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ep36話:紅茶鶏

……聖夜。


街は浮足立ったノイズに包まれているが、1DK型宇宙船アカネハイツ203号の艦内は、独自の波長で安定していた。


観測窓の縁では、百均のミニツリーが、数々の修羅場を乗り越えてきた「六代目豆苗」の隣で、ささやかな光を放っている。


「……イベントは、楽しむためにある。……ただし、予算と静寂の範囲内でだ」


私は、スーパーで確保した1キログラム3ヶ入りの「鶏胸肉」という名の重装甲を、まなカタパルトへ。


ターゲットは、冷めても美味い、そして何よりシェリー酒に合う「紅茶鶏」だ。


「……ティーパック、四つ投入。……贅沢な香りの弾幕を張れ!」


濃緑の紅茶の海に、鶏胸肉を全弾投入。

三分の加熱後、私はハッチ(蓋)を閉鎖。余熱という名の「静かなる熟成」に全てを委ねた。

その間に、醤油、味醂、酢をブレンドした特製タレを煮切る。酢の酸味と胡麻油の香りが、戦士の鼻腔を刺激する。


二十分後。


「……火の通り、完璧。……パサつきという名のデバフも、紅茶のポリフェノールが封じ込めている」


半日の漬け込みを経て、琥珀色に染まった紅茶鶏が完成した。


私は、大切に保管していた秘密兵器――シェリー酒「ティオ・ペペ」を、ワイングラスに注ぐ。

クリスタルのような氷の音が、静かな艦内に響く。


実食。

…………。

……美味い!


紅茶の渋みが鶏の脂を抑制し、そこにシェリー酒の辛口が合流。……口の中で、聖夜の祝砲が打ち上がっている。


さらに、私は最終兵器を温存していた。

帰投中、ケーキ屋の野外拠点で「投げ売り」という名の最終価格で放出されていた、ショートケーキだ。


「……フッ。……定価で買うのは素人だ。……投げ売り(ラストチャンス)を掴む者こそが、真の勝利者である」


聖夜の航路、全方位異常なし。

私は、甘いケーキとキリッとしたシェリー酒の、背徳的なマリアージュを楽しみながら、静かに更けゆく夜を祝福した。



 ▼今回の作戦費用報告(Mission Expense Report)

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【投入資産】    【コスト】 【備考】

 ・鶏胸肉(1kg)   :  780円  (バルク買いによる効率化)

 ・紅茶&調味料   :  50円  (備蓄品を使用)

 ・投げ売りのケーキ :  300円  (戦術的な値引き待ち)

 ──────────────────────

 【合計コスト】  : 1,130円 + シェリー酒のストック

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【作戦評価】

 鶏胸肉を「紅茶」で制御する高度な調理法により、聖夜の満足度を最大化。

 「ティオ・ペペ」とケーキという、和洋折衷を超えた「艦長流スタイル」を確立。

 次なる課題は、一キロ作った紅茶鶏が「明日からの朝昼晩」を制圧してしまうことへの飽き対策。

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