相続という鎖
僕のもとにKSLからの招待状が届いたのは今朝のことだった。
詐欺かいたずらかと思ったけど、僕はこれにかけてみることにした。
僕が自殺を考えるようになったのは、父が建てた工場の借金がかさみ、銀行の融資も閉ざされ、父と母が一緒に自殺したことから始まった。
ひっそりとあげた葬式には、ほとんど誰も来なかった。
きっといろんなところに金の無心をして、嫌がられていたんだろう。
自分の親だとはいえ情けないなと思っていた。
二人が亡くなって一週間後、保険金が下りた。
二千万円だ。
正直、これで大学卒業までは何とかなると安堵した。
それまでと同じように大学に通い、合コンしたり、バイトも少ししたりして、楽しく過ごしていた。
借金は親が死んだ時点でチャラになってラッキーだとすら思い込んでいた。
三ヶ月経つまでは……
その日は突然やってきた。
家に沢山の借金取りたちがやってきた。
借金の総額は一億円だった。
自分には関係ないと訴えかけたが、相続放棄をしていないから無理だと言われた。
とにかく保険金をよこせと言われ、怯えながらも相続放棄なんて聞いたことがないと、叫ぶように言うとスマホで調べろと言われた。
手の汗で滑るスマホで必死に調べてみると、本当に相続放棄のことが載っていた。
知らなかった場合そこから三か月延長されるが、僕の場合遺産を受け取っているので、抵抗しても無駄だった。
その日は保険金を渡して帰ってもらった。
「誰も相続放棄なんて教えてくれなかったのに」
そう呟いてみても、全てが手遅れだった。
大学から帰ってきても借金取りが押し掛けてくる。
何とかバイトを増やしてもらっても、雀の涙。
給料日には全部持っていかれた。
このままだとめしも食べられない、絶望でいっぱいだった。
そのうち借金取りたちは、朝も夜も関係なく来るようになった。
そんなある日KSLから招待状が届いた。
兎に角本物だと信じて、ちょうど一か月後のその日だけを待ち侘びていた。
一か月後、KSLは噂通りに白い靄に覆われていた。
やっぱり本当なのかもしれない、園の入り口に何人ものスタッフがいて、招待状の封筒だけをチェックして、確認が終わると腕をかざす。
そうすると入り口が開く仕組みになっているようだった。
入園してどのアトラクションがいいか考えながら、メリーゴーランドの前を通ると、上下に動く馬から転げ落ちた人は床に挟まれ、乗り続けた人は天井に挟まれ死んでいく。
僕はメリーゴーランドを見て、やっとanniversary dayが真実だと実感した。
園内をふらふらと歩いていると、モノレールが上をゆっくり走っていた。
かなり高い位置に差し掛かった時、突然レールの片側が半分下に下がった上からひらひらとした服を着た女の子が降ってきた。
下を歩いている男に直撃した、二人は地面にめり込んで潰れた。
ぴくぴくと痙攣していた。
反対側の女の子もそのまま落下してきて、僕のすぐ近くにいた女にぶつかって地面にめり込んでいた。
早くここから動こう。
巻き込まれて死ぬなんてあってたまるか!
僕はそこから駆け出した。
上に何もないのを確認して、ふと前を見ると、以前来た時より大きくなっているお化け屋敷があった。
これから死ぬ人間が、恐怖を感じるわけがないと思ってお化け屋敷を選んだ。
お化け屋敷の中は真っ暗で、僕の前にも何人も人がいるようだった。
あまりの暗さに、片方の壁に手をついて歩いている人が何人もいるようだ。
ゆっくり動く人たちに足並みを揃え、僕も壁に手をついた。
ここまで驚かせるような動きはなし。
少し進むとかすかに壁が動いているように感じた。
周りもざわつきだす。
「なんか壁動いてない?」
「さっきから思ってたけど、これ動いてるよね」
誰かが言い出すと急に壁がぐんと動き出す。
どうやら両サイドの壁がどんどん狭まりだしているようだ。
「驚かして心不全とかで死ねるんだと思ってた」
「このまま壁に挟まって死ぬの?」
その声に呼応するように壁がまたぐんと狭まりだす。
とうとうみんな横向きにならないと立っていられなくなった。
前にいる体格のいい男は「ぐえっ」と声を出した。
壁が迫ってくる。
僕は自分自身からぷちっという音がしたと思った瞬間、意識がなくなった。




