エリザベス 初日
時田が7時前にイルカ港に着くと、かなり多くの人が集まっていた。人々は、戦闘員、正社員、派遣社員というふうに別れており、派遣社員は、さらに派遣会社ごとに別れていた。時田は、プラカードを持った浅野の所に並んだ。浅野は契約書を時田達、派遣社員に配り、サインをもらうと回収した。
時田「え?あれがエリザベス号?グロいなあ。」
エリザベス号はどれも、ドス黒いカブトガニのような形状をしており、あちこちに砲台がついていた。
時田は、チョコレートを製造し、搬送するエリザベス号に乗り込んだ。エリザベス号は、チョコレートを製造するエリザベス、部品を積んだエリザベス、チョコレートの原料を積んだエリザベス、生活必需品を積んだエリザベスが2隻ずつの、全部で8隻あった。部屋は2階にあり、4人1組で4つのベッドがあった。時田は、指定された部屋に入ると、すでに2人いた。時田は簡単に挨拶をし、自分の名札があるベッドに横になった。2人の名前は、竹田と三月で、時田と同じぐらいの年代だった。ベッドの下には引き出しがあり、その中に戦闘服、作業着、パジャマが2着ずつ入っていた。少しして、艦内放送が流れた。
「派遣社員の方は作業着を来て、1階のチョコレート製造所に来て下さい。」
時田は、作業着を来て階段を降りて、チョコレート製造所に行き、さっそくチョコレートを作ることになった。クルクル回る丸い釜の中に、お菓子を入れて、そのお菓子にチョコレートをかけながら混ぜる作業だった。正社員の若い女・藤田の指導により、そんなに厳しくもなく、ほど好い感じで作業ができた。これなら、なんとかやっていけそうだと、時田は安心した。
しばらくして、艦内放送が流れた。
艦長・ペリー「エリザベス、ハッシン!!」
艦長・ペリーは、かたことの発音の悪い日本語だった。
ドドドドッと轟音が鳴り響いた。エリザベス号が地下から地上に出て飛び立ったのだが、チョコレートをかき混ぜている時田には、さっぱり分からなかった。
艦内放送が流れた。
艦長・ペリー「コレヨリワープスル、ノリクミインハワープノジュンビヲ!!」
時田の乗っているエリザベスは、飛び立って1分程でワープをしようとしていた。
時田(もうワープかよ、ワープの準備って何をするんだ?てか、艦長、日本語下手すぎ。)
ユキナ「艦長、まだワープはしなくても。せめて、宇宙に出てから。」
艦長・ペリー「バカモノ!ウチュウノヒロサヲナメルナ!!サッサトワープコウロヲケンサクシロ、コノバカオンナ!!」
時田(おお。艦長、恐いなあ。でも、聞きとりにくい。)
周りの作業をしているみんなも、艦内放送からの会話を聞いて、時田と同じようなことを思っていた。重力安定装置が働き、地球と同じ重力に設定され、そして、エリザベス号はワープをした。ワープ中も、時田はチョコレートをかき混ぜていた。ワープという感じが全くしなかった。エリザベス号は、最初の目的地である火星を少し通りすぎてしまったため、引き返していた。
またもや放送が流れたが、これは艦内放送ではなかった。
「エリザベス号の諸君、私は宇宙狼軍団のトルストイ・兵藤だ。ちなみに、私は父・日本人、母・アメリカ人のハーフだ。私の所で働かないか?時給2万で日勤、しかも残業なしだ。5分間だけ待とう、艦長・ペリーの下で働くのが嫌な人、ペリーの発音が悪い日本語を聞くのが嫌な人、私は海賊だが、乗組員は大事にするぞ。どうだ、私の所に来ないか?」
時田「宇宙海賊?思いっきりいるじゃないか!!浅野に騙された!!」
艦長・ペリー「ヒョウドウノヤロウ、アイカワラズ、ウーパールーパーミタイナフネニノリヤガッテ!!ナメルナヨ!!ヒョウドウ!!エリザベス・タックルデフンサイシテヤル!!」
ユキナ「艦長、ワープしたばかりなので、少し待って下さい。」
艦長・ペリー「ダマレ、バカオンナ!!ソンナンダカラ、チキュウジンハナメラレルンダ、エリザベス・タックルジュンビ!!」
トルストイ・兵藤「さすがペリー、噂通りのキチガイだ、また会おう、エリザベスの諸君。」
艦長・ペリー「タックル!!」
エリザベス号は、体当たりを兵藤艦にしに行ったが、兵藤艦は一足早くワープをして、いなくなった。
時田「初日にいきなりエリザベス・タックルかよ・・・・。」




