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 ──×月×日 空が赤く染まる夜明け 複製された厄災が竜道を通って地球に向かう

 6つの目が邪悪な光を宿し、3つの口が火と風を吹き護りを破るでしょう


 魔王討伐から2年余──百合が魔王復活の予知を私に伝えてきた。



 夜の海上に巨大水晶が浮かんでいる。内側から滲むように広がる光が、暗闇を照らすカンテラのように見える。

 濃い紫に色づいた魔法の容れ物、かつ転移の拠点である水晶。それがなぜ海上にあるのかといえば、私が璞市役所から転移させたからだ。

 

 私は地球には戻らないつもりだったが、オキザリス主宰として最後の仕事を果たさねばならなくなった。

 すぐさま日本に跳び、としおに会った。

 としおと私の意見は合致した。魔王は敗れる直前「複製魔法」を発現したのだろうと。

 複製魔法──それは術者のコピーを残す魔法で、最後の一撃で敗れることが確定した場合にのみ発動すると言う伝説の魔法だった。


 魔王の複製がどういう形でどこにあるのかは分からない。ひとつ言えるのは「魔王は再び現れて人々に厄災をもたらす」という事だ。

 その場所がガランではなく地球だと予知された以上、やるべき事は一つ。

 私は再び魔王討伐に向けてのプランを練り、準備した。


 魔王がガランから日本にやって来るルートを分析した結果、ドラゴン・ロードを通る可能性が高いことが分かった。予知の内容とも一致している。

 ドラゴン・ロードは、ガランで突然発生した魔物たちがどこから来るのかを研究していた機関が突き止めたワームホールの一種だ。

 私は全国のマグネターたちに、ドラゴン・ロードを通って出現した魔王を水晶内に引き寄せるよう呼びかけた。

 

 

 海岸に討伐メンバーが集まり夜明けを待つ。

 前回と同じ、色即是空、としお、私の6人だ。

 

「市長……はもう退任されたんでしたね、六波羅さん。その説はどうも。一緒に戦ってから2年も経つんですね」

 顔を合わせてすぐ、星月夜即真がにこやかに話し掛けてきた。

「ええ、早いものです。星月夜さんは記憶を取り戻せましたか?」と返す。

 

「はい、すっかり。公園でスカウトしてもらったおかげでブラック企業を辞められました。それと、魔法陣の睡眠魔法はよく眠れましたよ」

 軽いジョークのように思い出した証拠を話してくれた。

 

「それは良かった。慈眼さんはどうですか?」

「はい、おかげさまで」

 少し顔を赤らめた様子から、()()()の記憶も取り戻したと察した。


「ガランで倒れた時に助けてくださったこと……ありがとうございました」

 微笑みに幼い頃の面影が見え、自分が慈眼の身近な者のように感じた。

「礼には及びません。元気になられて何よりです」

 

「雲水さん、お子さんが生まれたんですね! おめでとうございます」

 獅崎十色が振り返って言った。としおから話を聞いたらしい。

 

「雲水さんと百合さんにベビーが?! おめでとうございます!」

「おめでとうございます」

 いきなり皆から祝福を浴びた。これから討伐だというムードではない。


「ありがとう。この歳で父親になるとは思わなかったです。私は子供が君たちぐらいになる頃まで元気でいられるか分かりませんが、百合は長命種の血が入っているようだから安心しています」

 

「百合さん、どうりでいつまでも若いと思いました。楽しみですね。俺も結婚して子供が欲しいです」

 獅崎に結婚願望があるとは意外だった。


「好きな相手でもいるのですか?」

 そう聞くと獅崎の歯切れが悪くなった。奥手なのか、恋はこれからなのかもしれない。

「自然に好きな相手ができたら流れに乗りなさい。上手く行っても駄目になってもそれが人生です」

 

 マキナの事を思い出していた。甘酸っぱい日々が顔を出す。獅崎や他の皆もそんな相手と巡り合うのだろうか。

 マキナの娘、レイナ・セルヴィエスはもうすぐ到着する予定だ。

 

