ピンク色の馬
あたしは、どうしようかなあ?
と自分の死ぬ場所をゆっくりと吟味していた、なぜあたしが死にたいのかというと、同棲してた彼氏にある日売られたからだ。
何も知らなかった無類のギャンブル好きだってこと、闇金にも手を出していたこと。
突然来た闇金業者に腕を掴まれ引っ張られる。
「金を返せなかったら、女を風俗に売るって言ってたよな?連れていけ」
あたしは見事にあいつに騙されていたんだ。
男たちに車に乗せられ、そのまま風俗店へ。
何が何だかわからないうちに、気づけば一年ぐらい働いていた。
最近は死ぬことしか考えていなかった。
そんな時に、KSLから招待状が届いた。
内容を見て最初は質の悪いいたずらだと思った、けれど藁にも縋る思いだったあたしは、それに乗っかることに決めた。
これが事実だと知った時は、嬉しすぎて泣きそうになった。
やっと死ねる!
ゆっくりと園内を回り、どこで死のうか考えた。
小さいころ大好きだったメリーゴーランドにしようと決めた。
見えないドームの外側にスタッフが立っていた。
「ようこそお越しくださいました、こちらがメリーゴーランド入場口になります。お入りください」
スタッフが腕をかざすと、不思議な光と共に入り口が開いた。
メリーゴーランドは人気のアトラクションのようだった。
軽快な音楽に愛らしい見た目。
何が起こっているのか背を伸ばして見てみる。
ゲストがそれぞれにどれに乗るか決めて座ると、ポールの上から何か液体が流れ出し、メリーゴーランドが作動する。
上下に動く馬や馬車。
ゆっくり回転しだすメリーゴーランド。
最初は何も起こっていないように見えた。
けれどよく見ていると、最初はわからなかったけど、ポールをつかむ手が滑っているようだ。
どんどん滑って足も滑る。
半分以上が滑り落ちたところで、上下に動いていた馬たちの動きがおかしくなりだした。
上に行ったまま戻らない馬や下に沈み続ける馬。
上に行った馬に乗っていた人は、そのまま天井に押し潰されている。
下に行った馬に乗っていた人は、下の台との隙間に挟み込まれて潰れていく。
メリーゴーランドに乗った人たちは全員死んだ。
スタッフが挟まった死体を掻き出している。
掃除が手早く終わった。
行列が前に動く。
あたしも前に進む。
さっきの光景を見たのに、不思議と何とも思わない。
早くメリーゴーランドに辿り着きたいとすら思った。
次の番に親子連れがいた、子供だけ乗せて両親は外で手を振っている。
メリーゴーランドがゆっくり回りだすと、男の子はさっきの液体ですぐに滑り落ちてしまった。
両親は泣きそうな笑顔で手を振っている。
男の子は立ち上がろうとしてまた滑ってしまう。
そのまま男の子は下の台との隙間に嵌って抜け出せなくなってしまった。
ばきばき、ぐちゃと音が聞こえる。
男の子のつぶれる音だ。
両親が声を殺して泣いていた。
男の子の残骸が掃除されると、両親は最後尾に並びなおしていた。
それから一時間ほど待つとやっとあたしの順番が来た。
ピンク色の馬を選ぶと上から液体が流れてきた。
ああ、あの液体はオイルだったんだなとその時知った。
メリーゴーランドが回りだした、あたしは最後まで馬の上でねばった。
死にたくなかったからじゃない、どうせ死ぬならあの男に見下げられたあのときの顔を思い出して、上から見下ろしてやりたいと思った、それだけだ。
天井がどんどん近づいてくる、ああやっと死ねるんだ。
これであの男に残った借金が、またあの男に戻る。
ばきばき。
身体中が焼け爛れたように熱い、そのままあたしは意識を手放した。




