ラーメンの力
体がダルくて、パソコンに向かう気力が湧きにくくなりました。でも頑張ります。
リッシュ村という貧しい街にあるギルドに、ホームのパンフレットを運ぶことになった夜光と誠児。
ギルドマスターであるビンズとの再会を喜ぶゴウマ。
夜光が女を餌にされてゴウマに付いてきたことを知り、ギルド見学という名目で訪れたマイコミメンバー達はいつものおしおきを始めた・・・
マイコミメンバー達が夜光へのおしおきを一通り済ませた後、
ゴウマ達はビンズに案内され、リッシュ村の中央広場へと向かうことになった。
ちなみに瀕死の状態となっている夜光は、ギルドから借りた荷車にパンフレットと一緒に乗せ、誠児が運ぶことになった。
マイコミメンバー達も、ギルドの外で待っていたキルカを連れてついていくことにした。
中央広場に着くと、そこにはボロボロの服を着た村人達が大勢集まっていた、
貧困のためか、老若男女問わずやつれている。
「おぉ!! ビンズさん」
ビンズに気づいた老人が歩み寄る。
「村長。 お体の調子は大丈夫ですか?」
ビンズが優しく尋ねると、村長は笑顔で「おかげ様で・・・」と返す。
「村長。 こちらはディアラット国の王であるゴウマ様です。 例の障害者施設の資料を届けてくれたんです」
ビンズが隣にいるゴウマを紹介するが、国王が目の前に立っていると聞いた村長は「ごっゴウマ国王!!」とすっとんきょうな声を上げてしまう。
「しっ失礼いたしました・・・ゴウマ国王様。 このような小さな村までわざわざ足を運んでいただき、誠にありがとうございます」
村長は深々と頭を下げるが、ゴウマは首を横に振りながらこう言う。
「国王様はよしてください。ここではただの老いぼれです」
そう謙虚には言うものの、村長は「ははあぁぁ」とまるでひれ伏すかのようにさらに頭を下げてしまった。
それからすぐに、ゴウマはビンズと村長にホームのことを説明するため、村長の家に入っていった。
中央広場で3人を待つことになった誠児達。
そんな彼らの耳に、あるメロディーが流れてきた。
「・・・? 何?この音」
セリナが気になって辺りをきょろきょろする中、誠児はこのメロディーに聞き覚えがあった。
「・・・これって・・・チャルメラ?」
そのメロディーは間違いなくチャルメラであった。
全員がチャルメラのする方向を見ると、ラーメン屋の屋台がこちらに向かっているのが見えた。
そして、屋台を引いているのは・・・
『店長!!』
誠児とマイコミメンバー達(キルカを除く)が思わず叫んでしまう。
屋台を引いていたのは、夜光達の馴染みの店であるラーメン屋【天下統一】の店長であった。
誠児達に気づいた店長は、足を止める。
「おぉ!あんた達! こんなところで何してるんだ?」
「それはこっちのセリフだ! なんでこんなところに店長がいるんだよ!?」
そう尋ねるルドだが、天下統一のファンであるためか、若干屋台のラーメンに目が行く。
「最近ボランティアで週に2、3度、ラーメンを届けているんだ。
この村は食う物にかなり困っているみたいだからな」
「ボランティアはともかく、なんで国の外に出られるのよ。 門を通るには許可証がいるはずでしょ?」
ライカの言う通り、ディアラット国をでるには門を通る許可証がいる。
夜光達には国王であるゴウマに直接許可をもらっている。
「あぁ、許可証ならゴウマ国王にもらっているぜ?」
自慢げに許可証を見せる店長に、スノーラは1つ疑問がある。
「よく手に入れましたね。 たしか・・・許可証の発行にはいくつかの審査があるとお聞きしていますが・・・」
許可証の発行には、その必要性やある程度の信頼性がなければならないのだが・・・
「そうなのか? この前、国の大臣たちにラーメンをごちそうしたらすぐにくれたぞ?」
「ラーメン1つでそんな重大なものを渡すな!!」
思わずツッコミを入れてしまったスノーラの横で、キルカはふとこう思う。
「(ラーメンがすごいのか?大臣共がバカなのか?)」
そんな話をしている間に、村人たちが一斉に集まってきた。
かなり空腹なようで、お腹の音があちこちから聞こえてくる。
店長がラーメンを作り始めると同時に、屋台には行列ができた。
誠児達も、まだ昼食を食べていなかったので、列に並ぶことにした。
それから1時間半ほどで、村人達にラーメンを配り終えた。
