第4話 あ〜あ、怒られた〜
なんとか日没ギリギリに《ギガント岩》に到着した俺達は、テントを張る準備に取り掛かろうとしていた。
ここならこの一際主張する大きな岩が風避けになるし、森の中と違って虫も少なそうだ。後はこの地面に落ちている石ころや雑草を綺麗に取り除いて整地すれば言うことはないだろう。
2人がかりで作業すれば、あっという間にテントが出来上がってしまった。それにニーナは教えれば比較的に飲み込みは早いし、性格も明るく天真爛漫でいてくれるのでとても助かる。
寝袋はかさばらないようにと、建前上は比較的ペラペラのものをチョイスしたが、実際のところはカネが足りなかった。でも慣れてしまえば寝れないこもない。
「……あの、エイトさん……もう寝ましたか?」
「……いや、まだだ。すまないな、少し寒かったか? 今度は暖かい毛皮の魔獣を討伐しよう。そうすれば少しはキャンプ用具も充実してくるだろうし」
「いえ、そうじゃないんです。本当は私、初めての《依頼》が不安で怖くて堪らなかったんです。なかなか一緒に受けてくれる人も現れなくて……そんなときにエイトさんに声を掛けてもらったんです。ありがとうございます……」
俺は黙ってニーナの話を聞いていた。
成人しているとはいえ、俺から見ればまだまだいたいけな少女。そう思うのは無理もない。
「あの……もしお邪魔じゃなければ、また《依頼》にご一緒してもいいですか?」
「依頼内容にもよるだろうが、俺で良ければこちらこそよろしく頼む」
「ふふっ……エイトさん、おやすみなさい」
次の日の朝。
日の出を迎え、俺達は《ガリバー遺跡》を目指して再び歩き始めた。
地図に記されていた通り、歩き出してほどなくすると目的地だった遺跡が姿を現した。
「よし、撮影に取り掛かろうか」
まずは遺跡の周辺の動物や虫、植物を撮影。次に地面を掘って土をビンへと詰めていく。
次に遺跡の中を撮影。後は遺跡に干渉しない程度、もしくは壊さない程度に鉱物を採取していく。
これだけやっても報酬はたったの銀貨3枚。難易度の高い《依頼》をこなしていかないと儲けがでない。世知辛い世の中だ。
「これで課題完了っと」
「お疲れ様です、エイトさん。やってみると案外楽しくてあっという間でした」
「ニーナもな。今から帰ればリスター村には今夜到着できそうだ。明日ギルドに報告しにいこう」
◆
次の日の朝、俺達はギルドが空いてるだろう時間を狙って《依頼》の報告に訪れていた。
俺はもちろん、アズが担当している受付けブースの列に並んでいた。
「次の方」
「やあ、アズ。今日は一段と綺麗だね。この《依頼》の《課題》の確認を──」
俺達はギルドカードとカメラとビンを提出した。
「確認しますのでしばらくの間、このギルド内にてお待ち下さい」
俺の経験上、ここから1時間〜2時間は待たされることになる。こんなときはいつも決まって購買部で週刊誌を買って時間を潰すことにしている。
【週刊冒険者】
〈新進気鋭の冒険者現る!!
名をライナス・ウォード。端正な顔立ちから放たれる鋭い剣技。冒険者になってまだ日が浅いにも関わらず、早くも[戦士]の称号を冠とする。
現在は不在の【レジェンド職業】、[勇者]になり得る逸材か!!〉
「──っけ」
「エイトさん、何見てるんですか?」
「えっと、グラビア……」
つい嘘をついてしまった。
俺がライナスの野郎を意識してると思われるのも癪だし。
「嘘つかないで下さいっ、そんなページじゃなかったことくらい知ってるんですからね──それよりエイトさんってアズアナさんのことが好きなんですか?」
「いやまぁー、可愛い女の子はみんな好きっていうかなんというか……」
「え〜!? それじゃあ私のことも好きなんですか?」
ニーナは目をキラキラと輝かせてこちらをまじまじとみつめる。俺はニーナに対抗してまじまじと見つめ返すことにした。
「「ふははははっ」」
おかしくなって俺達は同時に笑っていた。
何やってんだか。
「確認が取れましたので至急、こちらに来て下さい」
もしかして今のやり取り見られてたかな!?
それよりアズアナ自身が直接呼びに来るのは珍しい。過去にそのようなことは一度も無かった。しかもなんか怒ってるような……!?
「課題の確認は取れました。そしてこれが報酬の銀貨3枚にございます……が」
──が!?
「この映像はなんですか?」
俺がゴルゴーン達をしばき倒す映像がそこにあった。
あら〜っ……──おいニーナ!! 一体どこまでとってんのさ!?
「このような冒険者同士の争い事は困ります。今回に至っては正当防衛とのことですが、次からは速やかにその場から離れて救難信号で近くの冒険者達にお知らせをお願いします」
あ〜あ、アズに怒られた〜。
横を見るとニーナはばつが悪かったのか、キョロキョロと辺りを見回しては落ち着きがない様子だった。
「そんなに元気が有り余ってるんでしたら、次回からは難易度三つ星以上の依頼を紹介致しますからね」
アズは人差し指をこちらに向けて、俺を銃で射抜くポーズでそう言い放つ。
きゃわええぇ!!
危うく、俺のハートが射抜かれてしまうところだった。




