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七色と、光る。  作者:
26/27

私と彼は


 陽気な音楽に、たくさんの笑い声。テレビの中の世界はきっと、私が想像も出来ないくらい華やかなんだろう。私のことを好きだと言ってくれたリトも、そんな手の届かないような遠い世界の人になってしまった。四角い板の中で笑っているリトは本当に、私の大好きなリトなんだろうか。


 リトと一緒に食べるはずだった料理をなんとか失敗せずに作って、一緒に飲むはずだったお酒も開けた。それでもやっぱり、ひとりでいるのは虚しくて。


 ──お酒で熱った顔のままベランダへと出る。空を見上げれば、大きな雪が舞っていた。


「僕は──」


 テレビからリトの声が聞こえる。冷たい風に息を吐けば、白くなってすぐ消えた。私の知らない綺麗な女の人と笑い合うリトなんて見たくない。私の知らないリトの私生活なんて聞きたくない。


「ずっと、ひとりの女性のことを想ってます」


 ──え?


「幼い頃から一緒にいて、何をしても可愛くて、いつも様々なことに一生懸命に取り組む姿に僕も勇気をもらっています」

「まあー、本当にその彼女のことがお好きなんですね! しかも一途にずっとひとりの方を想っているなんて」

「ロマンチック〜!」

「リトさん、素敵!」


 照れくさそうに笑うリトが映っている。垂れ目の瞳を更に下げて、画面のリトが私を真っ直ぐに見ていた。──これは、夢?


「……わ!」


 突然鳴り響いた着信を告げる音楽に、心臓が跳ねた。慌てて部屋に入ってそれを手に取れば、そこにはひとりの名前が映っていた。


 ──


「今から、行くから」

「……え? 今から? リト、仕事は?」

「終わったよ。遅くなってごめん。──もしかして、もう誰かと一緒にいる?」

「…え、ううん。ひとりだけど」

「じゃあ、今からすぐ行く。待ってて」

「……分かった、待ってる」


 レンの返事を聞いて、僕はホッと胸を撫で下ろした。約束を破ってしまって誰かと過ごしているかと思ったけれど、レンがひとりでいることに安堵と申し訳なさが入り混じる。話しながらもレンの家へと向かっていたから、彼女の部屋まではあと数分だ。


『言ってしまえばいいんですよ』

『──何を?』

『ずっと想っている彼女が居るって。そうすれば、変な虫は寄ってこないし、一途な人だってリトさんの印象も良くなります』

『……そういうものかな』


 渡辺の言うことはどうやら、正しかったようだ。今日の放送のあとすぐに、僕は一途で誠実な人だと話題になったらしいから。本当を言えば、レンの名前を出してしまって彼女に寄ってくる男共を蹴散らしたかったのだけど。それをしてしまうときっと、レンに迷惑がかかってしまうだろうから。そんなことは僕だって望んでいないし。


 ──いつだって、レンには笑っていて欲しいから。


 歩きながら、ポケットに入ったレンへのプレゼントを確かめる。喜んでくれるといいな──。


 明日の朝まで、半ば無理矢理に自由な時間を手に入れた。──やっと、会える。こんなに長い時間会えるなんて、いつぶりだろう。逸る心を抑えて、僕はレンの部屋のインターホンを押した。


「はい」

「僕だよ、リト」

「…ちょっと待ってね!」


 上着の肩に少し積もっている雪をそっと払う。数ヶ月ぶりの温もりが、恋しくて堪らなかった。

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