ラーメンをもらった村人達は広場周辺に座って、おいしそうに食べ始める。
誠児達も手ごろな岩に座ってラーメンを食べ始める。
「まだラーメンはあるからな! 替え玉ほしい奴は遠慮なく言ってくれ!」
「じゃあ替え玉くれ!」
屋台から気前よく叫ぶ店長に、いつの間にかラーメンを食べている夜光がさっそく替え玉を頼んでいた・・・
みんなでラーメンを食べていると、誠児の目に家の影に隠れてこちらを見ている少年が映った。
14歳くらいの気弱そうな感じで、右足に大きな傷跡があった。
「・・・(どうしたんだ?あの子)」
誠児はどんぶりを地面に置き、少年の方へと駆け寄る。
「ねぇ、君! こんなところに隠れて何をしているんだい?」
優しく声を掛ける誠児だが、少年は一瞬ビクッと驚いたものの「別になんでもないです」と小さく言う。
「この村の子?」
「はっはい、まあ・・・」
歯切れの悪い返しが気になった誠児の後ろから、セリナがラーメンを食べたまま駆け寄ってきた。
「どうしたの?誠児。ラーメンを置いて急に走ったりして・・・?この子、誠児のお友達?」
「いや、この村の子みたいなんだけど、ずっと物影に隠れていたから、気になって声を掛けたんだ」
「そうなんだ。 じゃあみんなでラーメンを食べようよ! まだ余ってるって店長さん言ってたよ?」
セリナが明るく昼食に誘うが、少年は何かを言いたげに「あの・・・その・・・」と呟き始める。
「何? どうかしたの?」
誠児がそう尋ねた瞬間、少年は突然その場を走り去ってしまった。
「あっちょ・・・」
少年はものすごい速さであっという間に誠児達の視界から消えてしまった・・・
「・・・どうしたんだろ?あの子」
「・・・わからない」
心配そうに少年が走り去った方向を見つめる誠児とセリナ。
そんな2人に歩み寄ってきたのは、村長への説明を終えたゴウマとビンズであった。
「2人共、さっき男の子が走って行ったようだが何かあったのか?」
「それが、物影に隠れていたので声を掛けたんですけど、急に走って行ってしまったんです」
「ほう。 どんな子だったんだ?」
「右足に大きな傷跡があって、足がやたら速い13歳くらいの男の子でした」
その情報を聞いた途端、ビンズがこう呟く。
「まさか・・・ラン?」
「ビンズ。心当たりがあるのか?」
「はい。 1年前までギルドに通っていた子です。走ることが大好きな子で、昔友達と競争した時に、転んで右足に大きなケガをしたことがあるんです」
「その子は今どうしているんだ?」
「今は隣町の『マネット』という町で、マラソン選手をしています。明日マラソン大会が開催されるから、今日はマネットで合宿をするので村には帰らないと言っていたのですが。どうしてこんなところに・・・」
「「・・・」」
誠児とセリナの脳裏に再生されるのは、何かに怯えるランの目であった・・・
そしてその夜。
ギルドへと戻った夜光達は、誠児からランの事を聞き、気になるので明朝、マネットへ様子を見に行くことを告げられた。
「でもどうやってマネットまで行くんだ? それにそのランって子が町のどこにいるかもわからないんじゃないのか?」
ルドの質問にゴウマがこう答える。
「それなら心配ない。 実は明日、ワシもマネットに用があってな?マネットに行くついでに、誠児とセリナをマラソン大会の会場に案内しようと思う」
「なるほど。 確かに会場に直接行けば、会える可能性はありますね」
ゴウマの言葉にうなずくスノーラ。
そして、誠児が夜光に向かってこう告げる。
「・・・という訳で、夜光。 明日俺達とマネットに行くぞ?」
誠児の言葉で、無意識にズッこける夜光。
「何が『という訳で』だよ!! さも当たり前みたいに俺を同行させようとするな!!」
「親父の付き添いを引き受けた以上、お前も親父と同行すべきだ」
「断る!! なんで俺を騙してこんなところに連れてきたような奴に、付き合わなきゃいけないんだよ!!」
「・・・一応、俺達の上司だろ?」
「知ったことか! 俺は今、すげぇ気分が悪いんだ! 当分働く気はねぇ!以上!!」
とうとう、ストライキ発言をしてしまった夜光。
誠児もさすがに無理かと思った時、ゴウマが再び動く。
「ところで夜光。 ”料金”の方はどうする気だ?」
「・・・料金?なんの話だ?」
「決まっているだろ? 昼間食べたラーメン代のことだ」
