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僕と茶道と異世界と  作者: 茶柱 タツロウ
試練編
19/27

使命

19話です

「ふう、やっと出口だ。」


あの後、試練の証を取った俺たちはやっと洞窟の出口まで来ることが出来た。

洞窟から出ると新鮮な空気が体の中に入ってくる。


「いい風だな。抹茶の香りだけは勘弁だぜ」


「うるさい、また閉じ込めんぞ。」


「ありがとう、君たちのおかげで助かったよ。本当に。」


そういった話をしながら俺たちは村に向かって歩く。

後は試練の証を持ち帰るだけだ。



何かがおかしい事にマーティが気づく。


「おい、何か臭わないか?」


「いや?特には」


マーティは険しい顔をしながら呟く。


「何かが燃える臭いがする。しかもこの方角は」


マーティの視線は村の方向に向けられていた。

魔物の嗅覚は敏感なのだろうか。


「何か、何か嫌な予感がする!」


マーティがそう言うと

フラムは村の方へと駆け出した。

それの後を追うように、俺とマーティは走り出した。





「あ、あぁ……!!む、村が!!」


ありえない光景だった。村が燃えていた。嫌な汗が噴き出してくる。


「グリンと沙月は無事か!?」


フラムの家の中はもぬけのからだった。


「畜生!どこに行ったんだ!グリン!沙月!」


「もしかしたら長老のところにいるのかもしれない。行こう!」


「待て、落ち着け二人とも。まずは火を消すことが先だ。」


そう言ってマーティは口をプクッと膨らます。


「最大火力でいくぞ!」


マーティの水の雪崩は村全体に行き渡り、火を次々と消していく。


「よし、一先ずこれでいいだろう!長老の家に心当たりがあるんだろう?いくぞ!」


さすがマーティ、冷静で判断力がある。頼りになる奴だ。

そう思いながらも俺たちは長老の家に向かった。






信じられない光景がそこにはあった。

家の中は血まみれ。倒れているグリンと沙月、長老。



「おい!どうした!何があった!」


グリンを揺さぶる、うっすらと目を開けるグリン。


「……攻めて……来や……がった…あいつが……イデスが……!!」


ヒュー、ヒュー、と呼吸をし、話を続ける。


「俺たちは……この村を守る……ために……戦った……だけど……!!……駄目だった……!!!」


うっすらと涙を浮かべる。


「グリン……!!もう喋らなくていい!」


へへっと笑みを浮かべるグリン。


「大丈夫……沙月は……助けた……。今は……意識を…失っているだけだ……。俺は……少し…眠る…」


そう言ってグリンは大きな目玉を閉じる。


「死んでんじゃねえぞ!グリン!死ぬなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


グリンは目を開けなかった。グリンの体に触れると冷たくなっていた。


「大丈夫…彼はまだ助かります……。」


長老は血まみれになりながらも立ち上がる。


「私の命を……彼に授ける……」


フラムが飛び出す。


「駄目だよ長老!そんなことしたら長老が死んじゃうよ!」


「……!?その証は……。」


長老はボソッと言った。多分フラムには聞こえてないだろうが。


「甘えるな!お前は試練の洞窟で何を学んできたんだ!この老いぼれの命、未来あるものに託すべきだと思わんのか!それともお前はグリン殿が死んでもいいというのか!」


「そんなことはないよ!……でも!」


グッと拳を握り締めるフラム。

長老はよろよろしながらも俺に近づき


「後は……頼みます……」


「……わかりました。」


そう言って長老はグリンの体に近づく。


「神よ!私が生まれてきた理由はこの勇者を助けるためだったのだろう?ならば、この使命果たすまで!」


長老の体が光る。そして目を開けた時、長老は倒れていた。

長老とグリンに駆け寄る。

長老の体は冷たく、グリンの体は暖かくなっていた。


「すまない……長老……」


「うぅ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


フラムは泣き喚いた。ずっと、いつまでも。


「長老の為にも、やるぞ祐介。」


「当たり前だ。……約束したからな。」


その日はずっと泣き声が焼けた村に響いていた。









ーーーーーーーーーーーーーーー


「本当にいいのか?」


「うん!僕も行くよ。」


次の日、フラムは俺たちの旅についてくると言ってきた。どうやら村のみんなの仇を取りたいらしい。それに俺も長老にフラムのことを頼まれたし丁度良かった。


「ではいくとするか。祐介、フラム。」


俺たちは村で唯一無事だった馬と馬車を借りて、まだ目を覚まさない沙月とグリンを乗せ、歩き出した。


「あっ、そうだフラムたちにもお茶やるよ。」


そう言って昨日の晩に作っていたお茶を取り出す。


「やめろ、祐介。そのお茶は私に効く。」


「へぇ!変わった色と匂いしてるけど美味しそうだね!」


「お?分かるかフラム。じゃあちょっと飲んでみるか?」


「うんうん!飲む飲む!」


俺はお茶をフラムに渡す。マーティにも渡そうとしたが本気で嫌な顔をされたのでやめてあげることにした。


「じゃあいただきまーす!!…………」


「死んだな、フラム。まだ旅にすら出ていないというのに……。」


「どうだ。美味いだろう。」


「ブッーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


フラムは勢いよく吹き出す。綺麗な虹がかかった。


「ペッペッ!苦いよこれ!こんなの飲んでるの!?」


「なんだと!?俺は毎日のように飲んでんだよ!俺の体には血じゃなくてお茶が流れてるくらいだ!失礼しちゃうよ!全く!」


「マーティの言うことがわかったよ…………マーティ?」


そこにはほぼ液体になったマーティの姿があった。

どうやらフラムが出したお茶がマーティにかかったらしく、マーティの体はモザイクがかかるであろうところまでいっていた。


「ゆるさボエェぬ、ゆるボエェさぬぞフラボエェムゥゥボエェェェェェボエ!ボエボエ?ボエェェェェェェェェェ………」


「ごめんよ、マーティ」


オロオロしている二人をよそに俺は馬車と歩き出していた。











20話で会いましょう

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