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第44話 劉曜と簫叡




 

 昼頃から降り始めた小雨は、夕刻には土砂降りとなった。

 数多の兵が流した血は雨によって洗い流され大地は再び元の様相へと帰した............



「ハァ........ハァハァ うッ」



パシャ



俺は偃月刀の柄を地面に突き立て膝をついていた...............

 

 かつての友、簫叡(しょうえい)はここ数年で凄まじい強さになっていた。

 打ち合うごとに腕が痺れ、上体が千切れて何処かへと飛んでいくんじゃないかという衝撃が奔る.............


 常人なら一撃でお陀仏になるであろう斬撃をギリギリ躱したり防いだりしたが、それでも数撃もらい胸や腹あたりから流血している............


 対して目の前で仁王立ちしている簫叡(しょうえい)は息こそ上がっているが、傷1つ無い。


「曜 僅か数年の内に大分衰えたみたいだな」


「てめぇが強すぎんだよ...........くっそ生きながらに修羅と成り果てるとはな!!」


よろめきながら辛うじて立ち上がった俺は得物を構える。 


「ふっ、母上の無念を晴らす為には修羅になるしかないだろう? 父を殺し、漢を滅ぼすまで我の復讐は止まらぬ!! まあかつての友を殺すのは忍びないが、どうしても邪魔をするって言うんだったら殺してやるよ」



ザッ!!



 殺気を纏わせた簫叡は右脚を踏み込むと一直線で突っ込んでくる。

 避けることさえ出来ない強烈な薙ぎ払いが腹部を目がけて炸裂、慌てて柄の部分で腹部を守るも衝撃によって後ろに吹き飛ばされた。


 勢いよく自軍中に衝突した俺は吐血してそのまま倒れかけるも静観していた兵に支えられる。


「将軍、後は我らにお任せください」


「そうです!! 先ずは下がって手当を受けてくだれ」


「将軍は漢に必要な方、かような相手に命を張る必要などございません!!」


 俺を護るように兵達は簫叡の矢面に立ち長槍を構える。


 そして騒ぎ立てる兵達の後ろからは鬼の形相をした崔岳(さいがく)が馬に乗り長剣片手に駆けてくる姿が目に入った。



「よくも愛弟子を傷物にしてくれたものだ!!」



 崔岳は簫叡の真ん前に躍り出ると馬上から斬りかかる。

 しかし崔岳が長剣を振るうよりも先に簫叡の動きのが速かった。

 さっと後ろに身を退くや偃月刀を横に薙いだ。その瞬間、血を吹き出した馬がバランスを崩し、前のめりとなり乗っていた崔岳が前方に投げ出される。



「部外者が我と曜の間に入るな!! その首搔っ捌いてくれるわ!!」



簫叡はそう叫ぶと偃月刀を振り上げる。



―――――このままじゃ崔岳が.................死ぬ



そう認識した時、俺の体は勝手に動いていた。



そうはさせねぇよ!!



飛ぶように簫叡の側面にまわると抜剣して一気に間合いを詰める。



(この速度ならアイツは反応できねぇ!! もらったァ!!)



「――――――なっ!?」


「はぁァァァァァァ!!!!」



グサッ!!



 崔岳に向けていた刃先を即座に俺に向けるも間に合わず、俺の切っ先は簫叡の右肩付近に深々と突き刺さる。



「己.............この死に損ないがッ!!」



突然の奇襲に肩を押さえて顔を歪ませる簫叡..............



「俺の恩人に手ェ出すとァ いい度胸だ!!  更に身勝手な私怨で漢王のお命を狙うとは言語道断!! その体、千回だろうと万回だろうと引き裂いてやらァ!!」



簫叡の反撃を躱して後ろに下がった俺は神剣を下段で構える。 

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