7.どうすればいい?
タイバンから南に進んだ街
金髪の男によって転移した場所はタイバンから出て、すぐ近くの荒野ではなく、南の街から歩いて2日離れた場所だった。
「あの男のおかげで予定よりずいぶん早く着いたな」
この街も、タイバンと同じ様に壁に囲こまれ、身分証を使い街の中に入る、
「ほら、こうやってかざせば中に入れる、」
アルメは、彼に見せる様に身分証を壁の入り口にかざして見せた。
タイバンを出る前に、彼にギルド登録をさせ身分証を作った。
もともと、冒険者ギルドは浮浪者をまとめ、管理するための組織で、彼の様に身分がわからない者でも簡単に登録することができる。
しかし登録する場合、既に登録をしている冒険者の紹介が必要で、その冒険者の素行によっては、登録を遠慮する場合いがある。
今回は、アルメが紹介した形になる。
「あんまり、変なことするなよ」
アルメが先導しながらギルドに向かう、二人は討伐した狼の魔獣の戦利品、それと道中でもう一体鉢合わせた同じ型の魔獣の牙や、爪、それと毛皮で彼らは注目を浴びながらギルドに向かうことになったが、二人は人の目を気にする達ではなかった。
「お疲れ様です。討伐受容書をお持ちですか?」
「はい、あとこっちもお願いします。」
受付とは別の職員に戦利品の素材を託し、アルメたちは近くの椅子に腰かけた。
狼の魔獣2体ぶん、二人で割っても、金貨六枚分の値が着く。
アルメは待っている間ニヤケてしまっていた。
「楽しみだなー、怪我もしなかったし、お前のおかげだよ、昼飯はおごってやるよ」
受付からチリーンとベルがならされアルメを呼ぶ。
「お待たせしました。こちら討伐報酬と素材買い取り金です」
予想どうり金貨六枚がトレーに並べられた。
ほくほくとしながらアルメは彼にも取り分の金貨三枚を渡した。
「パーティーを組むの有りかな、」
彼の財布に金貨を入れて返す、
彼の無表情をみてその言葉撤回した。
全ての人がこの男の様に、静かな訳ではない、よく喋る奴もいるだろうし、魔術の使えないアルメを下に見る奴もいる、何より、アルメは魔獣を食べることを好んでいる。
「まあ、今だけだな、」
何気なしに呟いた言葉は、誰に対して言った訳ではない。
「昼飯食べに行こう、」
気を取りなおし、確か大通りに屋台があったと思いながらギルドを出た。
*
どの街でも、屋台の並ぶ大通りは活気がある、あちらこちらで、客と定員のやり取りが聞こえ、
その明るい雰囲気にアルメは毎度、ワクワクしながら、屋台を物色する。
「せっかくだから、普段食べれない物を食べたいな、」
フラフラとしながらも、彼はトラブルを起こすことなくアルメに着いていく、
「お前は何か気になる物なかったか?」
視線が一つの屋台に注がれる、ケバブだ。
薄くスライスした肉を串に差し込みながら幾重にも重ねて、上からタレを塗り、
回転しながら焼かれる肉は、香ばしい香りでお客を誘っている。
「いいな、いくつか種類もあるみたいだし、食べ比べしようかな、」
二人は屋台に近づく、昼を少しすぎたため、三人ほど並んでおり、すぐに順番が回ってきそうだ。
「チキン、牛、羊、思った以上に種類があるな。」
牛は高いな〜、などとアルメは呟き、羊とチキンのタレの種類が違う、三種類を選んだ。
彼も特に何も言わないので、同じ物を頼んだ。
「ほい!お待たせ!」
店員の元気な声と共に渡されたケバブは薄いパンにレタス、トマトと挟まれ、上からソースで飾られている。
「うまい!」
ピリ辛なソースがほんのり甘い羊肉と絡む、シャキシャキとした、新鮮なレタスと水々しいトマトは食べごたえあり、一口一口、とても満足するのに、食べる手が止まらない。
「お前も、気にいったか?」
二個目を食べ終わったアルメは、不意に、横の男に目を向ける、
彼も一身にケバブにカブリついていた。
可愛らしく、小さな両手で持ち。
「お前、どうした、その格好」
あっけに取られたアルメは、そんな言葉しか出てこなかった、二、三秒間をおき
「えええ!!!ーなんで!」
ケバブを食べたら小さくなった、なんてくだないこと考えてる場合じゃない!
