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くいかえし  作者: Kot
ムレスズメの様に
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3−8 実戦

消えない炎に眼前を封じられた魔獣はその首を左右に振るだけで、身動きが取れない姿は滑稽だ。

(私達が近いている事に気づけていない)

滑稽な魔獣その姿にアルメはニタニタと笑みを浮かべながら近づく。


視界を塞がれた魔獣、しかし防御壁によって身を守られた状態体では、アルメの攻撃は通らない。

リベルテがアルメに見せた攻撃方法をオネットに伝えるとオネットは難しい顔を浮かべたが、コクリと頷き、答えた。


「やります!」


連続した攻撃を放てば魔獣の防御壁は突破しやすい。それは集団で魔獣を攻撃する通常の討伐と同じ理屈なのだろう。通常、一人でその様な魔術攻撃を放つとなれば魔力の調節のため一撃一撃は弱く、魔獣の防御壁は虫がぶつかる程度の物だろう。


オネットがリベルテと同じ行動をすれば、その後、防御壁を突破した後の魔獣本体の攻撃ができなくなるらしく。アルメは手に持つ短刀に力を込めた。


冷静に周囲の魔力と溶け込むオネットが魔獣の前に立つ。さすが魔術師、その魔力のコントロールはそこいらの冒険者とは比べものにならない。


魔獣の隠された視界の先。数メートル離れた先に立つその姿にアルメは頼もしさを覚えた。


魔獣がこちらに気づかない事を確認したオネットは手に持つ杖に力を込めて、流れを意識し魔術を構成し杖を魔獣に向けて。魔術陣をその前に表した。


オネットの魔力は少ない訳ではない。

魔女の戦いで初の実戦で魔力の効率的使用をすることができず。ほとんど守りにその魔力を持って行かれてしまい坊戦一方となってしまった。

その後、反省を生かし改めて戦闘時の魔力効率を一から学び直したのは言うまでも無い。


自然の魔力の流れ。自身の魔力の流れ。少しずつ渦を巻く様にオネットは魔術を発動した。

威力を上げるために物質の形は小さくそして弾数を多く魔獣の四方から攻撃を当てられる様に。

魔術はオネットの構想に答える様にその姿を表した。


魔術陣は杖の先、魔獣の正面だけでなくその数を増やして魔獣を迎える様に放たれた。


視界が晴れた途端向かい撃たれた水の弾丸に魔獣は生存本能からか逃れるために飛びのこうとしたが。襲いくる弾丸の数に怯み体を閉じこませてた。


まるで子猫の様に怯え縮まる姿、成り立てと言われる初々しさを感じオネットは初の討伐でこの魔獣に遭遇できた事に感謝した。冷静に働く思考は判断能力をなくした魔獣の防御壁にひびが入る姿を見て、自身の魔力量の調節をしながら必要な魔力で必要な箇所に魔術を放ち。効率よく魔獣の防御壁に攻撃を繰り出す。


後少し、後少し。


そうして焦がれた時がオネットに訪れたる……しかしあと少しのところで、魔獣は怯えた体でオネットに飛びかかった。


まるで遊ぶ様にオネットに戯れていた魔獣はもうおらず。恐れを目の前にし覚悟を持ったのか、はたまた悪あがきか。その思考を理解できる物はこの世のはいない。


そんな魔獣の悲鳴にも似た声を全身に受け、迫りくる魔獣に冷や汗をながすが、その姿を視界に納めるオネットの榛色の瞳はどこまでも凪いでいる。


そしてその爪がオネットに届く前に魔獣の防御壁はガラスが砕ける音を立てて魔獣の目の前から消えた。


オネットの耳にその音が入るや否や。オネットは振り下ろさせる魔獣の爪から逃れるために。可能な限り残して置いた魔力を使用し。先ほど魔獣から逃れるために使った風魔術で自身の体を飛ばした。

威力は先ほどよりも出なかったがギリギリでその爪から逃れることができた。


「アルメさん!」


何とか転ばす両足で着地したオネットは頭上を見上げてアルメの名を叫んだ。


魔獣の視界に突如現れた黒髪の人間は体を中に投げだられた様な体制ながらもその目は魔獣の赤い目を捕えて狙う。

伸ばした腕は短く硬いその黒い毛皮を掴み。もう片方の腕で握り込まれた短刀を引き寄せるために力を込めた。


魔力を持たないアルメは魔獣を狩続けて四年間より確かにその確率を高めるために持ち物全て、細部までに工夫を凝らしている。


その短刀はアルメが罠で普段使っている矢尻型の魔術具と同じ魔術語が刻まれている。


一定以上の衝撃を与えると爆破が起こる使用になっている。がアルメはその使用通りに魔獣を狩ってっている訳ではない。


魔力の少ない人々にもその恩恵を使える様に作られたのが魔術具だ。

騎士団や士団。戦えるほど魔力を持つ冒険者が持つ武器とは違い、あらかじめ魔力が込められておりそれぞれ特定の手順を踏む事で発動する魔術具はとても繊細な作りをしている。

 

