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ep32:おじや

……午前五時。


バイタルサイン、正常。

「……三十六度五分。宇宙海兵隊の勝利、および体内拠点の完全奪還を確認した」


司令部(会社)からは、戦術的休養(二、三日の有休消化)を命じられた。無謀な進撃は慎まなければならない。


だが、病み上がりの覚醒は早い。私は、空虚な胃壁からの要請を受け、「おじや」という名の軽微な補給リペアを計画した。


「……だが、うどんやそばの残渣(汁)がない。……このままでは、コクの欠如した脆弱なスープになるのは明白だ」


私はコールドスリープ装置(冷凍庫)の深淵を、精密にスキャン(索敵)した。


そこには、正体不明のキッチンペーパーに包まれた塊……。


「……はは、はははは! ……ゴホッ、ゲホッ!」


完調ではない肺に、勝利の高笑いは毒だった。

だが、見つけ出したのは「揚げ玉」という名の、最強のコク補給パーツ。


いつかの戦い(自炊)の残滓が、この窮地を救うべく奥底で待機していたのだ。


「……ミッション:揚げ玉おじや、構築開始」

和風出汁、めんつゆ、醤油、酒。そこに揚げ玉を投下し、脂溶性の旨味を強制的に抽出させる。


解凍したライスを落とし、溶き卵という名の防護被膜で全体を包み込み、ハッチ(蓋)を閉鎖。一分間の定着時間を経て、完成。


実食。

…………。

……しみじみと、美味い。

高級感などない。だが、このチープな油分と出汁の融合こそが、疲弊した細胞を内側から温めていく。


「……仕上げに、昨日の生姜を……。……あ」


弾薬庫(冷蔵庫)は空だった。

昨夜の焦土作戦において、私は生姜の全弾を撃ち尽くしていたのだ。


「……フッ。……最後に一点、計算違いがあったか。……だが、戦果としては十分だ」


私は、洗浄室(風呂)から聞こえる「満水」の合図を受け、ゆっくりと立ち上がった。

今朝の湯気は、勝利の煙よりずっと心地よい。



 ▼今回の作戦費用報告(Mission Expense Report)

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【投入資産】    【コスト】 【備考】

 ・最終防衛兵器(揚げ玉):  0円  (遺失物より発掘)

 ・標準兵糧(ライス・卵):  60円  (安定の備蓄)

 ・各種調味料一式    :  10円  (生姜は欠品中)

 ──────────────────────

 【合計コスト】  :  70円 + 過去の自分への感謝

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 【作戦評価】

 揚げ玉の投入により、即席おじやの満足度を300%向上させることに成功。

 生姜の欠乏という兵站ミスを露呈したため、次なる物資調達ミッションにおいて「最優先確保」を決定。

 現在より、温熱入浴によるリハビリテーション・フェーズへと移行する。

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