新情報
イベント後、恭弥は妹の智美が「アムシュターク」を始めたことを知る。智美は生産職を目指したいらしく、恭弥はフレンドの生産職を紹介することにした。
「あれ?なんか通知きてる。」
イベントの翌日、智美に合わせていつもより遅めにログインした恭弥は、昨日公開された新情報についての通知に今更ながら気付いた。
◇◆◇
【アップデートに関する情報】
第2階層解放!新しいステージに行けるようになります。中央広場に設置してある魔法陣に乗ると、あるボス部屋の前に転移します。そこでは、第1階層に存在するダンジョンのボスがランダムで出現します。そのボスを倒すことで、第2階層への出入りの権利を得ることができます。第2階層がどんな所なのかは、実際に行って確かめてみてください!
四獣解放!全ての階層に四獣と呼ばれるトップクラスのモンスターがごく稀に出現するようになります。
功績値解放!イベントの成績やモンスター討伐数などを数値化し、全プレイヤーの順位付けを行います。毎日、順位は更新されますが、それによる報酬は今のところ存在しません。
その他にも、スキルの追加などがあります。大型アップデートは、3日後に行われます!お楽しみに!
◇◆◇
「へー、色々追加されたな〜第2階層か…早く行きてーな。」
「クロ。私のこと忘れてる?」
「ああ、そっか。とりあえず、アインの所に行ってみるか…」
恭弥は新情報にテンションが上がった様子だったが、始めたばかりの智美は、目の前のことで頭がいっぱいの様子だった。
しばらく歩いて、アインの店の中に入った。
「いらっしゃい!なんだ、クロか…てかお前、イベント見たぞ!5位って強すぎだろ!」
アインは、恭弥が店に入るとすぐに気付いて、昨日のイベントの話をしてきた。アインは、恭弥を少し見直していたとはいえ、イベント入賞するほどとは思っていなかったらしい。
「そうか?確かに報酬は良かったけどな。」
傭兵時代も恭弥は、最強と言われることをそこまで誇らしく感じたことはないらしく、報酬にしか興味がなかった。
「それはそうと今日はどうした?新しい武器か?」
「いや、今日はこいつを紹介しようと思ってさ。」
恭弥はそう言って、後ろに隠れていた智美を前に出して、アインと向き合わせた。
「えっと…クロミです!お…クロさんがいつもお世話になってます!」
智美はアインにお辞儀をすると、振り返って恭弥の方を向き
(本当に友達いたんだね…)
と恭弥だけに聞こえるようにコソッと言った。
「あー、えっと、こいつが生産職になりたいって言うから、お前から色々教えてあげて欲しくてさ…」
小馬鹿にしてくる智美を置いといて、恭弥は本題に入った。
アインは状況がよく分かってない様子だったが、少し思考を巡らしてある答えに辿り着いたらしく、恭弥の肩を掴み、店の隅に連れて行った。
(お前の奥さんだよな?)
何か勘違いをしているアインは、智美に聞こえないくらいの声で恭弥に聞いた。
(ばっ、ちげーよ。)
(照れんなよ。ゲーム内だから言わないだけだろ?俺も黙っとくよ。)
(…まぁ、そんなとこだ。)
一から説明するのが面倒くさくなった恭弥は、諦めたようにそう言った。
そして、アインは勝手に勘違いしたまま、智美のところに行き
「そういうことなら、任せてください!クロミさん!」
全て分かってますよみたいな意味が含まれてそうな笑顔でそう言った。
智美が不安そうに恭弥の方をチラッと見て、ため息をつき呆れた顔をしながらも、大丈夫だと頷く恭弥を確認した。
「じゃあ、これから、よろしくお願いします!」
智美は、アインに改めて挨拶をして、生産職について教われることになった。




