表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無口な少年の描いたセカイ  作者: 遥野 凪
プロローグ
20/26

委員会後談

お待たせしました。

さて、九条とは一体なんなんでしょう…

他人の思考が読めたら、どんな感じなのか。誰しもそんなことをメンタリストを見て思うだろう。

もちろん自分も、そんなこと出来ればどれほど楽に、ことを進められるか……人一倍思った。

人とは時として自身の思ってる全く逆のことを言ってしまうし、逆に相手から思いもよらないことを言われてしまう生物だから。

「「……」」

互いに沈黙。出方を見てる自分はもちろん、いらないことを口走ったりしてしまわないように。相手は恐らく、こちらの次の反応を待っている。

(もっとも、相手からしたら黙りを続ける行為もそれの理由自体も隠せないんだけど)

アイコンタクトとはまた違うだろうし、以心伝心ともまた違う。もっとも、他人の心を読む行為をなんと呼ぶのかも定かではない。

(メンタリズムは、他人の心を自分の思いがままに操ることを指すだろうし……)

ただ、今実際に、隣に立つ女子生徒は、何のワンモーションも無しで、自分の言おうとしたことを予測し、口に出した。

「ま、ほぼでっち上げなんだけどね」

こちらの疑問を消すように彼女は、答える。

「え……」

「出来るわけないじゃない」

まるで、ギネスレコードに載るの?と聞かれ、答えるような当たり前そうな口振りで。

(……でも、さっきのは何だって言うんだ)

1つの疑問は、浮かんだまま。繋がるべき答えを探す。

「汐宮君には、そんな人間離れの業が出来たりする?」

彼女は、どこか挑戦的であり、疑問自体を消し飛ばそうとするかのように疑問をぶつける。

それは、いきなり鏡で光を反射するような、また、壁にボールが当たって返ってくるような、自然すぎるカウンターで。

「……羨ましいと、思う」

それに対しての返答は、出来るの?(Can you~?)と聞かれて、答えることと同じなのだから、出来る(Yes.I can)の肯定か、出来ない(No.I can't)の否定の2択であるべき。

だが、自分だけがそんな風に答えてしまうと、本当に彼女の掌の上で、踊らされているような気がしたのだ。そこで答えれば、真面目の印象がさらに強まるだけだというのに。

(それに少し抗ってはみたけど、読心術含めそんなこと、何一つ出来ないオチだけど)

言ってから少しだけ、ばつが悪くなりかけたが、そこは心の内だけで留めた。

「思う、か」

そう言うと、クスクスと口元に手を近づけ、笑う。

「……そう来るのかー。想定の斜めを行ってくれたわ!!」

そして、そのご機嫌なまま、こちらを褒めてきた。

(そんなに珍しい返答をした訳じゃないと思うけど……)

英語の問題なら、答え方は決まってるが、会話なら疑問に疑問を重ねてもいいし、疑問に合った答えを返す必要も無い。今回は、言うならば後者のパターンを行っただけで、何も特別なことをした訳では無い。

(それなのに、彼女はとても満足そうに笑っている。普通に答えない方が良かったってことで良いのか……)

やはり女子は難しい。いや、自分からすれば人間とか変わることが難しいのだけど。

「よく国の偉い人達が、都合悪くなったら記憶にございませんって言うでしょう?」

そんなことなんか読んでないように、彼女は唐突に、そんな話を始める。

「…よくあることだな」

軽く相槌を打つように、そんな返答をする。なぜこのタイミングで、そんな話題が出るのかはさっぱり分からない。

「それと同じ行為を私はしたって思えばいいよ」

「うん…………………………」

そうか、自分のした行為について、説明としてそんな例えを出したのか。なるほど、それで自分の行った行為の酷さを……。

「…………………=(イコール)が無茶すぎる」

「私もまだまだ他人のことを小馬鹿には出来ないわ……」

「いや、だから…………」

「他人を知るにはまず、自身を知れって(ことわざ)の通りね……」

「……彼を知り己を知れば百戦(ひゃくせん)(あや)うからず」

「そうそう!!己を知れば、百戦危うからず…何それ、汐宮君?」

つい、間違ったように言っていると訂正を入れたくなる悪い癖が出てしまい、話を折ってしまう。

そしてそういう時は決まって、自分に集中される。こういう所は、本当に昔から貧乏くじを引きがちだ。

「……さっき、九条さんが言った諺の原文……みたいなもの」

本当はそんな諺は存在しないと教えた方がいいだろうが、そこまで余裕は持てなかった。

確か、孫子という人物の名言の1つで、味方だけでなく、敵の実情を知っていれば、百戦しても負けはしない。みたいな感じのものだったはずだ。……今では、若干言葉の意味が変わって理解されているかもしれないが。

「へぇ……」

そんな原文なんて知らなかったのか…彼女は、先程使っていたメモ帳を取り出し、サラサラと書き綴った。

(さっきほどの速さはないから、常にあの速度という訳では無いのか……)

本来のメモを行う彼女の眼差しは、先程の挑戦的さはなく、勉学に励む学生の鏡のように映った。

「流石、汐宮君ね」

茶化すように彼女は、自分のことを(たた)えた。

「……たまたま似たやりとりを、小説で読んだな……って」

「本から得た知識ってところは、図書委員らしいわ」

そんなことはないし、そもそも図書委員らしいとは……となったが、適当に頷いて、その場はなんとか凌げた。

「あ、そうそう!!さっきの委員会で私、分かったことがいくつかあって──」

その後、教室に着くまで、彼女と会話が途切れることはなかった。

ただ、心做()しか雰囲気が委員会前と変わり、口数が増えたように感じた。





※※※※※


「すみません、遅れましたっ!!私がこの図書委員会の委員長の……」

「もう終わったよ、小豆(こまめ)

