第1話 ループ8回目
「……よく来たな人間」
不敵にあざけ笑いながら俺を指差すものこそが、何を隠そう魔王がその人であった。
なぜ俺が魔王と遭遇したって!?
怪しげな遺跡の地下を興味本位で探索していたら、凄い魔力の粒子が吹き荒れていて、なんかヤバそうだったので小型爆弾を投げ入れて陰で様子を見ていところに後から魔王に話しかけられてしまったという訳だ。
出会ったしまったものは仕方ない。
テキトーに相手して隙をついて逃げることにしよう。
「そんな余裕ぶれんのも今の内だけだぜ……──オラァアアア!!」
──……
つ、強すぎる。全く歯が立たない。
魔王が弱い訳がないとは思っていたがここまでの差があったとは。
「人間よ、そんなものか?」
──ヤバいっ……
「あんたが強いことは認める……だが生憎、俺は諦めが悪いんでね」
とは言うもの、すでに自前の剣は折れ、防具はボロボロ。
それでもなお、逃げるチャンスはないだろうかと膝を着きながら虚勢を張っていた。
早く逃げなければ。
だけど心のどこかで俺は魔王に負けて死ぬなら仕方ねーじゃんと強がる自分がそこにいた。
──キラーン
突然俺が左腕に付けていた『証明腕輪』が光を放つ。
この輝き方は″職業向上″を顕すものだ。
証明腕輪に目をやると──
【名前】
エイト•スライフ
【職業】
[勇敢な冒険者]→[身の程知らずの英雄]
何じゃこりゃ。
てか、それほどに力の差は歴然だってことなのか!?
──キュイーン
魔力を込めると折れていたはずの剣が、まるでアップデートされたかのように神々しい剣に生まれ変わっていた。
「へへっ、これが新たな職業のスキルってやつか」
「久しぶりに面白いモノを見せてもらった。冥土の土産にコレをやろう」
すると俺の右の薬指に悪趣味な指輪が装飾される。
──ピッピッピッピ
しかも何か嫌な音も聞こえる。
「その″呪禁の指輪は我にしか外せん。外して欲しくば、また我に何度でも挑戦し倒しにくることだな」
──ピッピッピッピピピピピピピピー………
ドカーーーーーーン!!!
音が消えたと共に指輪が突然、凄まじい勢いで爆発し、当然俺は巻き込まれてしまった。
──………
……
…
「っう……」
起きるとそこには見慣れた天井。
そう、俺は今から8回目の人生をやり直すことになる。
俺は1度目の人生で魔王に指輪を付けられ爆死した。目覚めると不思議とこの呪禁の指輪は元通りになっている。そして、何故か俺が15歳の成人を迎えた翌日、この【リスター村】の宿屋にタイムリープしてしまうという訳だ。
「前回の人生もしくじったか……割とガチで頑張ったんだけどな」
俺は左手にある証明腕輪を眺めて、右手の人差し指で長押ししスクロールした。
【仕事】
[駆け出し冒険者]
この証明腕輪は生後間も無くして全ての人間に装着される。だから全員の最初の職業は″赤ん坊″から始まるって訳だ。
俺は何だか国に管理されているような気がしてあまり好きじゃない。
【サブ仕事】
[身の程知らずの英雄]
スキル; 【剣生成】
自身の魔力で『正義の剣』を生成できる。
………
[無法者]
スキル;【無法者の威厳】
相手に殺気を放つ、または殺気を感知する。
………
[ガチ勢な釣り人]
スキル; 【釣り】
泳がせてから釣るのが上手。
………
[拳闘士]
スキル; 【筋力上昇】
筋力が上昇する。肉弾戦が得意になる。
………
[稀代の遊び人]
スキル;【遊び人】
浪費癖が酷いほど女子からの好感度が上がりやすい。ケチケチするほど女子から嫌われやすくなる。
………
[☆ト──………]
スキル; 【────…………
…………
[☆主──………]
スキル; 【────…………
後で分かったことだが、なぜか前の人生での最終職業が【サブ職業】として存在している。長押しするスクロールして閲覧可能のようだ。
俺は最初、このループに戸惑い自暴自棄になり我を見失った2度目の人生では″無法者″だった。
どうせならとハメを外しに外して遊びまくった5回目の人生では″遊び人″だった。
このままではいけないと自分を改め、6回目、7回目と必死に鍛錬を積んだ。でも結果はダメだった。
「いつ見ても笑える」
指輪の呪いで分かったことは、死ぬと同じ場所と時間から再スタート。そして、俺が1回目の人生で爆死した約5年後の同時刻に指輪が再び爆発する。さらに、無理やり外そうとするとあのとき聞いた嫌な音が鳴り響きトラウマが蘇る。
だが逆に真面目に生きようが不真面目に生きようが、その時間にならない限り爆発はしない。
「やっぱり魔王を倒すしかないのか…!?」
俺はポケットに手を突っ込んでガサゴソと硬貨を漁り机の上に並べる。
「うーん、金貨2枚に銀貨が2枚、それに銅貨が5枚か」
ここの宿泊代が銀貨2枚だ。あと6泊もしたらほとんどカネが残らない。
かなりやばいぞ。
とはいえ、かなりお腹も空いてきたので貴重な銅貨を使って朝飯でも食いながら今後の方針を決めていこう。
ぎゅっ……
俺は硬貨を握りしめて、それらを無造作にポケットへとしまい込み街へとくりだした。
──スタッスタッスタッ
「おい、そこの兄ちゃん。安くするから寄ってかないか?」
俺の服は粗末な物で装備も大したことが無かった。商人には格好の的に見えたのかもしれない。
「へー、こんな街にしてはなかなか品揃が良いな」
「だろ!? このローブと革靴のセットで金貨2枚のところ金貨1枚でどうだ」
俺は手を顎にあてて少し考えて、隣にあった大きなリュックを指差す。
「そっちはいくらだ?」
「んん? これなら銀貨3枚ってところかな」
「じゃあ2枚で」
「ったあ〜、兄ちゃんには敵わないな。良いだろ、銀貨2枚で持っていきな」
良い買い物が出来た。この巨大なリュックならいろんな物を収納できそうだ。
今回の人生のテーマは、ガチのマジで冒険者をやる。
俺は落ちていた木の枝を上に掘り投げて、落ちてくるのを見届ける。木の枝は右を向いていた。
この角を曲がればリスターギルドだな……
俺は満足気に買ったばかりのリュックを背負い、冒険者ギルドの扉を開けた。




