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駄文拾遺集  作者: 秋鑑
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10/10

不意の陳情者と、その対応の検討について

居酒屋奇譚PV500ありがとうございます。

急に出てきた数字に、ビックリしてます。

・・・・・・明日・・・死ぬかも・・・。


一応、記念投稿しておこう・・・お礼できないのは、悪いもんね。

まあ、一時的なものだろうし、いい夢見れてます。


さて、今回は、結構ありがちなお話かもしれませんね。

訪問販売とか、迷惑だけどやってる方も大変なんでしょうね。

無下に追っ払うのもなあ・・・って、そう思わせるのが先方の戦法?

不意の陳情者と、その対応の検討について



自宅のリビングで寛いでいたところ、テーブルの上のコーヒーカップの隣に、身の丈15センチくらいの一つ目の小人が現れました。

彼は、私に、自分を信仰するようにと勧誘をかけてきました。


私は彼に「今のところ、何の霊験も示していないこと」を理由に態度を保留しましたが、あきらめる様子はありません。

命令調では無く懇願に近い態度を示すので、無碍に拒絶するのも気が引けます。

しかし、得体のしれない相手ではあるので、二つ返事で信者に収まるというのも、やっぱり気が進みません。



・・・そもそも、これは、誰なんでしょう?




・・・そうですね。まずは、身元の確認です。

見てくれは、それなりに仕立ての良さげな生地の、麻木色の上下。

なんとなく、教科書で見た「農耕をする弥生人」が着てそうなデザインですね。

下はズボンっぽいモノを履いて、上は合わせの着物風です。

縫製は悪く無さそうで、縫い目もほつれている様子は有りません。

反面、ちょっとヨレヨレで埃っぽく見えます。


・・・そうですね。少し疲れているようにも見えますね。



さて、事情聴取です。

姓名、年齢、性別、出身、職業、趣味・・・あと・・・足のサイズ・・・とか?


一つ目小人(面倒だから一つ目にしましょうか)は、此方の質問に怪訝そうに答えます。

「それ、必要か?」と・・・ごもっともですね。


本人(人?)曰く、彼らは何らかのモノの眷属で、先触れとして道中の様子を調べる役割を持っていたそうです。

ただ、本隊とは久しく連絡が取れていないそうで、やや遭難中。

情報の更新も連絡が無く、今の集合場所が正しいのかも分からないとのこと。



要するに逸れの様です。



一つ目によると、かつては複数で行動しており、時には列をなし隊を整えていたこともあったとか。

ただ、上の方で何かあったらしく、期限になっても集合しなくなってしまったとの事。

まあ、情報の更新が無いので、集合場所が変わった可能性もあるとの事。

ひょっとしたら変更されたのは時間の方かも知れないとも言っています。


待ち合わせ場所に誰も来ない・・・ハブられちゃったんですかね?