「……そんなぁ。せっかく急いで補習の説明、端折(はしょ)ってもらったのに」

「委員長は、図書委員の仕事よりも成績が大事なんだから、気にしないでいいんだよ?」

「お前にしては、気遣いのある台詞だな」

「でも、それだとお二人さんにご迷惑を……」

「俺は別に、気にしてねぇよ。本自体嫌いじゃねぇし」

「今年は、卒業がかかってるんだから、図書委員に気を取られてちゃダメだよ委員長」

「……気遣いありがとうございます。ただ……」

「ただ?」

「………ただ」

「……??」

「……次の委員会には参加させてください」

「「…………」」

「小豆、そんなことしてる暇は」

「……分かってます。私自身が1番」

「……」

「ただでさえ成績は良くないことも、休み時間も削ってまで、勉強しなければいけないことも、理解してます」

「いいん……」

「黙ってろ、馬鹿」

「……現に今度の学定考査で、平均を上げなければ、卒業すらも危ぶまれることも。だとしても、私は」

「……」

「私は、生徒であり……そして、図書委員長であり、いち図書委員なんですよ?」

「……委員長」

「今の私は図書委員長なんて仰々しい肩書きなんて持ち合わしていません。それでも、私は……」

「3年間、私の居場所であった図書棟と」

「図書委員会を見捨てたくない」

「だろ?」「ですよね?」

「え……」

「小豆ならそう言うと思ったからな」

「委員長らしいしね」

「…………っ」

「でも、そろそろ主人が飛んでくるんじゃねぇか?」

「…今、LINE見たら図書棟にいるから行くって来てたよ」

「え………って、あ。説明終わったらすぐ戻ってきてっておかげくんが言ってました……」

「それは戻るべきだな。アイツ、じきに来るぞ」

「……す、すみません!!お騒がせしました。ええと」

「水野委員長と」

「白鷺だよ」



「「…………」」

「名前は覚えられてなかったね。残念」

「まぁ、小豆だからな」

「その言い方はあんまりだよ」

「それよりお前。LINEはハッタリだろ?」

「うん、よくわかったね」

「お前にLINE送る暇あったら、すぐ来るだろ……」

「確かに。姫からすれば、彼女はとても特別な人だからね」

「それだと百合みたいに聞こえるぞ」

「あ、そっか……でも、僕 姫か姫君って呼んでるからさ」

姫君(ひめくん)ってルビ振っとかないと、さらにおかしな方向になっちまうぞ」

「……?」

「はぁ、もういい。というか次回の委員会どうするんだよ」

「僕はあの展開で来る(てい)の話だとばかり……」

「いや、アレは状況的にああするしかないだろ?」

「あーいう、感動系は昔から苦手だもんね」

「うるせぇな。ああいうのは、3次元で求めないタイプなんだよ……」

「ツンデレ属性ですか。そう来るなら、僕は犬系男子で攻める!!」

「ツンデレじゃねぇ。というか、攻めるってなんだよ」

「え、知らないの?なら僕が説明するね!!世には攻めと受けがあって……」

「やめろ、今度はBLかと思われる」

「あ、そっか……ちなみに僕は総受けキャラで……」

「攻めと守り!!スポーツでは基本中の基本だな!!って、お前のせいで話にならねぇだろうが!?」

「確か、委員会に彼女を参加させるか否かだよね。で、僕はいいけど、意地悪なツンデレ受け君はそんなものを受け付けないということで……」

「お前、それ以上言ったら家畜にするぞ」

「はいはい……でもさ、あんな風に言ってたけど彼女は、たった1つの目的のために成そうとしてるんでしょう?」

「……まぁ、そうだな」

「なら、それを解決しちゃえばいいんじゃないの?」

「お前は簡単に言うが、相手は誰か分かってるのか……」

「遅れてきた1年の子でしょ」

「……」

「先輩が気になる人って大体先輩が関わる行事に遅れてくるって法則があるから、なんとなくそうかなぁって思ったんだけど」

「その法則はイマイチ理解出来ないが、当たってるんだよな……」

「でも、どの彼女に会ったかによって難易度は変わるかも知れないよね。もし、火星人時なら難易度は裏鬼譜面だよ!」

「お前のその分かりにくい説明は放っておくが、どうやって解決策を出すというんだ?」

「裏鬼譜面っていうのはー……ん、そんなの簡単だよ。先輩と後輩がが関わることって言ったらアレしかないじゃん?」


※※※※





(九条さんって、本当にあの九条さんなのかな……)

昼休みの委員会を経て、彼女と急接近!!なんてことはなく、教室に着く少し前に、彼女は、お手洗いに行ってしまったのだ。

その場で待てば何かあったかもしれないが、女子のお手洗いを待つなんてかなり怪しいし、自分もその後をつけてお手洗いを済ますのも何かおかしい。

というジレンマの末、教室に1人で帰ることを選択した(これについて、何もおかしな点はない)。

その数分後、彼女は何食わぬ顔で、教室に戻ってきたが、席に戻る際にも何も言葉はなく、会釈もなかった。

ぶっきらぼうとは感じてはいたが、あくまで先程の会話のせいでそう思っただけだと、自分に言い聞かせ、自分も何もなかったように過ごした。

彼女にとって、自分はただのクラス図書委員以外の何者でもないのだ。

(そういえば、彼女の読心術については聞けなかったな……)

そんなことをぼんやりと思いながら、教室をフラリと出て、帰路へ向かった。

九条は分からないし、図書委員トップスリーの謎の会話……

こんな感じで歯切れのいい感じでこれから終わらせていけたらいいなと思いながら確実に執筆できるように頑張ります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