労働4 終身雇用?
皆さん、おはようございます。
池田でございます。
さて、先ほど弊社では新社長にケートス氏を迎えました。
弊社はこれより新体制にて品質・安全最優先で、お客様に喜ばれるものづくりを実施する所存であります。
今後とも弊社をよろしくお願いいたします。
新体制の案内文はこんな感じかな。
ぼんやりとアホな事を考える鉄山。
「…どうした?」
ケートスに心配される。
なんだか慣れてきたなこのくだりも。
「お構いなく。こうでもしないと精神が保てないので」
「そうか…」
それ以上の追及はない。
「ところで、この辺りに人の村などはありませんか?」
鉄山は人間。
水と食料が無ければ生きていけない。
「このあたりか?…ないな」
悲しい現実。
めそめそと泣く鉄山に気を遣うケートス。
「ま、まあ、気落ちするでない。ここから少し離れたところには民草の村があるぞ」
「それ…結構遠いんでしょう?」
「うむ…まあ、距離はあるの」
「じゃあ無理ですよー!」
鉄山はあたりを指さして叫ぶ。
先ほどから、木々の影から何かがこっちを見ている。
ファンタジー世界の定番【ゴブリン】ってやつだ。
今はケートスさんが近くにいるから手は出してこない。
それが、鉄山一人になったら…
恐らく、彼らの明日の食卓に並ぶことになる。
「あ~確かに。おぬしの能力じゃボコボコにされてお終いじゃな」
ケートスが周辺のゴブリンを見る。
「しかし、おぬしは忘れておるようじゃが、ワシはおぬしの【社長】になったんじゃぞ?であればその庇護下の者を守る義務がある」
ふんと鼻を鳴らすケートス。
社長マジ神。
「まあ、見ておれ。この程度の連中などな」
ケートスは何やらつぶやくと、突然、石の矢のようなものが現れた。
「ゆけっ!」
ケートスの号令と共にそれらはすさまじい勢いで飛翔し、付近のゴブリンたちを撃ちぬいた。
一瞬でゴブリン数十匹がもの言わぬ亡骸とかした。
「どんなもんじゃ」
自身満々のケートス。
すげぇぜ社長!
ピコン!
その時、またも頭の中で音がなった。
「レベルが上がりました」
えっ?
レベルあるんだこの世界。
鉄山は何もしていないがレベルが上がったらしい。
「ほお?ワシの経験値がおぬしにも入るようじゃの」
ケートスも鉄山のステータスを見ているようだ。
「ほうほう…ほー」
なにかをぼそぼそと呟くケートス。
(こ奴のステータスがワシにも加算されておる)
鉄山のレベルアップによる能力上昇が、ケートスにも反映されている。
それは微々たる量ではあるが、今のケートスには重要な値である。
(こ奴を死なせるのは惜しい)
ケートスはすぐさま考えをまとめ、鉄山に提案した。
「鉄山よ。おぬしに提案なんじゃが、しばらくはワシと行動せんか?おぬしのスキルに興味があっての。ワシはスキルの研究、おぬしは安全が手に入る。いい案じゃろ?」
「お願いします!」
鉄山はノータイムで承諾する。
「…おぬしもう少し疑う心をだな…まあいいか」
こうして、一人と一匹の奇妙な雇用関係が生まれた。
この出来事が後の世界に大きな影響を及ぼすのだが、今はまだ先のお話。