ちょっとかわいそうな気もしてきました・・・。


此方の憐れむような視線に気が付いたのか、一つ目は早口で状況説明を付け足します。

昔は受け入れ側の人間の方がわきまえていて、多少の誤差も調整してくれていたらしいのですが、そういった受け子も見当たらなくなって久しいとも言っています。


本来彼らは松の内までが仕事で、春先は別動隊があったはずなんだそうです。

ただ、そちらの方は、ずいぶん先だって編成されなくなってしまい、仕方なく兼任することになったとか・・・口が無いのによく話しています。

そもそも、季節ごとに役割があって、人側の要請に基づいて先生方も業務を遂行していたのに、最近は人側の準備がいい加減なのがよろしく無い。とか言ってます。


まあ、提示される発言量に比べて、内容の方はスッカスカですね・・・。

後半は、ただの愚痴じゃん。


・・・年神様とかの類っぽいかなあ。



行事ってのは単なるイベントとは違う。と、一つ目は力説します。

様々な仕組みを、円滑に回すために、所属するモノ達がおのおのでできること、季節ごとの役割を分担すると言う事なのだ。とのことです。

そして、この仕組みの中には、もちろん人間も含まれていると・・・。

この人間側の仕事がいい加減になっているので、方々に影響が出ているのだとかなんとか・・・。


そう言われてみれは、彼の語る「本隊」や「集合場所」について云々にちょっと心当たりが・・・。

直接関係するかはわかりませんが、以前はどんと焼きとか花の節句とかの時節の行事を自治会がしていました。

しかし、近所に建売団地が出来たころ、新住人の方から自治会に動議が出て、自治会の公式行事ではなく有志による活動となったと聞きました。

今はやっていないのか、規模が縮小されたのか見かけなくなった気がします。

季節ごとの役割と言う単語で何となく思い出しました。



なにやら、一つ目の役割としては、先遣隊として道中の普請を確認するのが主な任務だったそうです。

で、先生方が来て接待を受けた後、しんがりとして行列の後備について一緒に回収されるという流れだとか・・・。


この先生が農耕神などの類なのかはわかりません。

一つ目もそこまではわからない様子です。

ただ、お偉い先生方に失礼が無いように場を整えるという事を頻りに主張しています。

もっとも、その先生自体が最近はお出でにならないらしく、主賓不在の事も有るそうです。

しかし、臨席の有無にかかわらず、準備はなされるべきなのだそうです。


手抜きは許されません。とのこと。


なんにせよ、正しく場を設ける事が重要なのであって、御多忙な先生の臨席は絶対条件ではない様子です。

ただ、今現在、現場指揮官である場の差配まで出仕しなくなってしまったと言うのが問題なんです。

さすがに、指示役が不在なのは具合が良くないとの事。


現状、長期にわたって場の差配が不在のために滞りも出てきており、それが問題なのだとの事。

先生方はお偉いのでお出でにならない事も無くは無かったので、こちらの不在は居ないままに場を進めればよかったとの事ですが、場の差配はそうは行かないらしいです。


もっとも、先生方のほうも、これほど長きにわたりお出でにならないのも記憶にないとも言っています。



場の差配とは、文字通り場を取り仕切る役割だそうです。

ニュアンス的にはイベントのコーディネーターっぽい感じみたいです。

もっと厳かなモノなのだそうですが・・・。

まあ、現場監督とある種の技能保持者を兼ねた存在みたいです。

何の技能なのかは聞いてもよくわかりません。

流れを滑らかにするみたいですが、それが式次第の進行の流れなのか、何らかの液体を持ち込むという事なのか・・・


現状、場の差配は集合場所に現れず、期限も迫っている状態だそうです。

そこで、委任状は無いものの何とか代行して状況を進めたいという事のようです。

その為に、一時的にも自分に信仰を持ってもらい代役として行動したいという事だそうです。

そんなに簡単な話なのかを確認してみましたが、有資格者不在のための緊急避難的な処置で、本人も不本意ではあるものの現状放置は避けたいとの意向です。


生真面目な中間管理職が、全ての責任を背負い込んで暴走しつつある感じに見えます。


先生や場の差配の帰還可能性や不在理由については、一つ目も詳細は分からないようです。

通常であれば、暮れのある時に一つ目たちが集合して普請の確認を実施していれば、時間になると先生方が現着してきたそうです。

そこで、場の差配の指揮のもとで受け子と合流し接待を受ける感じだったそうです。


ここで困ったのは、一つ目自身も先生たちが何処から来ているのか詳細は知らないという事です。

山から来るのは知っているのですが、それしかわからない。

逆に今までは知らなくても万事滞りなく進行していたので、疑問に思ったことも無いようです。



集合の時期は年の瀬。


先生方は、本当に大晦日には到着してたそうです。

普請に関しては、場の差配の指示にて、道や水路などの状態確認などをしてたみたいです。

ただ、一つ目が直接掃除をしたり修理をしたりしてたわけじゃなくて、不備を見つけて是正を勧告したり報告したりしてたそうです。

・・・まるで、告げ口するみたいにも思われていた様で、実は余り好かれてはいなかったと言ってます。


でも、担当職務なので、全うしたいみたい・・・律儀と言うか、馬鹿と言うか・・・。

それが、責任というものだ・・・まあ、陰口とか聞こえるの・・・ホントは嫌なんだけど・・・。とか言ってます。

全然、折り合いついてないじゃん・・・。

・・・うん、陰口とか、嫌だよな・・・。



彼にとっても現状は由々しき次第だとの事。

場がおさまらないのももちろん問題なのですが、より深刻な事象があるのだそうです。


残念ながらこの一つ目は、この現場しか担当したことが無いので詳細は不明ですが、先生や先生に該当するモノが手順を放置すると、何らかの入れ替わりが起こる事があるとの事。

具体的には不明らしいですが、普通は手順を怠ることで不具合があり、しかし、不具合がありながらもそのまま放置される事が大体らしいのですが、まれに何者かが成り代わってしまう事があるのだそうです。