 としおと化身美空斗が「キラ」について話している。化身の父親である化身マヤ氏はキラ人であり、キラ研究の第一人者だ。

 氏がキラ人のために性別の悩みから解放される薬を開発したことで、キラの存在が社会に認知されるようになった。薬は恋愛対象に合わせた性変化を促すとして議論を巻き起こしている。


「ミンナ! ミクト! キタヨ」

「ヒサシブリ」

「マタ、イッショニタタカエル!」

「ココッ!」


 四神だ。

 レイナは鶏神に乗ってきたようだ。

 ヒトガタ神たちは水着とTシャツ姿、サングラスをかけゴムボートを抱えている。

 随分と余裕のある神々だ。可笑しくも頼もしい。

 

「海水浴は後でお楽しみくださいね」

 としおは慌てている。


 しばらく再会を喜び合い、作戦会議に入った。

 前回同様、効率良く戦えて覚えやすい攻撃パターンをとしおが説明した。


 地球人類の存続がかかっている事態の時に不謹慎かもしれないが、私はわくわくしていた。

 四神と色即是空、としお、私で戦える日がやって来たのだ。

 命をかけた大役を負っているのだからこれぐらいの余裕は許してほしい。


 その後ジャンパーが集まってきた。全員で8人。

 これで私とレイナを入れて10人のジャンパーが揃った。

 

 

 夜明けまであと少し。


「あれ言ってくださいよ! 発破かけるやつ」

 星月夜が悪戯っぽく笑って親指を立てた。


「……ああ」

 全員の視線が集まる中、声を張った。

「2度目の魔王討伐です。今回は色即是空に加え四神の皆さんという最強メンバーで戦います。共に勝利を掴みましょう。ではよろしく! 野郎ども」

「オー!」


「ヤロウドモ!」「オー!」と、四神の皆が復唱した。


「モードS発動!」

 としおが叫んだ。

 色即是空に変化が起こった。

 

 朝陽を浴びさらに輝く獅崎十色の逞しい身体を重厚な防具が包んでいく。彼こそ現代のアポロンだ。

 化身美空斗には優美な白銀の鎧が与えられたようだ。軽やかで勇ましいテイマーの姿は天使と重なる。

 賢者のローブは慈眼是親を覆って気高く揺らめいている。比類なき存在の圧倒的な魔力(ちから)がそこにある。

 星月夜即真は幾多の魔石輝く魔法ローブをまとい、特級魔法使いの刻印たるマジック・タトゥーを浮き上がらせた。かつて私が憧れてやまなかった魔法使いの姿そのものだ。


 慈眼是親が星月夜即真の「魔物感知能力」を強化した。星月夜が魔王を感知するところから討伐が始まる。

 

 20××年 午前4時44分 魔王を感知


 世界中のマグネターたちが空を指差すように一斉に片手を上げた

 転移してきた魔王を海上の水晶内に引き寄せることに成功

 

 慈眼是親が魔王の動きを束の間封じるフリーズ魔法をかける


 六波羅雲水とレイナ・セルヴィエス他8人が魔王を近距離転移させ水晶から「取り出す」


 化身美空斗が「ドラゴンの護り」を詠唱

 金色のドラゴンにより透明なドーム型のバリアが張られる


 阿羅漢としおが鑑定魔法を発動


 慈眼是親が防御のための全体魔法をかける

 

 四神と色即是空がペアになり十字の陣形を取る


 獅崎十色が巨大化した聖剣で最初の一撃を斬り込む

 


 ──太陽が昇り、風が吹き、海面が揺れ、風が止み、太陽が沈んでいく



 慈眼是親は魔王最後の一撃の前に魔法を封じ、二度と複製魔法が使えないようにした


 獅崎十色と四神の女神が同時に斬り込んだ

 

 断末魔の咆哮が轟く

 歓声が上がる


 阿羅漢としおが鑑定魔法を終了



 

 ─了─

 

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