それ故に多量の魔力を含んだ魔獣の血肉にその身を沈めると。誤作動を起こす。

通常起こす爆破はその様相を変え。爆破の威力は血を伝い全身の筋肉の機能に異常をきたす。

 

体に突如訪れた静かな衝撃。


赤い目を持つその魔獣は片目をその魔術具に潰されて、動きを止めた。

 

防御壁を破壊されても、片目を潰された程度では死なないはずの魔獣は体の血が沸騰した様に逆流し始める感覚に、ほんの少し残っていた思考も痛みによってかき消された。


僅かな静寂、魔獣が自身の体の異変に困惑しているその瞬間、アルメは短刀からてを話魔獣の体を蹴って自身の体をなるだけ魔獣から離れよおと足掻いた。


プチリ


小さいがハッキリ聞こえた音


次の瞬間魔獣の体は内側からに爆破と共に血が吹き出し、アルメの体を赤く染めた。

爆破の威力は元来のそれより小さいが、宙に投げ出されていたアルメの体は赤い飛沫と共にその余波を受けた。


「うっ!」

「アルメさん!」


僅かに距離を取っていたオネット足に力を入れて落下するアルメの体を僅かな魔力と駆使して。何とか落下に衝撃を抑えて受け止めた。


「やりました!魔獣を討伐できましたよ」


「血まみれだけど……よかったよ……」


アルメの浴びた魔獣の血がオネットの衣服にも染み付き、二人は血まみれになってしまった。

魔力の疲弊したオネットと多量の血を浴びて精神が疲弊したアルメは、ひとまず死骸を置いて、リベルテ達が居るであろう廃村に戻る事にしたが……


「気持ち悪いやり方をするね……」


突然聞こえた声に彼女達は顔を驚き見れば、金髪の青年が倒れた魔獣の死骸を見下ろしていた。


「リベルテ……お前、やっぱり気づいてやがったな……」


アルメの声色には少し苛立ちが感じられたが、呆れの方が強く感じられた。


「これから同行するんだ。どのくらい実戦で動けるか知る必要があるだろう?安心しなよ、死ぬ前に助けて上げる予定だったから」


「ほとんど手遅れだろうが!」


呆れよりも苛立ちが上回った声色になったアルメは、オネットとお互いに支え合いながら達上がった。

血まみれの二人、その姿を見たリベルテは不潔な物を見る目で見下ろし、その手に魔術陣を表した。


淡い水色の陣から放たれた魔術は、陣を見た瞬間浮かんだ予想より遥かに勢いのある水流だった。


「……」

「……げっへぇ」


すっかり水浸しになった彼女達は、無言で放心するオネットと口から水を吐き出したアルメと何とも哀れな姿を晒した。


「うん、マシになったね。次戦う時は、もう少しまともなやり方をする事をオススメするよ」


そんな二人に、リベルテは嫌に明るい声色でそう発した。


「誰が!喜んで!あんな馬鹿みたいなやり方するか!」


「馬鹿みたいなやりかた……」


怒るアルメの言葉にオネットはショックを受けた様で、疲れが溜まった体をヘナヘナと杖を伝いながら再び地面に座りこんだ。


「あぁ、違くて、今回は環境が悪かった、ほらまともに準備をできていないし。初戦で魔力が無い人と組む事になるなんて、魔術師にはやりにくいかっただろし……」


何とか自身の発言を掻き消そうと言葉を募るアルメをリベルテはため息を吐きながら見ていた。


「何だそのため息!と言うか、試すなら試すって初めから言え!」

「魔獣はいつ遭遇するかわからないんだ、実戦はそう言う物だろう」


「心構えが違うだろうが!!」


キレッキレのアルメは食ってかかる様子を潜める事はなく、リベルテに向き直った。


そんな声にオネットは止め無ければと地面から顔を上げると、アルメの横顔をジッといている白髪の男が目に入った。その首にはリベルテの魔術抑制陣が刻まれて降り、リベルテが本気でオネットとアルメだけで魔獣を狩る様子を確認したかったのだと理解した。


ヒートアップするアルメはそんな男の凝視する視線に特に気づく様子もなかったが。男がアルメから視線を離してリベルテに歩みよったのを視界端に捕えてアルメは発しかけた暴言を引っ込めた。


その瞬間は三人は白髪の男の行動に注視していた。


「……!」

「ちょっ!」


静かに歩き、怒る様子でも無いのに彼は突然リベルテに向けて拳を振り下ろした。

突然の行動だが、様子を見ていたリベルテは腕でその攻撃を防いだ、が思わず驚きの声を上げた。


オネットも何が起きたかわからずパチパチと瞬きをし、少しの静寂が訪れたが徐々に口角を上げたアルメの声にすぐにそれは掻き消えた。


「よくやった!」


「褒めることじゃないでしょ……こんな堂々と…暴力を振るわれたの初めてなんだけど……」


ワシワシと腕を伸ばし白髪を撫で回すアルメにリベルテは再び水でも被せてやろうかと、腕を摩りながら睨み見る。


すっかり上機嫌になったアルメの姿はそんな視線を物ともしておらず。オネットも口角を上げて腕に力を入れて立ち上がった。


遅くなりました。

読んでくださりありがとうございます。

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