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妹
三、
「 妹のサダとは年も離れておりますので、生まれたときにはもうあたしは奉公にでていて、年に何度か顔をだして土産物をくれる姉がいるぐらいに思ってくれていいんですけど、親に『おまえは姉さんに感謝しなきゃならない』なんていわれて育ったもので、なんだかずっと手紙もくれて、 こっちも気にかけてましてね。 親が死んだあと、あの子が幼馴染のタイゾウさんといっしょになるっていうときは、旦那様にもご祝儀をいただいて、おかげでそれなりのことをしてやれたんですよ。 タイゾウさんも箪笥職人で、ほら、ここにもあるような・・・」
「帳場箪笥だね。 ヒコもみたことあるだろう?ほら、店のいちばんいい場所にある立派な箪笥だよ。おやじがどこかに頼んで作らせたとかで、あれもそのうち『家宝』になる。 じゃあ、タイゾウさんていうのは指物師なのかい?」釘をつかわないでつくるのだろう?とサネに感心してみせる。