ、ピーピピ…
「エイトさん、なんですか? この少し怖そうな音色は……」
「あぁ、これは救難信号だ。聴くのは初めてか? 距離感からしておそらくこの近くのカテドラル洞窟からだろ」
救難信号はキャッチした近くの冒険者が直ちに応援救助しに行く義務が発生する。つまり言い換えれば、俺達は例の依頼に強制参加できるということになる。
「急ぐぞニーナ」
「はい!」
俺達は救難信号の音のする方向に走りだした。




