第二十一話:ヒロセと、マンションの屋上でゆるふわ家庭菜園
マンションの屋上に庭をつくった日の翌日、シアと俺はニアの街の園芸店に来ていた。
「何を植えよう? ですわー」
シアは、店に並んでいる野菜の苗をウキウキと眺めている。お嬢っぽいのに農業に興味があるなんて、どういうことだろうか?
いまいちよく分からんな。。
「そうだなー。俺はスイーカがいいと思うぞ」
シアじゃないけど、実は俺もウキウキとしていた。
日本でサービス残業をして最終の電車で眠りこけているときには、あー将来はゆったりと農業でもしてみたいと思っていたものだ。
それがこんな形でかなうなんてあの時には夢にも思わなかったな。。
「そうですわねー。スイーカに、トメト、ナース、あとはモロコシがいいですわ」
「おお、いいなー。じゅるり、今から収穫が楽しみだ」
収穫したばっかりの新鮮野菜を俺は食ったことない。本当に楽しみすぎるぞ。
「そうですわねー。それにあとは、ゴールドマリーと、発酵した牛さんのフンを買って帰るですわ」
「ん? 発行した牛さんのフン(たい肥)は分かるけど、ゴールドマリーは花だろう? 花壇でもつくるのか?」
まあ、庭は結構広いから花壇の2つや3つつくっても大丈夫だと思うけど。
「あら、ヒロセは知らないんですの? ゴールドマリーは、トメトやナースと一緒に植えると害虫の被害を減らす効果があるのですわ。それに、スイーカと一緒に植えると、病気を防いでくれるのですわ」
「知らなかったぞ。ゴールドマリーすごいな。。」
ゴールドマリーなんて花にそんな効果あるなんて、知らなかったな。
「えへへ、ですわ」
シアは自分の角をなでながら、ほっぺをほのかに染めて笑った。その笑顔に俺はちょっとドギマギとしてしまった。
ちょっとポンコツだから忘れてたけど、シアは本物の美人さんだった。いけないいけない。忘れてた。
「なんで、そんなに詳しいんだ?」
「そうですわねー。わたくし小さいころから土いじりが好きで、…しろの庭でちょっとした家庭菜園してたんですわー。それでですわー」
「おしろ?」
「いやですわねー。後ろですわ。後ろ。うちの後ろにちょっとした庭があったんですわー」
う~~~ん。本当にシアは何者なんだろう。まあ、そのうち話してくれるだろーな。
◇
「わー、シアすごーい。こんなにいっぱい植えるのー」
「スラー、スラララ―」
屋上で俺がアイテムボックスから野菜と花の苗を取り出すと、遊んでいたちみっこ妖精とスラちゃんが近寄ってきた。
「そうですわー。いっぱい植えて、いっぱい収穫ですわー。頑張りますわよー」
「わーい、いっぱい収穫―」
「スララー」
3人とも頑張るぞーってなっている。もちろん俺もやる気満々だ。やるぞー。
「まずわ、牛さんのフンをまいて耕しますわよー」
ということで、俺は買ってきた牛のたい肥を、昨日シアが耕した一画にまいていった。
そのあとをシアが、猛烈な勢いでクワを振り下ろしながらついてくる。
「うららら~~~~~、ですわー」
「わー、すごーい」
「スラー」
すげー。トラクター並みの馬力で土とたい肥を混ぜている。結構面積あったはずなのになー。すぐに終わったぞ。
今日一日かかると思っていたのにな。。
それからシアは俺がちょっと休んでいる間に、野菜を植える畝をすごい勢いで作ってしまった。
「さあー、野菜の苗を植えるですわー」
「わーい。頑張れー。スラちゃん、応援するよー」
「スラー。スラスラー」
「よ~~~~~~~し。やるぞー」
スラちゃんとちみっこ妖精が応援する中、シアはもうれつな勢いで、俺はえっちらほっちらと、野菜の苗を畝に植えていく。
あなをほって。。
野菜を植える。
あなをほって。。。
野菜を植える。
あなをほって……。
…………。
……。
…。
「はー、やっと終わった~~~」
最後の野菜の苗を植え終わった俺ははーという感じであおむけに寝転がってしまった。ステータスの貧弱っぷりが発揮された形だ。
そこに、、
「ヒロセ、お疲れー」
ちみっこ妖精はいつものごとくパタパタパタパタと近づいてきて、お疲れーっと俺のおでこをなでなでし、
「スラー」
スラちゃんも近づいてきて、スラーとふにふにぷにぷにとしてくれ、
「お疲れですわー」
シアはお疲れですわーと、俺の上から顔をのぞき込んできた。
「おー、お疲れー」
◇
こうして俺たち4人はマンションの屋上にちょっとでかい家庭菜園を作った。
苗に野菜ができるのはまだまだ先だろうけど、今から収穫が楽しみだ。
そんなことを考えている笑っている俺たちを、オレンジ色のゴールドマリーが見つめていた。