「・・・えっ? あれってボランティアだからタダなんじゃ・・・」
「それは村人達だけです。 村人ではない我々は当然有料です」
スノーラの「これくらい常識です」と言わんばかりの説明に、夜光の顔に焦りが見え始める。
「ラーメン1杯だけなら、600クールだ。だがお前は替え玉を3回ほど頼んだようだから、少なくとも2000クールは必要だ」
「・・・ちっちなみに、今の所持金は?」
心配そうに所持金を尋ねるセリアに、夜光は目を合わせずに一言。
「・・・5クール」
『・・・』
衝撃的な少なさに、全員唖然とした。
「ツケとくことはできないのか?」
夜光がおそるおそる尋ねるものの、ゴウマは首を横に振る。
「金のことに関しては、一切信用できないとのことだ」
そして、追い詰められた夜光は最終手段に出た。
「セリア姫様! どうか2000クールをお貸しください!!」
夜光は一切恥じることなくセリアに土下座し、借金を申し出た。
NOとあまり言えないセリアに対して、夜光はよく土下座して金を借りているのだ。
「えっ? あの・・・その・・・」
土下座され、慌てふためくセリア。
そんなセリアを守るようにスノーラが前に出る。
「あっ・・・あなたにはプライドというものがないのですか!?」
「俺がプライドを持つのは、女と寝るベッドの上だけだ!」
土下座したまま恥ずかしげもなく言い放つ姿に、ライカは冷ややかな目になる。
「大人としてどうなの?これ」
親友の土下座姿に、誠児は赤面しながらこう言う。
「・・・夜光。 ラーメン代は俺が立て替えておくから、もうやめてくれ・・・」
こうして、誠児にまた1つ借りを作ってしまった夜光は、明朝の出発に同行することになった。
そして翌日・・・
ゴウマ、誠児、夜光、セリナ、ビンズの5人は馬車に乗り、隣町マネットへと向かい、ほかのメンバーはギルドの掃除などを手伝うために残った。
馬車に揺られてからわずか20分で、マネットに到着した。
街並みはとても美しく、ごみ1つ落ちていない。
マラソン大会があるためか、人もにぎわっており、まるでお祭りのような雰囲気である。
リッシュ村とはまるで正反対な町だ。
馬車を降りた夜光達は、ビンズの案内でマラソン大会の会場へと歩き出す。
ゴウマは別件があるため、一時別行動をとった。
夜光達と別れたゴウマが向かったのは、巨大な豪邸であった。
警備兵に話を通し、豪邸の中へと入る。
豪邸の中は、頭上にはシャンデリア、周りには高価な美術品がずらりと並んでいて、まるでリゾートホテルのだ。
そして、奥から数名の騎士団を連れて、1人の男が現れた。
「これはこれは、ゴウマ国王。 このようなところまで足を運ばせてしまい、申し訳ありません」
深々と頭を下げて詫びる男に、ゴウマはこう言う。
「いや、ちょうど近くに用があったので、そのついでに来たまでだ」
「・・・ところで、さっそくで申し訳ありませんが、”例のもの”をお持ちいただけましたか?」
ゴウマは大事そうに持っていたカバンを開き、その中身を男に見せた。
それはゴウマがリッシュ村を出る時に持ち出したカバンで、夜光や誠児が中身を聞くと、「重要し書類だ」と答えていたのだが・・・
「・・・ほう。 これがマインドブレスレットですか?」
カバンの中に入っていたのは、夜光達から回収したマインドブレスレットであった。
ゴウマはすぐにカバンを閉じ、男にこう尋ねる。
「私からもあなたにお尋ねしたい。 本当にマインドブレスレットを扱える者が現れたというのですか?
連絡を受けてここまで来ましたが、にわかには信じられません」
すると、男が「もちろんです」と返し、後ろの騎士団に視線を向けてこう言う。
「私の後ろにいる彼らこそ、”新生アスト”のメンバーです」
それは確かに、信じられないような話ではあった・・・
店長「いやぁぁぁ・・・久々に出番が回ってきた時は感動したぜ!」
夜光「随分久しぶりだったからな」
店長「全くですよ! 俺だってレギュラーとは言えなくとも、脇役くらいの出番はほしいって話ですよ」
夜光「まあ正直、ラーメン関係の話以外はあんまり必要とされないのが事実だがな」
店長「そこを突かれると、ちょっと痛いな・・・というか、あんたも女の子に借金するくらいならウチの皿洗いでも手伝ってくれよ」
夜光「これ以上働くのはごめんだ」




