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ちっさいおじさんに出逢うと、本当に幸せになれるのか?  作者: ハナミヅキ
第3章 真っ白い冬
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『ところで、ユイ! イッタイどの辺で、ワタシが居ない事に気付いたんダイ!?』


「う〜んとね、駅に着く頃だったかな」


『へッ!? って事は、ワタシを置き去りにしてバスに乗っちゃったのカイ?』


「うん?」


『ワタシが寒さに震えながら下山してたアノ時、ユイは、アッタカ〜いバスの中に居たのカイ?』


「う、うん……」


『ヒドッ』


間近で睨むおじさんを、優衣は見て見ない振りをする。


(まずーい……、すぐに気付いたって言っとけばよかった。あ〜あ、怒っちゃってるよ)


おじさんをチラチラ見ながら、言い訳を考える……。


「あーっ!!」


優衣は、凄いことを思いだした。


「おじさん、そんなこと言っちゃっていいの!?」


『ハッ!?』


睨み合う2人……。


「凍り付く冬の雪山で、私が遭難しそうになりながらも必死におじさんを探してた時!」


『ヘッ?』


「おじさんは、あったか〜いヒーターの傍でスヤスヤと眠ってたんじゃないの?」


『イヤ、ネテナイ、ネテナイ……』


「絶対、寝てた!」


『アッ、ユイ! オカーサンだ』


「何それ? そうやってごまかすつもりでしょ!」


おじさんの視線の先に目をやると、真っ暗な山の中に、ほのかな灯りが見えていた。


「本当だ!」


その灯りは徐々に大きくなり、強く眩しいライトとなって、優衣達に近付いてくる……。

間違いなく母親の車である。


「うわっ、怖い!」


おじさんを肩に乗せたまま、車道に向かって歩きだす……。

やがて、優衣達の目の前に、恐ろしいくらいに眩しく輝く白い車が停まった。


(運転してるのは、鬼かもしれない……)


恐る恐る車に近付くと、

不気味な音をたてて、運転席の窓がゆっくりと開かれた。


「あっ、お母さん」


車窓から、憔悴しきった母親の顔が覗く。優衣達の姿に安心したのか、瞳に涙を浮かべる母親に、もう怒鳴りつける力はない。


「早く乗りなさい」


「はい」


遠慮がちに、後部座席に飛び込む優衣。


「怪我してない?」


「うん」


「妖精さんは無事なの?」


『オカーサン! 心配掛けてスミマセン……』


おじさんはマフラーから身を乗り出し、母親の顔を覗き込んだ。


(あっちゃーっ! 先に言われちゃったし)


「こちらこそ、すみませんでした」


母親が振り返って、申し訳なさそうに頭を下げる。


「お母さん、ごめんなさい」


おじさんに便乗するように、優衣も謝ってみたが、


「………………」


母親の返事はない。


(えっ、無視!???)


黙ったまま、ゆっくりと車を発進させる。

険悪な空気の中、ウトウトと眠りに誘われる優衣とおじさん。同じように、首を傾けて……。

そんな2人の姿をミラー越しに見る母親は、涙をこぼしながら微笑んでいる。

やがて、車は静かな街に入り……、ようやく暖かい家に到着した。


「優衣、着いたわよ」


「う〜ん……」


ぼんやりと窓の外に視線を向け、家の前に恐ろしい人影を発見。

腕を組んで仁王立ちしている父親の姿が、寝起きの優衣の目に飛び込んできた。


「お母さん、どうしよーっ!」


「さぁ〜? 自分で考えなさい」


突き離すように言い放つ母親は、いつもの顔色に戻っている。


「うわっ、意地悪!」


次なる試練に立ち向かう覚悟を決め、優衣はしぶしぶと車から降りた。


「ただいま〜」


母親の後ろに隠れるように、父親の前を通り過ぎようとする。


「何時だと思ってるんだっ!」


「ごめんなさい……」


立ち止まって、父親と向かい合う。


「……とにかく入りなさい」


「はい……」


玄関に入るとすぐに、2階に上がろうとしている陽太とすれ違った。


「陽太も、ずっと探してくれてたのよ」


母親が、靴を脱ぎながら説明する。


「陽太、ごめん」


「バーカ、姉ちゃんを心配してたんじゃねーよっ」


「くっ!」


(悔しいけど、今は言い返せない……)


言葉を呑んで、玄関を上がる。


「着替えたら、すぐに下りてきなさい」


これから始まる“お説教”を予告してから、父親はリビングに消えていった。


(まじでーっ! ちょー疲れてんですけどっ)


絶望的な気分で、2階へと上がっていく。


「うわぁ〜、あったかぁ〜い」


『ポッカポカ〜』


煌々と明かりが灯されたサンルームでは、クリスマスツリーが色鮮やかに煌めいている。

足元いっぱいに広がる赤いホットカーペットが、冷えきった2人を暖かく迎え入れてくれる。


「お母さん、あっためてくれてたんだね」


『オカーサンに、そんな余裕はなかったデショ』


「そう、だね……。えっ、陽太?」


『ウ〜ン……。オトーサンかもネ』


「えっ、それはないよ! あれ、そういえばおじさん、ずっとそこに居た?」


肩の上に乗っているおじさんを、不思議そうに見る。


『ズット居た……』


「やっぱり……、お父さんには見えないのかなぁ?」


『何でカナァ』


考え込む優衣に、睡魔が襲う……。


「優衣ーっ! お父さんが呼んでるわよーっ」


下から叫ぶ母親の声で、目が覚めた。


「もーっ、お母さんは頼りにならないんだから」


ブツブツとぼやきながら、階段を下りていく。


それから優衣はリビングに連行され……、


「なんで、携帯の電源を切るんだっ!」


「それは、色々あって……」


「きちんと説明しなさいっ!」


「えーっと……」


監禁状態は続き……、テーブルの上のごちそうにお腹が鳴る。


父親は、おじさんのことには一切触れず、成績や生活態度について深く攻めてきた。


釈放されたのは午前1時過ぎ……。

こうして、優衣16歳のクリスマスイヴは、長〜い1日の幕を閉じた。


「って、もうイヴ終わっちゃってるし……」

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