第25話 ALL-IN
「ルビーさんの火、火力が強くて助かります」
「サファさんの水、このキャンプには欠かせなくて最高ですね」
俺達は9人になって主に料理飯、狩猟飯、バリスタ制作班の3つに分かれて作業の効率化を図った。そして、めんどくさいことに【プリティージュエリー】に対しては、よいしょすることを強いられている。
「サファさんの水、天然水より美味しいので、このポリタンクにわけてもらってもいいですか?」
「仕方ないわね」
アイドルとは言え認定冒険者。ルックスの良さで麻痺しがちだが、3人共、火、水、雷を使いこなす魔術師。あながち侮れない。
俺はというとレベッカの指示の元、バリスタを作る上での素材となる木を集めていた。
今回の作戦において、バリスタは核となる存在だ。
「まさか剣で木をなぎ倒す日が来るとは思わなかった」
ある程度運びやすい大きさにカットしたのち、タイラーと拠点まで持ち運ぶ。
ニーナには食べられそうな草やキノコ、そして丈夫そうなツルの採取を頼んだ。
「そろそろどんなモンスターを狩るのか教えて欲しいんだが」
お昼になり、全員で昼食のさなか、クラウスは俺に尋ねた。
「そうだな。全員知っておいた方がいい。今回俺達が狙うのは深海王クラークン」
「それが隠しモンスターってやつか?」
「ああ。そして9人で挑めば限りなく勝機は訪れるだろう」
俺は全員揃っている内に作戦内容も話すことにした。
今、制作段階のバリスタを使って各班、各ポジョンに分かれてモンスターを一斉射撃する。また、魔術師の【プリティージュエリー】らは、臨機応変にサポートに回ってもらうケースもあること。
「確かに凄い作戦だが、そんなにうまくいくのか?」
「心配要らない、大丈夫だ! 飯食ったら引き続き制作に取り掛かり、バリスタが完成次第討伐に向かおう」
──……
やっとバリスタが完成した。
最後は全員で総がかりで制作して、なんとか完成した。
「よし、これで今日中にクラークンの討伐に向かえる。みんな、ありがとう」
「礼には及ばないさ、そうだろ!? みんな!」
「まぁ、そこそこ楽しかったかな」
「私達にも、それなりにメリットはあるしね」
一緒に飯を食べて、汗を流して、いつの間にか友情が芽生えていたようだ。だが、本番はここから。
俺は嬉しさを押し殺して、みんなを奮起する。
「バリスタを運んで《タリーアの畔》で決着をつけよう」
「「「おう!!」」」
《タリーアの畔》にバリスタを運ぶたけでもかなり苦労した。何しろバリスタ大が1つ、中が2つ、小が3つだからな。
巨大バリスタを中心に扇の陣形でバリスタを配置していく。準備が整い、後はクラークンを誘き寄せるだけだ。
「じゃあ、みんな作戦通り頼む。今からヤツをよぶ」
クラークンは警戒心は強いが血に敏感だ。
俺は血抜きしていない魚をエサに誘き寄せる。
「来るぞ、奴が」
静かな湖のはずが、少し波がたち始め、湖の底から黒い影が浮かび上がる。
「アレね──ライトニングストライク!」
パーズは魔術により、何もない空から、湖に浮かび上がる影に稲妻を落とす。
「ンモォオオオオオオオオオオオオオオオオ」
遂に湖の中から、巨大な魔物、白いイカのような生物が姿を現す。
「みんな打て! 打って打って打ちまくれぇえええ!!!」
バリスタにセットしていた矢を次々に放ち、クラークンに命中させていく。中でも、クラウスの担当する巨大バリスタは絶大な威力を発揮していた。
「スキル【弩弓】。いけぇえええ!!」
クラウスが放つバリスタの矢は、高速回転したままクラークンの巨体に直撃した。
「ンモォォォォ」
「やったか──」
クラークンは後ろにひっくり返り、大きな水しぶきが湖に飛びちった。
「みんな油断するな! 津波が来るぞ!」
俺は全員の気持ちが緩んだことを察知し、大声を叫んだ。そして、言った通り高さ2mほどの津波が俺達を襲う。
「私達に任せて! ファイヤーストーム!」
「ウォータージェット!」
ルビーとサファの魔術で、津波を掻き消すように、大きな水蒸気となって消滅した。
視界が悪くて前が視えない。
「ンモォォオオオオオオオオ!!!」
「何だ何だ!? ヤツは倒したんじゃないのか?」
辺りがよく視えない中で、クラークンの鳴き声が響き渡る。そしてようやく霧が晴れてきた。
「何だあれは?」
倒したと思われたクラークンは白色だった体から赤色に変化していた。そして、触手のようなものをバタバタとさせていた。
「みんな、もう一度だ! 打て打て打て」
全員でバリスタの雨を降らす。
「え??」
先ほどまではバリスタ小や中でも、肉を切り裂く手応えがあった。だが、赤色に変わってから全て弾かれる。
「肉質が硬くなっている。クラウスいけるか!?」
「任せろ──【弩弓】!! これで決めるっ!!」
さっきは大ダメージを与えた一撃。巨大バリスタの矢がクラークンを襲う。
──?!
クラークンは全ての触手を矢の先端に収束させる。そして、触手は何本か切れ落ちたが、すぐに再生し始める。
「ガードしただと!?」
「モォオオォオオオ」
「まずい、こっち来るぞ!」
クラークンに敵認定されたようだ。
プリティージュエリー達が魔術を連発して食い止めるが、それでもクラークンの進行は止まらない。ついに陸へと上陸し目の前まで急接近。
「皆さん落ち着いて下さい。【虫除け結界(強)】」
リエリーの貼る結界によってクラークンの進行が止まる。触手をバタバタとさせるが結界でこれ以上前に進めない。
「助かった……」
──バン、バン、バン、パリッ、パリッ……パリン……
「やばい、結界が破られたぞ……みんな逃げろ」
「──まったく、とんでもないおてんばちゃんだな」
俺はクラークンの目の前に歩み寄ると、剣を鞘から抜き取る。
「スキル【トリックスター】発動──【ALL-IN】……」
俺の身体から白色の光が込み上げた。




