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RPG~Real Playing Game~  作者: KAITO
第一章「こんにちは異世界」
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第三十二節


 俺はつくづく思った。【勇者の加護】取らないでよかったと。

 もしこれを取っていたら、この街に来た時点で意味も分からず攻撃されたり捕縛されたりしたかもしれないな。


 皆は俺を「勇者召喚の被害者」として見ているようで、親切に色々教えてくれる。

 ただ、流石に疲れがきつくなってきたので今日はもう切り上げて寝ることにした。

 他の人たちは飲み続けるらしいがな。

 部屋に戻った後は、いつも通り準備を済ませるとすぐに眠りに落ちた。


 翌朝。

 大抵の話は昨日の内に聞けたが、それによってラスティア王国に行って勇者召喚の儀式について調べるのが悪手にしか思えなくなってしまった。

 なので、別の街に移動するとしてもストルオス王国内かガデナ帝国とかいう国に選択肢は絞られる。

 いや、船でこの地方を出るって選択肢もあるんだろうけど、かなり危険なようだしとりあえず見送る方向で。


 なので、近くの街やガデナ帝国について詳しく聞きたいと思うのだが、少し問題があるのではと悩んでいる。

 俺が近くの街やガデナ帝国について調べている、という情報が衛兵さんたちに知れたらどう思われるか。

 勇者召喚の儀式を調べようとしている、ではなく、この街を離れようとしている、と取られるのではないか?

 少なくとも、俺ならそう考える。

 かといって、調べなきゃどうしようもない。

 どうするべきかなぁ。


 そんなことを考えながら、とりあえず朝食を摂ろうと一階に下りる。

 そこはいつもの酒場なのだが、雰囲気が少しいつもと異なっていた。

 朝の活気ある感じに混ざるように、不穏な騒々しさを感じる。

 深刻そうな顔をした人や急いでいるような人が多いからだろうか。

 いつものカウンター席に着いて、少年へ食事を注文するついでに何があったか聞いてみた。


「あの、何かあったんですかね?」


 少年は忙しそうにしながらも答えてくれる。


「ラスティア王国が勇者召喚に失敗したって話が広まって騒ぎになってるんですよ」


 と、一息に言い切るとそのまま仕事に戻る。

 なんだろう、妙に言い慣れてた感じがしたんだが、何度も聞かれたんだろうか。

 朝食が運ばれてくるのを待っていると、酒場の出入り口からカイザが入ってきた。

 カイザは俺を見ると、こちらに小走りで近付いて来る。


「おはよう、クーヴィルさん」


「おはようございます」


 カイザは隣の席に着いた。


「既にそこかしこで騒ぎになってますよ」


 彼はそう言うとエールを注文する。


 その後、カイザはエールで喉を潤しながら話をしてくれた。

 俺は朝食を摂りながらそれを聞く。


 どうやら、既に「ラスティア王国が勇者召喚に失敗した話」は街中に広がっている状態らしい。

 情報の発信源は何か所があって、俺の話は遅い部類だったようだ。

 そういえば、副隊長さんが「今朝報告があった」みたいなことを言ってたな。

 俺が酒場で話をしたのは夕方過ぎだから、朝の段階で噂が広がり始めていたのだとしたら俺の話は遅い方、か。

 ただ、カイザが集めてきた話によれば、朝の内に伝わってきた話は「ラスティア王国が勇者召喚に失敗した」程度の内容だったらしい。

 その噂の中には「本物の勇者」の話もちらほら出てきていたが、噂が広まる際に尾ひれがついたものだと誰もが思っていたようだ。

 そんな中、衛兵に犯罪者よろしく連行された(ように見える)俺の話には「本物の勇者の存在」を認める内容だった。

 もちろん俺が嘘を吐いた可能性も含まれているだろうが、それでも状況から考えて信憑性の高い情報だと判断され、俺自身の情報も加えて噂が拡散している状態らしい。


 つまり、「被害者」としてではあるが、俺は今、この街において「時の人」らしい。

 散々目立たないようにしてたのは何だったんだ一体。


 とはいえ、話の内容自体は「可哀そうにも巻き込まれた一般人B」みたいな扱いだそうだ。

 そりゃあ、重要なのは「ラスティア王国が勇者召喚に失敗した話」の方だろうからな。


「とはいえ、今日は宿で静かにしていた方がいいかもしれません。外に出たら質問攻めに遭いますよ。ここの連中は昨日、クーヴィルさんから直接話を聞いてるんで大丈夫ですけど」


 と忠告してくれた。

 つまり、凄く面倒な事態になっている。

 狩りに出るとしても、質問攻めに遭ったら門まで移動するのにどれだけかかるのか分からないし、そんな状態になっているのならそもそも門の外に出してくれるのか分からない。


 カイザが言うには、明日になれば熱も冷めて状況も落ち着くとのことだ。

 なら、今日は休日ということにして適当にだらだら過ごすかな。


 そう、思っていたのだが。

 昼頃。

 俺が昼食を食べ終わって、部屋に戻りのんびりしようかと思っていた時に、「それ」は起こった。


 一言で表すなら、「衝撃」だろう。

 何かが突き抜けたような、震えたような、そんな感覚だ。

 それもどこかから起こった、というような感じはしなかった。

 こう、空間そのものが唐突に震えたように感じた。


 同時に感じたのは「違和感」だ。

 俺の目には「何かが振動した様子」は映っていない。何かが震えて音をたてたようにも聞こえなかった。

 だと言うのに、「衝撃」なんて何故感じたんだ?

 周囲を見渡すと、呆然としている人や何かを警戒している人が多数いる。

 その様子はただ事ではない。

 多分だが、さっきの「衝撃」を皆も感じたのではないかと思う。


 しばしの静寂。

 そして、爆発的な混乱。


 一瞬で酒場は大騒ぎとなった。


遅くなりまして、申し訳ありません。


また、こちらの都合なのですが、毎日投稿を維持するため今後は今までに比べて文章量が約半分になると思われます。

すみません。

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