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060. どのような未来が来ようとも

 そうして私たちは……再び、それぞれに作業を進めました。


 晃生さん曰く、マクラメを完成させるのに、少なくとも四時間近くはかかるらしいということで。

 私はクロへのドラゴンブレスライカを仕上げながら、なんとなく……もう一つ、揃いの物を作りました。



 どんどんと作業を進めていき、気がつくと――日が随分と高い位置へと移動していました。


 何故だかいつもより随分と集中できていたみたい……お腹の空き具合からも、そろそろお昼ご飯の時間でしょうか――


 私は透明なケースの中に、そっと二つを並べて縁側へと行きました。そして、日当たりの良い場所に置いて、その横に腰掛けた時――

 晃生さんが声をかけてきました。


「トウマ、進歩はどうだ?」

「ほぼ完成です。今、最後の硬化作業に入りましたので。……晃生さんは――?」

「――なんとか完成だ」


 すっきりとした顔の晃生さんは、手のひらより少し大きめの桐箱を見せながら言いました。


「お疲れ様です……!」


 晃生さんは縁側までやってくると、透明ケースを挟んで反対側にあぐらをかいて座りました。そして桐箱の蓋を開いて見せてくれます。


「ブレスレット――ですか?」

「あぁ」


 箱の中にすっぽりと収まっているその子は、すでに光り輝いていて……


「すごい――」


 白い光の中に、時折虹色が差し込むような……そんな光を纏うアーティファクト。


「浄化と、守り……の、力でしょうか――」

「あぁ、おそらく――。って、よくわかったな?」

「なんとなく、です」


 穏やかに輝くその子を見つめながら、私は言いました。


「この子、これからどうなるんでしょうか……」

「マクラメを施したことで呪いの力は封じることができているが、解けてしまったら……」

「また呪いが――」


 晃生さんは神妙な表情で頷きました。


「ひとまず本家に預けようと思う。経緯と呪いのことも伝えて……。

 きっと、どこかの神社か寺に奉納されることになるだろう」

「そう……ですか――」


 今はマクラメで、その前は木彫りの台座で呪いは抑えられていた。

 そして……この(カボション)は“助けて”と言っていた――。


 おそらく……この子の中には、作者の抱えきれなかった感情がそのまま刻まれている――。

 もしかしたら“助けて”という言葉も――製作者自身のものだったのかもしれませんね……


 こうやって……新たに気づいたこともあるけれど、胸に感じていた暗くてドロドロした感情は決して消えたわけではありません――。


 けれど……それは、この子には関係のないことです。作り出された作品に罪はない――――


 どうか、この子が幸せになれますように……

 たとえ、先にどのような未来が待っているとしても――――。


「ところで、トウマの作業の方は……? ほぼ完成と言っていたが――」


 私がじっと桐箱の中のアーティファクトを見つめていると、晃生さんが硬化中のドラゴンブレスライカたちをチラチラと見ながら言いました。


「あとはしっかり硬化させるだけ、です。完了するまでもう少し時間はかかりますが――」

「そうか、楽しみだな。ところで……二つ作ったのか?」

「はい。何故か……揃いで作っておかないといけない気がして――」


 本当は晃生さんに、身代わり守りのお礼を、とも思ったのですが……。


「そうですね、ひとまずは何かあった時のための予備……にでもしていただければ、と」


 なんとも曖昧な返事になってしまったけれど、もっともそうな言葉が口から出ていました。


「そうか、大変だったろうに……ありがとうな」

「いえ……私に出来ることと言ったら、何かを作ること、ですし。

 何より、私が作りたかっただけですので――」


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