ep15:暁の脱出
※この物語は、1DKという名の宇宙船と愛機アルカディア号を駆り。
大銀河を生き抜く、一人の女性の等身大スペースオペラである
午前四時五十分。
バイザー越しに差し込む朝日はまだ遠い。
段差という名の地形的障壁と、昨夜の「通信エラー」による精神的ダメージにより、熟睡など望むべくもなかった。私は目覚まし時計(クオーツ式タイマー)より早く、覚醒を余儀なくされた。
「……アルカディア号、各システム起動。暖機運転開始」
隣のサイトで眠る「彼女」の安眠を妨げぬよう、極めて慎重に、かつ速やかに水平対向エンジンに火を入れる。
回転数、一二〇〇で安定。
周囲に敵影(他キャンパーの起床)なし。
私はサイドブレーキを解除し、低速で野営地を離脱した。
バックミラーの中で、昨夜の「戦場」が小さくなっていく。
その光景を確認した瞬間、私の肺から長く重い溜息が漏れた。
「……ふぅ。……これだから、未知の文明との接触は慎重に行わねばならんのだ。……一歩間違えば、銀河戦争(警察沙汰)に発展しかねないからな」
ハンドルを握る手には、いつもの冷静な艦長の感覚が戻っていた。
だが
「……あす! ……あすって! なんだぁぁぁ! なんなんだ私はぁぁぁ!!」
早朝の静寂な車内に、私の悲鳴が虚しく響く。
ダッシュボードに足を投げ出していた昨夜の自分を、今の自分が増幅された羞恥心で殴りつける。今すぐ停車して、枕に顔を埋めて足をバタバタさせたい。
ラジオから流れる軽快なポップスが、私の絶望をさらに加速させる。
「……忘れるんだ。……忘却こそ、銀河を生き抜くための最強の防護シールドだ」
一時間後。私は目的の補給基地(温泉施設)に到達した。
入浴料、500円。
「……安い。この価格で、昨夜の汚れと羞恥心を洗い流せるというのか」
湯船に浸かり、戦士の休息。
風呂上がり、私は自動販売機で冷えた「瓶入り乳飲料(牛乳)」を確保。さらにコンビニで購入しておいた「あんパン」という名の兵糧を展開する。
「実食」
…………。
……うまい。
五〇〇円の湯と、冷たい牛乳、そして何の変哲もないパン。
アルカディア号の青い車体を眺めながら摂るその食事は、昨夜のカレーよりも、ずっと「自由」の味がした。
▼今回の作戦費用報告(Mission Expense Report)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【投入資産】 【コスト】 【備考】
・特殊沐浴料(温泉) : 500円 (羞恥心の洗浄費用込み)
・補完飲料(牛乳) : 150円 (カルシウム補給)
・標準兵糧: 130円 (安売りのパン)
──────────────────────
【合計コスト】 : 780円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【作戦評価】
暁の撤退作戦に成功。隣接文明へのさらなる接触を回避。
精神的ダメージは「温泉バフ」により五〇%回復。
母船(アカネハイツ203号)へ帰還する
皆さんは風呂上がりの牛乳は、ノーマル派ですか?コーヒー牛乳ですか?フルーツ牛乳ですか?
ぜひ教えてください。