アルメはしゃがみ、少年?と視線を合わせる。
「お前、ほんとにお前か?どうしたんだよ、その姿」
口いっぱいに、詰め込みモグモグと一生懸命に咀嚼している。
「美味しそうに食べるな、口の周りがベトベトだ、」
少年が最後までケバブを食べ終わるのを見届けると。
「さて、どうすべきなのか、」
途方に暮れるのであった、
*
街は活気あふれている。市場には、お使いに来ている子供の姿もちらほら見えており、中には、母親に手を繋いでもらい、おとなしく待っている子や、長話に飽きた子が、その手を引っ張り母親を急かしている。
アルメの連れている少年は前者で、トコトコとアルメに手を引かれながら着いてきている。
「本当に困った。この街に知り合いはいないからな、ギルドに戻って、魔術師を紹介してもらうしかないか、」
昼食を終えたアルメ達は、大通りから少しそれた市民街を通りながら、宿を探していた。
主婦や子供が多いこの通りは大通りより静かで、怪しい動きをする人間は目に入りやすいからだ。
子供にされた男は、十歳前後といったくらいで、服はダボダボとしてしっまたので、首周りは背に団子を作り紐でまとめ、裾や袖は何度も折り曲げ地面に擦れ無いようにした。
しかし靴はどうにもならない、新しいものを買うにも、すぐに履かなくなってしまう可能性もあるので、そのままにした、そのため歩くたび、カポッカポッっと音をさせるので、否応なく周囲の視線を集めてしまい、アルメはいたたまれない気持ちになった。
市民街は穏やかで、全体的に淡い黄色の建物が多い、赤い煉瓦屋根も合わされば、 街の何処を切り取っても絵本の中の一ページの様だ。
アルメ達が宿に決めたのは、そんな街並みに紛れ込む様に並ぶ宿だった。
3階建ての宿は、一階がカフェになっており、主婦や若い女性達が、出入りして居る。
「一泊したいんだけど、二人部屋空いてるかな?」
「はい、かしこまりました。朝食はどうなされますか?」
「いや、大丈夫」
入ってすぐには、宿泊客用のカウンターがあり、右手側に上に上がる階段がある。
アルメは銀貨二枚を支払い、鍵を受け取った後、部屋に向かった。
「疲れたー」
荷物を床に置きアルメは、ため息をついた。
ベットにチョコンと座った、子どもを見てアルメはさらにため息を吐いた。
「なんで子供に、本部まで後、三つ街を通らないっといけないのに、」
両手を腰に当てアルメは逡巡するが、ギルドに頼る他ないと、結論に至る。
「魔術師の紹介、いくらかかるかなー、お前、風呂入ってくるからジッとしてろよ」
そう言い、アルメは、風呂場に向かった。
少年は、アルメを目で追ったまま今回はジッとしている。
体の大きさが変わっても、無口なのは変わらず、アルメが出てくる間、おとなしくしていた。
数分程度でアルメは、タオルで髪を雑に乾かしながら風呂場から出てきた。
「ふぅ〜、スッキリした、お前も入っとけよ、その姿でも一人でッ」
タオルから顔お上げたアルメは言葉お詰まらせた、
目があったのだ、見覚えの無い、黒い髪黒い瞳を持つ女と。
「ッ!!」
アルメは咄嗟に女にタオルを投げタックルを決めた。女の動きは鈍く、体制を崩床に倒れ込む。
少年姿の彼は部屋の何処を見渡してもおらず、アルメはカバンを持って、最後に風呂場を確認してその部屋を出た。
階段を駆け下りてきたアルメに受付のスタッフが驚く、
アルメはそのスタッフに詰め寄る様に近づき、
「すみません!子ども、一緒にいた白髪の子供見ませんでした⁉︎」
スタッフは驚きながらも、見ていません、と首を横に振る、アルメは礼をいい、飛び出す様に店を出た。
「魔術師!、あいつが子供にしたのかッ」
自分でも驚くほど切迫した声が出て、アルメは一旦落ち着く様に、路地に入り身を隠した。
通りの人は数人が行き交うほどで、何人かはチラリとアルメを見ただけで、素通りしていった。
まいったな、事態が飲み込めない、私はどうすれば良い?
少し落ち着いたアルメは思い至る、あの何処にでも着いて来る男は、転移術が使えることに
体が小さくなっても、使えるだろうと思い、アルメは、一旦宿に戻る事にした。
すぐ帰って来たアルメにスタッフは面食らった顔をしていたが。すぐに笑顔になり、
「何か、お困りですか?」と声をかけた。
「いや、あの、あの後上から誰か降りて来ませんでしたか?黒髪の、長い髪の女性」
店員は首を振る
「いいえ、お客様が戻ってこられるまでに、降りて来られた方はいませんでした。」
その言葉にアルメは嫌な気持ちになった、部屋に戻ってあの女が待ち伏せしていたら逃げ切れるかわからないからだ。
「そうですか、ありだとう…」
アメルは体を左に向けて少し悩んだ後そのままカフェに向かう事にした。