ep10 ホワイトシチュー
※この物語は、1DKという名の宇宙船で大銀河を生き抜く、一人の女性の等身大スペースオペラである
給料日まで、あと三日。
我がアカネハイツ203号の財政状況は、今や事象の地平線よりも暗い。
原因は明白だ。某出版社の「週刊・スタートレック」シリーズ。分冊百科という名の波状攻撃に、私の経済的防護壁はあえなく崩壊した。
「……デアゴ●ティーニめ。私のロマンを人質に取るとは、卑劣な戦術だ」
さらに、私には「新造艦(車)」の建造計画という極秘任務もある。
このため、現在の予算は実質的に「真空状態」にある。
「……掃き溜めから、光を見つけ出す」
ホワイトホールを緊急スキャン。……牛乳、よし。
コールドスリープ装置(冷凍庫)の深部をサルベージ。……いつかの鶏胸肉。
そして培養室(野菜室)には、四分の一にまで削り取られたキャベツの残骸。
「決まりだ。今夜は『簡易シチュー作戦』を敢行する」
鶏胸肉を解凍し、キャベツと共にフライパンという名の反応炉へ投入。
小麦粉という名の「結合剤」をまぶし、牛乳を注ぎ込む。
コンソメという名の「触媒」が、バラバラだった食材たちを一つにまとめ上げていく。
「……見ろ。この白濁した液体。それは絶望の淵で見つけた、慈悲の光だ」
とろみが付くまでじっくりと加熱。仕上げに塩コショウで味を整える。
見た目は、それなりに「シチュー」としての威厳を保っている。
「実食」
…………。
……うん、普通。
コクが足りない。だが、熱いミルクの優しさが、予算不足で荒みきった精神を柔らかく包み込む。
鶏肉を噛み締め、私は決意を新たにした。
「……あと三日。このシチューの残りを再処理しつつ、私は給料日という名のゴールへと辿り着いてみせる」
▼今回の作戦費用報告(Mission Expense Report)
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【投入資産】 【コスト】 【備考】
・戦略的備蓄(鶏肉): 80円 (冷凍睡眠からの覚醒)
・培養物資: 20円 (四分の一カット)
・反応溶剤(牛乳) : 50円 (使いかけの残存分)
・娯楽費(分冊百科): 2,000円 (財政破綻の主犯)
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【合計コスト】 : 2,150円
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【作戦評価】
実質食費150円での戦線維持に成功。
「週刊・スタートレック」による精神的充足度は高いが、経済的ダメージは甚大。
残存シチューを資源とし、次回の「リメイク作戦」へ移行する。




