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彼が教えを請う話

何だか説教臭くなってしまった…。

コレ一応ラブコメ描きたくて始めたのにいつの間にかバ⚫︎マンみたいになってるよ…。

翌日、俺たちは図書室の榎本先生を訪ねた。


「お、来たかね。どうだ?進捗は。七峰は珍しく上機嫌だったが」


「それに関してちょっと手を借りたいんですよ」


「ほう、取り敢えずどういったことか聞こうじゃないか」


俺が事のあらましを語る。

騙りはしない。

ただ、ラブコメ同盟に関しては伏せさせてはもらったが。


「成る程、君たちはどうやら小説の何たるかを理解していないと見える」


「と、言いますと?」


「良いか、先ず小説は競技でも何でもない。大衆娯楽だ。ライバルを見つけるのは結構だがそれ以前に娯楽でなければならない」


はぁと生返事を返す。

それは真田も同じようで『何か語り出したけど俺ドロンさせてくれない?』と頻りにこちらに向けて視線を寄越す。

まぁ、俺も鬼畜ではない。

『無理』と言外に伝えるに留めた。


「娯楽とは即ちエンターテイメントだ。人を楽しませる事を目的としたものであるから自己満足、ましてや対抗意識に苛まれて半ば自棄で書いたものはエンターテイメント足り得ない。まぁ、君たちが喜びそうな言葉を使うなら自慰と何ら変わりない」


「へー先生ってそーゆー事言うんすね」


「茶化すなよ真田…こほん。話を続けよう。君たちは先ず意識から切り替えなこればならないと思う」


「その心は?」


特撮ヒーローのストラップの付いた鞄から水筒を取り出し一度嚥下し唇を湿らせる。

…言ってはなんだがエロい。


「君たちはネット小説を良く読むかね?」


「まあ、何方かと言えば…」


「成る程、では。前書き、後書きに評価を付けろと言った文が添付されていた作品は主観で何割だ?」


「…三割…いえ、四割くらいですかね」


「ああ、そうだ。でもそれはランキングに載った作品では無いかね?」


「そう…ですね」


自分の携帯の画面を俺に向けた。


「見てくれ、逆お気に入りユーザー二百七十五人だ」


「自慢ですか?」


「良く見たまえ。これが現実だ」


表示されていたのは活動報告欄。

様々なユーザーが活動報告を出しており、大体一時間間隔で投稿報告が上がっている。それも様々な作者から。


「私がスコップするのは未評価枠だ。そう言った作者の作品…大体三十話程度辺りから急に前書きにポイントをくれと言い出すんだ。私目線、八割五分位か…さて、ポイント前書きはマジョリティーだと理解したかね?」


ええ、と曖昧に返事をする。

七峰と戦うにあたって投稿サイトへの登録、投稿は必須だ。

ならば例え論点がズレようが話は聞かねばならないと感じた。


「そう言った手合いは総じて焦っているのだよ。ランキングに三話で載る作品を見た、或いは自分より文章が拙いのに評価されている状況下にある。場合は様々だがー皆一応に独自のエンターテイメントを消失し出す。きっと自分が何者にかになれると、成ろうとした成れの果てだ」


「何者にもなれないんですか?それって結構暴論な気がしますけど」


「そうだな。確かに作家と言う生き物は確立した個だ。だが、有名になりたいとか、他者と繋がりたいと考えた途端、凡人は潰える。何故か、それは元よりあった自分への逃避に他ならないからだ」


「何となくは分かりましたが、それと小説に何の関連が?」


真田が無言で頷く。

どうやらくたびれたようだ。

欠伸を噛み殺してすらいる。


「君たちは良くも悪くも目標高い。だから、失敗を直に感じるだろうと思ってな」


失敗を…直に感じる。

その言葉は思いの外胸に刺さった。


「存分に失敗したまえ。どの道君たちはトライアンドエラーでしか七峰には勝てない。だから必死で足掻いてみろ、それが君たちの作品になるはずだ」

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