ep30:常夜鍋
……冬。
大気循環の低下を察知し、私は母船の衣替えという名の「装備換装」を開始した。
夏物の薄い宇宙服(Tシャツ)を圧縮格納し、厚手の秋冬装備を展開する。
そして、ついにその封印を解いた。
「……炬燵。……かつて多くの戦士たちの志を呑み込み、廃人へと変えてきた魔の戦略兵器だ」
私は自戒する。この重力圏に捕らわれる前に、全ての補給(食事)と生命維持(片付け)の準備を完遂しなければならない。
本日の栄養食(夕食)は、豚バラと豆苗による「常夜鍋」。
「……パック酒という名の安価な燃料を半分、水を半分。……これが、黄金の配合比だ」
煮え立つ液体の海に、豚バラと、先日の戦い(自炊)から再び戦線復帰した豆苗を投下。
「……今だ! 茹で過ぎは罪。……ポン酢という名の酸味の弾丸で仕留める!」
実食。
…………。
……美味い! シンプル。ゆえに飽きがこない。
私はここで、ベースとなったパック酒をあえて氷の入ったグラスに注ぐという「変則航法」を敢行。
「……フフ。安酒と侮るなかれ。……得意な戦場に引き込めば、銘酒という名の重巡洋艦をも屠ることがあるのだ……」
キリッと冷えた酒精が、熱い鍋で火照った喉元を駆け抜ける。
完璧だ。完璧な補給作戦だった。……だが。
「……不味い。……炬燵の重力が……強すぎる……」
下半身を包み込む赤外線のぬくもり。
アルコールによる神経系の弛緩。
私は今、事象の地平線の境界線上で、かろうじて意識の信号を保っている。
一歩、あと一歩でも奥へ潜り込めば、明日の朝までワープ(寝落ち)してしまうだろう……。
「……あす……(明日、頑張る……)」
▼今回の作戦費用報告(Mission Expense Report)
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【投入資産】 【コスト】 【備考】
・基幹燃料(パック酒): 700円 (料理と飲用の兼用)
・補給具材(豚・豆苗): 200円 (安定の低コスト)
・熱エネルギー(炬燵): 若干 (精神を破壊する温もり)
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【合計コスト】 : 900円 + 翌朝までの自由時間
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【作戦評価】
「常夜鍋」の調理プロセスは完璧。
安酒をロックで楽しむという、逆転の発想による「勝利の味」を確立。
しかし、炬燵という名の超重力に屈し、これ以上の艦内活動は不可能と判断。




