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第八話 いろいろと面倒な事になりそうです。(改訂版)

「というわけで、睦月さんの端末である如月ちゃん登場です」


 できれば先延ばしにしたかったのだが、卯月ちゃんにせがまれて弥生さん達に如月ちゃんを紹介する。


「よろしくお願いします」


 顔は笑ってるが、目は笑ってない弥生さんは正直怖い。


「先に言っておきますが、睦月さんは絶対に渡しませんからね」


 如月ちゃんがいきなり宣戦布告したが、弥生さんは余裕で笑っている。

 そりゃそうだろうな。如月ちゃんがタブレット端末に入ってる限り手も足も出ないんだから。


「とりあえず如月ちゃんはふて寝します。用があれば卯月ちゃんに頼んでください。ぐうぐう」


 如月ちゃんの事だから気を利かせたというよりはマジでストライキなんだろう。

 あれ? これから昼飯なんだけど大丈夫なのか、俺?

 まさか弥生さんにいきなり昼食を奢ってくれとか言えるわけがない。


「ところでスライムとの戦闘は問題ないよね」

「はい」


 さすがにスライムとの戦闘で問題があるようなことはないよな。

 スライムと戦うのが物理的に厳しい人間は召喚時に撥ねられてるだろうし。


「卯月ちゃんは二人で二階に降りても大丈夫だと思う?」

「私はもうちょっと人を集めた方がいいと思います。蟻さんはそれほど強いわけじゃないんですが、数が多いですから」

「しかし、スライムばかりじゃ戦闘訓練にならんだろう」

「今は基礎体力を向上させる段階ですので、具体的な戦闘訓練なんてまだまだ先です」

「そう言われてもな。勘が鈍る」

「どんな勘が鈍るんですか?」


 弥生さんが興味津々な顔で訊いてきた。


「戦闘の要は防御にある。我が身を守らねば戦う意味がない。そして防御の要は先読みにある」

「どうやって先読みするんですか?」


 こちらは卯月ちゃんだ。如月ちゃんよりは真面目に聴いているのが解る。


「まず相手の視線の動きと呼吸を確認する。人体の構造上、息を吐くときにしか攻撃は発生しない。後は武器の間合いだな」


 もちろん、視線でフェイントをかけて、見ている場所とは別の場所を攻撃する戦術もあるらしい。

 よっぽど上手くやらないとカウンター食らうだけのような気がするから俺はやらないけどな。


「なるほど」

「弥生さんは両耳聞こえるよね」

「はい」

「なら耳で相手の武器の位置を探せるようにね。目で追いきれなくても耳なら判別できるから」


 視覚は情報量が多いから脳が処理しきれずに残像が発生する。

 聴覚は処理する情報が視覚よりも少ないから残像が発生しない。

 残像が発生するほど高速で動いたら空気との摩擦熱で燃えるんじゃないか、という気がしないでもないけどな。


「睦月さんは出来るんですか?」


 弥生さんが尊敬の目で見てくれるのが正直嬉しいんだが……。


「全部を同時に読むのは無理だな」


 俺みたいな凡人には視線、呼吸、間合いを同時に読む事に出来ない。

 出来て視線と武器の間合いぐらいだ。全部読める出来るんなら地下一階でうろうろしていないって。

 世の中本当に甘くないよ。


「無理なんですか?」


 あ、弥生さんの視線が尊敬から残念な人を見る目に変わった。


「友人の勇者から教えてもらったけど全部同時に読むのは無理だな。でも、視線と間合いのズレで隠してる飛び道具による攻撃が予測できたりするから便利だよ」


 相手が攻撃できるはずのない場所を見てるということは、何らかの方法でそこを攻撃できる可能性があるわけだ。

 少なくとも完全な不意打ちは回避できる。


「でも、それってスライムやゾンビに効きませんよね?」


 卯月ちゃんが最大の問題点を訊いてきた。

 スライムは弱いからどーでもいいけど、困ったことにアンデッドは呼吸しない。

 目や耳はあっても知覚方法も生きてる人間とは違う。

 人と同じ形をしてるのに対人戦のノウハウが全く使えないんだから、あいつらは本当に人類の天敵だ。


「あいつらは力押しで何とかなるから。ところで、最初にエマージェーシーサインを決めておきたい」

「エマージェーシーサイン? セーフワードみたいなものですか?」

「もっとシビアかな。近くに危険なモンスターがいる合図だから。下手したら死ぬよ」


 オークのように嗅覚で索敵する連中やアンデッド全般のように生体感知の特殊能力を持ってる奴が多いから確実に隠れる事ができるわけではない。

 だけど、やらないよりは絶対にマシだからな。


「解りました」


 本当に命の危険がある事まで解っているかは怪しいけど、弥生さんは大体理解してくれたらしい。

 本当に理解するにはオークに追い回されたりして命の危険を感じないと無理だろうな。


「ありきたりだけど、唇に人差し指をくっつけたら近くに危険なモンスターがいるから絶対に音を立てずに身動きしちゃだめだよ。弥生さんもまだ死にたくないでしょ?」


「はい……。あの……、その……、セーフワードも決めなくていただきたいです」


 真っ赤になってる弥生さんは可愛らしい。セーフワードの方が重要っぽいのは問題だけどな。


「解った。決めたら教えるから」

「よろしくお願いします」


 そう言って弥生さんは深々と頭を下げる。

 あ、冒険者ギルドの方で山田君と吉田さんがこっちを見てる。

 しかし、弥生さんと如月ちゃんの不仲はどうしたものか? 

お疲れさまでした。

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