表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くいかえし  作者: Kot
ムレスズメの様に
65/101

3−16 テリトリー


ふと意識が浮上した。体を覆う魔術の感覚にオネットは不快感を覚えて身を捩るが上手く動かない。

(もしかしてこれが金縛り?魔術が関係している現象だったの?)


寝起きの頭で体の異変について自分自身に問うと。第一声に明後日の事が脳裏に浮かぶ。

直ぐにそんな訳がないと。首を振ろうとするが、本格的に体が言う事を効かなくなり、オネットは遅れて焦る。


(アルメさんに声を掛けたいけど、口すら動かせない)


まるで何かに全身を覆われた様な感覚、呼吸できている事が不思議だ。

どうにか現状を打破すべくオネットはあたりを見渡そうとするが、瞼を開く事が出来ない。


(落ち着いて、魔力探知)


慌てる思考を直ぐに切り替え、自身に干渉している魔術を確認する。

瞬時に浮かんだのは、まるで体を細長い、ミミズが這うよな、そんな感覚にオネットは全身が総毛立つ、


(様々な魔術が組み合わさっている。拘束魔術が組み込まれているのはわかるけど、ゴチャゴチャで読み取れない)


ペタリと足の裏の感覚にオネットの思考は止まる。足の裏の冷たい感覚。それらは左足と右足交互に訪れ。自身が歩いている事がわかる。


(リベルテさん!気づいて!)

体の自由が奪われるだけでなく、操られ始め、いよいよパニック状態になったオネット。

これだけの魔術が発動しているにも関わらず。足の裏の感覚は更に冷たい地面の上を歩かされている。


(アルメさんはどうしたんだろう。同じ部屋にいたならこの魔術に掛かっていてもおかしく無い)


視界が閉ざされているため周囲の状態がわからない。微かな音、全身を襲う冷たい風。

裸足で、石畳の上を歩くとたまに小さな石ころがズキリと痛みを与え、これが夢では無いと実感させられる。


(この魔術の構造を早く理解しないと)


焦る気持ちを抑えて、魔力探知を再開すると、ヒタリと足の感覚が止まる、どうやら体は歩くのをやめた様だった。


(止まった?体はまだ言う事を聞かない……)


自身の身に起きている全体像がわからない。今どこにいるのか、一人なのか、複数なのか、助けはくるのか。それはいつなのか。


わからない、その現象の最中、オネットの頭の中にある魔術語が現れた。


(これは、……転移魔術)





「君……だめだな…」


食事に夢中なアルメに肩を持ち強く揺さぶりが、彼女の手からホークが落ちただけだった。

様子を見ていると。アルメは落ちたフォークには一瞥もせずに机の中央にあるカトラリーケースから新しいフォークを取り食事を開始した。


「拾いすらしないか……」


明らかに精神干渉の魔術がかけられているその様子にリベルテは迷う。ここでリガール魔術を使いアルメを解放するか、しかしそうした場合確実に魔女にバレてしまうかも知れない上に、こちらの手札を一つ明かす事になる。


(放置しよう。ここで彼女一人を解放しても意味ないし)


そう考えてリベルテはあたりを見渡す。


オネットがいない……転移術で攫われた想定していた人数より少ないことから。部屋を分けられているのは推測出来る。

アルメ達のいる部屋を出ると。シックな灰色がかったベージュの壁紙と焦茶の床板の長い廊下が続いている。等間隔で床と同色の木製のドアが並んでおり。どこまでも同じ光景に廊下に別れ道も無いのに並行間管区がおかしくなりそうだ。

そして、肝心のオネット居場所は部屋一つ一つに結界魔術がかけられているから魔力を感知する事は出来ない。


「一つ一つ調べるのは気が滅入るな」


幾つ目かのドアノブを回し扉に鍵が掛かっているのを確認したリベルテは手取り早く魔女と相対する事にした。


(適当に破壊すれば良いか)


手の平に魔術陣を表し拘束魔術、その応用で一つの魔術陣から幾つもの金色がかった鎖を表し、結界がはられた扉を突き破りリベルテが手を軽く引けば扉を壁から引き剥がし、木片を散しながらリベルテの魔術陣に収まる。


「さて、侵入者がいますよ、魔女様」


廊下の奥、笑みを浮かべて見やると、皺がれた老婆が足音なくそこに現れた。


魔女は歳を取らないが。周りに馴染むためにわざわざその姿を変える個体もいると聞く。

どうやらリベルテの前に現れた魔女もその場合の様で、


その皺がれた声で魔術語を唱えた。


「」


小さすぎて距離が空いている今その声は聞き取れ無かったが、魔力はその()()に答えリベルテを攻撃する。


一般の防御魔術で攻撃を防ぎ様子を伺う。魔女自身もこの不可侵な場所を維持するために相当な魔力を使っているだろうが、魔力は温存するに限る。

視界にキラキラとした()()が襲い掛かってきた事はわかったがその魔術師が何かまではわからない。ただ攻撃力が低く只の防御すら破壊はできない様だ。



(やっぱり魔女では無いか……初っ端から本体が出てくるなんてあり得ないよね)


これだけの空間を維持している魔女が一体で管理しているとは思えない。弟子(分身体)も確実に存在しているだろうし、リベルテの経験上分身体が一体で無いと予想付け、嫌気がさす。


魔女はそうやって根絶えない。


風魔術で作り上げた弾丸で、追撃を相殺し、先ほど使用した応用術の鎖をムチの様にしならせ魔女本体をっ叩く。


ガラ空きの肉体に斜めに打撃を受けた老体は軽い体を吹き飛ばされ、先の見えない廊下の奥に消えた。


(飛ばされたフリしてして逃げたな!)


風魔術を足元に表し、前進する勢いを増して後を追う。


攻撃力はないが、小賢しさが見える。この空間が相手のテリトリーである事を忘れてはいけないとリベルテは警戒して魔女を追った。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