第11話 かわいい耳ですね
冒険者ギルドまでやってきた。
さあ、いよいよだ。ここまで来るのに結構時間がかかってしまった。
いや、単純に道に迷ったんです。
異世界に来てからとかじゃないです。
てか、この街広いよ!
エドモンさんが誰か付けましょうかって言ってくれたわけがよく分かった。
ホントについて来て貰えばよかった。
最終的には、道にいる人に聞きまくった。
かなり恥ずかしかった。
兎も角着いたのだし、よしとしよう。
俺は、冒険者ギルドの看板――盾の前に剣と杖が交差している。ーーが間違ってないのを入念に調べ、更に行き交う人にギルドか聞いた上で、その建物に入った。
入口の扉は、意外なことに押すことも引くことも出来る所謂両開きの扉で、文明がそれなりにはあることを示していた。
そんなことより、人間だ。
入ってすぐに周囲に変化があった。一瞬で騒がしくなり、俺に視線が集中した。
なぜだ?俺の服装は、こちらに来た時のものじゃなく、エドモンさんが用意してくたものだ。
全体的に安そうだが、俺がそうしてくれと頼んだので文句を言うつもりはない。
というか、もちろん分かっている。俺にというか、ウルにだな。
あの山賊達やフランクさん達の反応を見て、ウルは珍しい種類なのかと思っていたが、どうやら当たらずも遠からず、といったところなのだろう。
だが、その視線も殆どがすぐに霧散した。
ウルが使い魔の首輪をしているからだろう。この首輪、エドモンさんに貰ったものだ。
なんでも、使い魔の証としての物らしい。革製品で、背中側に調教師ギルドのものだろう、マークが入っている。
ありがたく付けさせて貰おう。
視線を内心で気にしビクビクしつつ、気にしてない様相を保ちながら受付にいった。
「いらっしゃいませ。
当ギルドにどのようなご用件で?」
受付まで行くと、向こうから話しかけてくれた。
かなりの顔面偏差値(こちらの人間は大体高い)で、立派な「ケモ耳」のはえる比類無いプロポーションを持つ美人なお姉さんだった。
恐らく、獣人なのだろう。
初めて見る存在に心弾ませながら、立派な「ケモ耳」に答えた。
「冒険者登録をしに来ました。
ここで出来るんですよね?」
「はい、出来ますが・・・。
お客様、獣人は初めてですか?」
「あ、すみません。
不躾でしたね、ごめんなさい。
かわいい耳ですね」
そう言うと、周りの俺への視線が急にきつくなった気がする。なぜだろう?
「あら、ふふ。ありがとう。
私はリサ バルティよ。よろしくね」
なんだかとても気安い話し方になった。こっちの方が断然親しみを感じれていいが。
「よろしくお願いします。良太・御影です。
ところで、登録なんですが・・・」
そう言うと、耳がピンとなった気がする
「ああ、ごめんなさい。
そうだったわね。こちらに必要事項を書いてくれる?」
「すみません。文字が書けないので、代筆いいですか?」
「ええ、いいわよ。じゃあ、私の言う質問に答えてね
あ、答えられることだけでいいわよ」
そう言われて、年齢や職業等基本的なことしか聞かれなかった。
「はい。オッケーです。
じゃあ、後はこのカードに血を垂らしてくれる?」
カードの大きさは、ちょうど名刺と同じくらいだ。俺の使ってた財布使えるかも。
血を垂らすと、リトマス紙が化学反応を起こした時のように、色を変えて紫になった。
その反応に驚いていると、クスクス笑いながらリサさんが色々教えてくれた。
「うふふ。そのカードはね、本人じゃないと使えない仕組みなの。
いつもはランクの色が出てるだけだけど。
ほら、魔力を流してみて」
言われた通りに流してみると、俺の名前や年齢、さっき教えたことが書かれていた。
名前:リョウタ ミカゲ
種族/歳:人間/15
職業:調教師
レベル:6
スキル:MP回復速度上昇(上) 魔力操作 テイム 体術 生活魔法
「驚いてくれてなによりだわ。
それじゃ、冒険者のルールについて話させて貰うわね」
リサさんは、そう言って恐らく、台本だろう。
その紙をもって、話し出す。ついでに耳が少し前に傾いた。ああ、さわりたい。
「先ず、ギルド員同士のギルド外での問題に関わりません。
