表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/66

065. お上の意志

「私、扉の外で待ちますね」

「……あぁ」


 数回深呼吸をして……晃生さんは四回、扉をノックしました。すると――


「入れ」


 すぐに返事がありました。

 よく似た声――だけど、晃生さんのように柔らかい雰囲気はなく。

 晃生さんが扉を開けると……


「晃生と一緒にいる君も入りたまえ」


 ――!――


 突然の、自分に向けられた言葉に思わずびくりと体が震えました。


 部屋の中からは見えない位置にいるはずなのに――。


 そういえば、晃生さんのご家族は全員未使用アーティファクトの光が視えるんでしたね……


 晃生さんを見上げると、


「……来てくれるか?」


 そう小声で言われて。

 私は頷き、晃生さんに続いて書斎へと入りました。


「失礼します」


 扉を閉めて室内を見ると……そこには洋風な書棚が並んでいました。

 最奥には中庭が見える大きな窓があり、部屋の中は自然光で明るく。天井から吊るされた、今は使われていないアーティファクトのランプが、静かにほわほわとした光をまとっています。


 そして――木製の彫りの入った立派な仕事机の所にその人はいました。


 座っているので袴の色はわかりませんが、晃生さんと同じ色合いの上着を着ていて、髪はオールバックで晃生さんとよく似た顔立ちをしています。

 何やら書類に書き込みをしながら彼は言いました。


「聖水が力を取り戻したと聞いた。原因はお前か?」

「……そう……ですね――」


 原因って。まるで力が戻らない方がいいかのような物言い――


「沢山の人が助かって良かったんじゃないですか?」


 晃生さんは、あくまで穏やかな口調で言いました。


「……お前はずっと龍石神社の保善を、と言っていたな……。

 これで人はまた暫く聖水から離れることはできなくなりそうだ。お上の理想からも遠のいたよ」


 お上……国を動かす人達が龍石神社を――?


 ヒヤリとしたものを胸に感じます。


「……俺には理解しかねます……。

 聖水は――龍石は確かに永遠のものではないかもしれませんが…………わざわざこちらから離れていく必要はあるのでしょうか?

 避難所を見てきて――少なくとも今回の虫騒動は、聖水なしに乗り切るのは難しいと感じましたが」


 静かだけど……ハッキリとした意志を感じる声で、晃生さんは言いました。


「――――」

「お上はともかく……父上はどうお考えなのですか――?」

「……国を動かすのには力が必要だ。そして時に人の数がそれに値することがある」


 晃生さんのお父様は一体何の話を――


「高樹家は政府に連なる家だ……。わたしは(自分の考えがどうであれ、)正式に話し合って決められたことに――お上の決定には逆らわない」


 感情の乗っていない静かな声――。晃生さんの質問にハッキリと答えないのは、ご自分の考えが政府に逆らうような意見……だからなのでしょうか――?


「けれど、人々の流れはもう――」

「あぁ、タイミングは逃したな。

 わたしも避難所を見てきた。お上も……あの人々の意思を無視することはできまい」


 お父様の言葉を聞いて、晃生さんの肩がわずかに強張ったのがわかりました。


「そう……ですか――」

「神社には、また人を送ることになるだろう。

 龍石にはお前から話しておいてくれ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