081. 水晶龍
赤い光は炎系の力。
炎がこちらまで来ないように、スーちゃんで空気の境目……真空の壁を作った私は、ふらつきながらその場に立ち上がりました。
なんとか立てたけれど……足に力が――
赤く光る炎を眺めながら、私は両膝に手を付きます。
「何をしている⁉︎ 早く逃げるんだ!」
陽介さんが扉を開けて待ってくれているけれど、足の力はまだ戻りそうになく……
「そっちこそ早く逃げてください! たぶん私よりもあなたの方が――」
チラリとそちらを見ながら叫ぶと、部屋全体が何かの結界で包まれました。
黄色の光――⁉︎
パチパチという音と共に見え隠れするのは小さな稲妻――
「ぐぁ――!」
「陽介さん!」
雷系の結界⁈
陽介さんは扉のノブに手をかけたまま、まるで痙攣しているかのように体を震わせています。
感電⁉︎ 助けないと……! でも飛び蹴りするような力、私には――
そこまで考えて、一つだけ可能かもしれない方法を思い付きました。
「スーちゃん!」
空気の塊で陽介さんを囲い、引き剥がすというよりは、風船が勢いよく膨らむイメージで!
少しずつこちらの方へと動いてくる陽介さんの体は、ビクン! と大きく跳ねた後、力を失ったかのようにぐったりと項垂れました。
スーちゃんの力をコントロールして陽介さんを床に下ろし、フラフラしながらそちらに向かうと、彼の胸の辺りが上下しているのがわかります。
「よかった――」
とりあえず生きている――と、胸を撫で下ろしその場に座り込むと……
「面白いことをしてくれる」
狐面の声が後ろから聞こえて、今度は私の体がビクリと跳ねました――
「炎が掻き消えたということは……酸素濃度をコントロールするアーティファクトか?」
左後ろ、声のした方をチラリと見上げると……
狐面は数歩後ろに立っていました。
「ふむ――持っているのは、やはり特殊なアーティファクトばかりのようだな」
私の持っているアーティファクトを感知している⁉︎ ポーチは壊れていない――感知阻害の力は働いているのに何故――
するり、するりと近づいてきた狐面が言いました。
「いくつかは、私の知る物もあるようだが」
意味はないかもしれませんが、私は淡く光るポーチを守るように左手を被せ、左膝を立てながら狐面の方を向きました。
「お前は何者で――何故私の邪魔をする?」
「……それはこちらのセリフです。あなたは一体――」
何故こんな事を、そう言いかけて私は口を黙ます。なぜなら、突然しゃがみ込んできた狐面に左手を掴まれて、ポーチにまで手をかけられたから――
「何をするんですか⁉︎」
まずいです、ポーチの中には水晶龍が――!
きゅぃぃ‼︎
その時です。ポーチの蓋、その隙間から突然、鳴き声と共に水晶龍が飛び出してきました。
「⁉︎」
突然ハラリと垂れ下がる狐面の上着の袖。
これは……まさか水晶龍が――⁉︎
狐面がよろけるようにして少し後ろに下がると、水晶龍がやってきて、まるで私を守ろうとするかのように立ちはだかります。
きゅぃ!
水晶龍が狐面に向かって鳴き声を上げた瞬間、その口から伸びた光りの筋が、彼を襲いました。
「ド――ドラゴンブレス――⁉︎」