もちろん例外はあるけど、期待せず個人で対処してね。
もし問題を起こし、ギルドになんらかの損害を与えてしまった場合、最悪除名ということもあるから気をつけてね。
次に依頼のことよ。
依頼は確実にこなしましょう。途中で放棄すると、罰金を払わされるわよ。
悪意を持って放棄なんてすると降格になったり、他にもトイレ掃除みたいな罰も用意されてるから。
また、ギルドからの指名依頼というものがあるの。
これは、基本的に絶対に受けてもらわなきゃいけないの。拒否は不可能よ。諦めましょう。
最後にランクのことね。
ランクは、依頼についている難易度のこととさっき渡したカードのレベルのことなの。
ランク7が一番下で、ランク1が一番上。まあ、その上にランクS、SSとあるけどほとんどないから気にしないように。
冒険者のギルドカードの色は、ランクによって決められていて下から、紫・青・水色・緑・黄色・オレンジ・赤、となっているわ。
依頼の受け方は、ギルドカードと同ランクの依頼しか受けられないから気をつけてね。
これは、パーティーを組んでも一緒だから。
あ、パーティーについてはまた今度、パーティー申請の時にでもね。
因みに、ランク7の依頼は常時依頼っていって何時でも誰でも受けられるものよ。
あと、ギルドランクの昇格方法は、同ランクの依頼を10回以上受けて且つ、こちらで審査して大丈夫なら昇格となるの。
さて、分からなかったこととか、聞きたいことは?」
一気に言われてしまったが、特に気になることはなかったな。
ギルドカードの色は、虹かよってツッコミそうになったが。
後は、そうだな。ランク昇格のことがもうちょっと聞きたいかな。
「ランク昇格の時の審査ってどんなことするんですか?」
「基本的には、戦闘力の測定ね。
その人が、ホントに1ランク上の力を持っているか調べるのよ」
「なるほど。それって落ちたらどうなるんですか?」
「どうにもならないわ。ただ、昇格無し。
そして、次に昇格できるのは、20回依頼を受けた人に限定されるの」
「じゃあ、1回目に審査されなかったり、しなかったりしたら?」
「されなかった場合はないわね。基本皆に受けてもらうようにしているし、受けない人は、審査で失格した人と一緒。20回後ね。」
うん、こんなところだろう。
「分かりました、もう大丈夫です。」
「そう?飲み込みが早いのね。
今日はなにか依頼受けてく?
って言っても常時依頼だけだけど」
そう言いながら、微笑んでくれる。ついでに耳がピクピク動いてる。
辛抱たまらん。ウルの耳で我慢しよう。
そうして、常時依頼を出してくれた。壁紙にあるやつだけじゃないんだ。そりゃそうか。
そうして何があるか確かめて見る。いくつか、俺でもできそうなものを見つけた。
「そうですね、この薬草採取ってやつやってみます」
「そうね。最初だし討伐より採取にした方がいいわね」
「はい、俺もそう思います。
薬草はどういったものでしょう?」
「あ、待って。それなら、2階の資料室に図鑑があるからすぐに取ってくるわ」
「いえ、そんな申し訳ないです」
というよりも、この突き刺さる視線を早く何とかしたい。
「いいのよ、これも仕事の内ですもの」
そう言ってリサさんは、走っていった。尻尾もチャーミングだ。
戻ってくるまでの間、すごい気まずい感じになっていた。
リサさんの手前余り感じてなかった、殺気がすごい押し寄せてくる。
何もされてないんだし耐えろ、俺。
そうしてリサさんが戻ってくると、また何事もなかったように殺気が引っ込んだ。
「待たせて、ごめんね。
それじゃ、これが薬草。大丈夫かしら?」
思考演算には多少の記憶力の向上の効果もあるらしく、俺は前世よりも物覚えがよかったりする。
「ええ、大丈夫です。
何から何までありがとうございました」
「いいのよ、これが仕事だもの」
そう言いながら、微笑んでくれる。今度は、耳には目がいかなかった。
クソッ、この俺に耳から目を離させるとは、中々やりおる。
こうして、俺は冒険者ギルドを出る。
今日から俺も冒険者だ!
そろそろ新しいモフモフを出したい今日この頃。
そして、パロネタがやりたい。
でも、どんなのをすれば・・・。