076. 鏡
彼等は“古の巫女”を知っている――。
確実に私より詳しいですよね……
ずぶ濡れ状態なのに、背中を伝う汗が冷たい気がします。
彼等に対抗できそうな子は――――
「じゃあ、火の勢いが突然鎮まったのも、この雨もコイツの――⁉︎」
いえ、雨は水晶龍の力です。
――と言ってもすぐに信じてはもらえないでしょう。
「光惺さんと椿さん……でしたか?
私には……特殊部隊という職であるあなたたちが、神社を破壊しようとしていることの方が理解できないのですが――」
そう。彼等は確実にそれを目的としてここに居る……何故なら、私の張った結界に阻まれているのだから――
胸の奥に沸々と、熱いものを感じます――
「――どこの誰とも知れない貴女には関係のないことです」
「では――晃生さんには?」
前に会った時、彼等は……特に椿さんは、晃生さんと事を構えるつもりは無さそうだったことを思い出して、私は聞きました。
「あんな引きこもりが何だというのだ?
一族の恥晒しに何を説明しろと?」
嘲笑うように言う光惺さん。
どこの時代にもいるんですね……その“人”の事をよく知りもしないのに、自分の方が正しいんだと思い込んで――ものを言う人って……
そこまで考えると、何故かあの――SNSの画面が脳裏を横切ります
「――あなたがたが……晃生さんの何を知っていると――」
心の奥に浮かんできたのは後悔の念――
私も“同じ”じゃないですか――
「――ここ数日、私は晃生さんとずっと一緒にいましたので。今の彼のことに関しては、あなた方より詳しいと思います」
「……それがどうしたってんだ?」
「この神社を今まで手入れしてきたのは晃生さんなのはご存知ですか?」
「……こんな潰れかけの神社を手入れしてるからって、なんだと言うんだ」
苛立ちを隠すことなく、光惺さんは言いました。
彼の姿は私の鏡――ですね……。
私は心の中で苦笑しました。
もしあのままSNSで何かを発信していたら――
勝手な想像を真実だと思い込み、憤って……
「晃生さんは……上からの通達で、これから先もこの神社に関わっていくことになるでしょう――。
この神社に何を望んでいるのか知りませんが……晃生さんに、もしくは高樹家当主に相談してからにしたらどうですか?」
コレを言っても、彼の様子からすると火に油を注いだも同じ――なのかもしれませんね――。
光惺さんの額に刻まれた縦筋が、さらに深くなりました。
「当主様に……お上が動いた――⁈」
「は! そんなこと、今の俺たちには関係がないな。その通達だって、いつくるってんだ?
一週間後か、一ヶ月後か?
俺たちは三ヶ月以上前から動いてるんだ――」
「兄さん!」
光惺さんの言葉に焦ったのか、椿さんがあわてて彼を止めました。
二人の間には随分と温度差のようなものがあるみたいですね――。
その時、ふと何かを感じた気がして自分のポーチを見ると……赤い光がポーチの外にまで漏れ出ていました。
この光は――
二人が何やら小声で話し合っているのを横目に、私はそっとポーチを開きました。
すると……光っていたのは新しく作った、クロへのドラゴンブレスライカ――
他の子たちの光はいつもより控えめで、まるでドラゴンブレスライカの邪魔をしないようにしているみたいです。
この新しい、クロ専用にと思って作ったライカが私の想いを反映しているのなら――
「あなたが力になってくれるの……?」
ぽそりとつぶやいた言葉に、力強い返事が――。




