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ちっさいおじさんに出逢うと、本当に幸せになれるのか?  作者: ハナミヅキ
第4章 黄色い春
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新学期早々、優衣は上級生に呼びだされた。

冷え冷えとした廊下……。雪景色が映る窓には、結露がつたっている。


「ねえ、工藤と付き合ってるの⁉︎」

「どうなってんのよ!」


2人の後ろには、工藤の彼女らしき女子生徒が立っている。


「えっ? ……ないです! 付き合ってません‼︎」


瑞希の証言もあり、すぐに誤解を解くことはできたのだが……。

その噂を流したのは沙也香だと囁かれ始め……、芽生えてしまった不信感。

沙也香もまた、あのスキー以来優衣を避けるようになっていた。

失われていく信頼、友情。

いつからか優衣は、沙也香に笑い掛けることも話し掛けることもできなくなっていた。


やがて、大地を覆っていた白い雪は解けていき、嵩の増した川がゴウゴウと音を立てて流れだす……。

放置状態だった校庭の花壇を、無言のまま手入れする優衣と沙也香。厳しい寒さから守られていたシートが外されると、生命力をたっぷりと蓄えた茶色い土が蘇る。

お互いの存在に戸惑う2人は、感動を分かち合うこともできない。


「おっ! 水捲係、復活?」


通り掛かった大谷が、優衣を茶化すように声を掛けてきた。


「春ですからね〜」


ホースから出る水を大谷の方に向けて、笑みを浮かべる優衣。


「おいっ、やめろよ! これからバイトあんのに、濡れたらどーすんだよ!」


警戒しながら接近し、大谷がホースを奪おうとする。


「あっ、こっち来たらやるよ!」


慌てて逃げる優衣。バタバタと奪い合う2人の中に、沙也香が入ってきた。


「大谷、ちょっといい?」


大谷が振り返ると、嬉しそうに歩み寄り何やらひそひそと話している。


(感じ悪ーい! なんかムカつく)


一瞬にして思いやりという優しい気持ちが消えていき、


「大谷ーっ、これからバイトでしょ? 一緒に行こ」


大谷と話し続ける沙也香に、挑戦的な態度をとってしまう。


「おー……?」


戸惑いながら頷く大谷。


「鞄取ってくるから、ちょっと待ってて」


もう、どうにも止まらない……。嫉妬の炎が、めらめらと燃え盛る。

暴走を続ける優衣は……。沙也香の目の前で、どうどうと大谷の隣りを歩いていた。


「美山と、なんかあった?」


不思議そうに、優衣を見る大谷。


「別にっ」


視線を逸らして、素っ気ない返事をする。


「あいつ、最近いつも1人だよな」


「えっ、そーお?」


足を速め、冷めた態度で聞き流す。


「早川優衣が相手してやんなきゃ、誰も相手にしないことくらいわわかってんだろ」


(はぁ〜っ? どういう意味! 私が悪いって言いたいのっ)


冷静という感情の防波堤が、音を立てて崩れていく……。


「大谷が居るじゃん!」


「はっ!」


「大谷が相手してあげればいーじゃん! 沙也香だって、それを1番に望んでるんだから」


「なんだよ、それ」


賑やかなランドセルの集団とすれ違いながら、無言のまま歩き続ける2人。


バイトに入ってからも、優衣は絶不調。


「もーっ、何、このレジ!」


何もかもが上手くいかない。


「優衣ちゃん、なんかあった?」


いつもと違う優衣を、店長も気遣う。


「えっ、なんでですか!?」


「ま、まぁ、女の子には色々と事情があるからな」


優衣の肩をポンポンと軽く叩いて、調理場に消えていく店長。


(はぁ〜っ、気持ち落ちるわ〜……)

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