それでも、かつての成り代わりは近在のモノの仕業であったみたいなのですが、最近はちょっと洒落にならないモノが居座ってしまう例があるらしいです。



状況が進まない事の結果に対する危機感はすごいのですが、具体的に何が起こるのかについての現象面に関しては関心が薄いみたいです。


一つ目さん的には、まずは今回の場を収める事が最優先の様です。


逆に彼の掌握範囲では、今後の展望も対応も検討できないとの事。

と、言うよりも、話が職分を超えすぎて頭が追い付いていない感じです。

とにかく今回を穏便に済ませることで精いっぱいという感じです。

ただ、将来の話に関しては全く分からないと愚痴みたいなことも言っています。

なにしろ、ここまでの状況はかなり珍しく、これ程の規模で集合がされないのは山向こうに火の雨が降って以来とも言っています。



火の雨について聞いてみたのですが、ちょっと胡乱な話です。

どうも一つ目は季節を一巡として認識しているくせに、ソレを1単位として年と捉えることが出来ていないみたいです。

時間の経過は、ちょっと前、かなり前、ずっと前、みたいな感じで、ふんわりしています。


火の雨が降るちょっと前から、受け子側に混乱があったそうです。

本来の担当者が不在になり、急遽代理人が出てくることが増えたとの事。

それも、席次の高い者から不在になってしまい、火の雨の少し前には子連れの女が出てきて場の差配を慌てさせた事もあったと笑っています。


一つ目的には受け子が男でも女でも気にならなかったそうですが、何か問題があるらしかったとの事です。


この辺の問題の内容も、場の差配が騒いでいたので問題があるのだなあと思っただけで、何が問題なのかは分からない(気にならない?)みたいです。

ただ、子供は先生に会うとサワリがあるとか言ってます。

で、肝心の火の雨ですが、山向こう(たぶん市街地です)の方へ天から降ってきていたとの事。

夜半に山の稜線がはっきり見えるほど明るくなったとの事。


この時にはお役目中では無かったので、向いの山(市街地側とは反対側の山の事か?)から眺めていたそうです。

その時には、先生方のお仲間にも被害が出て、場の時には一つ目の仲間も含めてほとんど集合しなかったとの事。

それどころじゃなかったのだろうと言ってます。


その頃から、普請確認もだんだんと規模が縮小されてきたらしいです。



残念ながら、一つ目の身ではこれ以上は分からないみたいです。

場の差配であれば、最悪、信心を借りてくることも出来たかもしれないと言っていますが、それは具体的に何を示しているのかは分かりません。

しかも、肝心の場の差配も不在で、場の差配が居ればそもそも信仰は不要だから信心を借りる必要は無いと・・・思考がループし始めています。


私としては、火の雨とかサワリ(障りか?)について、もう少し詳しく聞いてみたくも有りますが、末端の木っ端一つ目では分かることも限られるみたいですね。



そんなこんなで、結構な時間、話し込んでしまっていたみたいで、一つ目が慌てだしました。


得られぬ信仰に恋々としていると、機を失う。と言って、会話を打ち切って来ました。


とりあえず一つ目はちょっと他を当ってみる気になったみたいで、出ていきました。

万一、他で信仰が得られなかったら、また戻ってくるとの事です。


まあ、何の因果で私の前に現れたのかは知りませんが、再訪するほど切羽詰まったのであれば哀れな話です。

その時には、少しくらいは拝んでやる事も吝かじゃない気もしました。


それにしても、こんなにも世間は変わってしまったのに、嘗ての名残通りに事を遂行しようとする彼らは、まるで「昔」というモノの残り香のようです。

どんどん流れていく時間の風に吹かれて、いずれは拡散して消えていくだけの存在なのかも知れません。

せめて、せっかちなあの一つ目が、望んだ場を得られることを祈りました。

器用に変わる事が出来れば、苦労も少ないだろうに・・・。


人の世も、アチラの世も、不器用モノって損をする世の中みたいで、ちょっと残念な気がしました。

要領が悪いと、損することが多い世の中です。

せめて、真面目な努力が報われると良いなあって、思います。

古いことって煩わしいことが多いけど、残っていたことには意味がある・・・って思ってもらえると、多少は待遇良くなるのかな?

本人たちは、ただ仕事を一生懸命やってるだけだしね。

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