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精霊星の物語 ~精霊島の物語~  作者: uki yoe
第一部 精霊島の物語
35/65

追っかけの4精霊

「行っちゃ、やだ」

「イヤダー」「嫌」「やー」

ドプンと俺の耳に聞こえた、俺自身の顔が壁に入り込む音。

それと同時に聞こえたテネアの声。

さらに続いた、声、声、声と……俺に近づく彼女らの気配。

俺の壁への突入は止まらない。




壁の中での暗転。

ここはどこ?

気が付けば、そこは闇の中。


ああ、ここは壁の中だと思う思考回路が、俺の中で結びつくや否や思い出す、精霊達が俺の後を追って壁へ突入して来たであろうあの気配。

あの子達はどうなったっ?

あわてて周りを見渡すと、そこには当たり前のように佇む精霊ズ。

テネア?

ラーン?

サフィ?

バビ?


「お前らっ、大丈夫か?」

「ユーキッ」

「パパッ」

「私……」

「私達、ユーキについて来てしまいました」

「大丈夫なのか?」


「……」

応えがない。

問題はないのか?あるのか?

見ると、彼女らの素体の力が増している。

溢れ出る8つの素体色が眩しいほどの力強さで瞬いている。

いや、コレかなり強くないか?

俺の力も通常の状態ではない。

完全に両目を開いている状態だ。

俺はこの状態でもまったく問題はないようだが、この子達には無理があるのではないか?

そう思わせるような、この空間からのプレッシャー。

何よりも、精霊達から先の問いかけに対する返事がない。

……危ない。

そう感じさせる気配が満ちている。


「お前ら、無理があるんじゃないのか?その素体の輝きは普通じゃないぞ。戻れ、今すぐ戻れっ、俺について来るな」


よりによって皆がみんな、俺について来るなんて……もしかしたらと想定をしていない事もなかったが、これは、この状況は……ナンセンスだ!

テネア達だって俺について来たら、何かしらのリスクがあると分かっていただろうに。

「何でまた……」という言葉を飲み込む俺。


「わかっていたさ」


彼女らが、俺と離れたくないって事は。

……分かっていた、十分、わかっていた。

俺だってそうだったんだ。


「ユーキ、ごめんなさ、い」


テネア……。

謝るな、謝らなくっていいんだ。

謝らなくて……。

……でも。


「でも、そういう訳にはいかないだろう」


無理なんだ。

住む世界が違うんだ。

俺は地球人。

お前らはリテラの精霊なんだ。

生きる世界が違うんだよ。

お前らはリテラという星に司る偉大な精霊だろう。


「テネア、バビ、サフィ、ラーン、お願いだ、戻ってくれ。苦しむお前達は見たくない。お前達に何かあったら、俺は日本に戻れない。こんなのは駄目だ。こんな終わり方があっていいはずがない」

「だって、ユーキ、もう会えなくなるんでしょう。そんなのサフィ嫌だよー」

「パーパ~~、会えないの嫌だぁ~~」

「ユーキ、離れたくないのです」

「ごめんなさ、い、ユーキ」

「…っくそ……どうしろって言うんだ……駄目なんだよ……どうにもならないんだよ……」


俺の焦る気持ちをよそに、精霊達から溢れ出ている黄金則の素体色がだんだんとその輝きを減らしていく。

これは、いよいよまずくないか?

くっそう。

どうなっても知るもんか。


俺はこれまで出してきた力の中でも、最たる力を体に込めて、全ての属性素体の力を発現させる。


今はこの精霊達を守らなければならない。

今、この力を使わずに、いつ使うんだ。

――今でし…

いらーん!たいがいにせいや。

状況を顧みろ。

猶予はない。

進むか戻るか、どうするんだ!

バビ達に余裕がないんだ。

今、決断しなければならないんだぞ!


精霊達の犠牲を覚悟にこのまま前へ進むのか。

それとも、一旦コルニアへ戻り、再度の機会を探ってみるか。

どちらへ進む事が正しい選択なのか。

二者択一の判断をしなければならない。

――さあ、決めろ――

決めろって、……そんな……ここに来て、そんな選択を迫られなければならないのか?

これを理不尽と言わずに何と言おうか。

俺は……俺達は、何かしらの犠牲がなければ幸せになってはいけないのか。

それがこの世界のルールなのか。

これが世界の意思なのか。

そんな事が望まれているのか。



どうしても、どちらかに決めなければならないのか。

今、決めなければならないのか。

それを俺に強要するか……。

この状況下に置かれたこの俺に……。


――決めなければ後がない――




プチン。


キレたぞ。


ふざけんなよ、この野郎。

そんな道理が通ると思っているのか。


大勢の流れに身をまかせるのは、ああ、全然構わないさ。

そういう奴だっているだろうよ。

だがな、俺はココへ来て、コルニアへ来て学んだんだ。

人間はあがいて、考えて、苦しんで、自分の力で道を切り開いてナンボなんだよ。

生きていて悪いか。

人に迷惑をかけていて悪いか。

甘えて悪いか。

甘えられて悪いか。


いいんだよ。

責任を取る覚悟で行動して、最後の最後に責任を取ればいいんだよ。

他人が創ったレールの上で胡坐をかいている訳じゃない。

自分で歩いてきたこの道なんだ。

選択権は俺にある。

他人じゃない。

自分なんだ。

お前じゃない。

俺なんだ。


そうだろっ!精霊王。


お前はなんで、こんな回廊を用意した。

お前は何で、俺をこの星に呼んだんだ。

まだ、終わっていない。

まだ、責任を果たしていない。

まだ、俺達に対する責任が果たされていない。


お前には俺に対する責任があるんだぞ。

わかってんのか?


俺は要望する。

三つ目の選択を。

俺は切望する。

この状況を打破させるモノを……。


俺は動きの鈍くなった大事な精霊達をそっと腕の中に抱き寄せると、思わず結界内での天を仰ぎ、理不尽なこの状況を創り上げた当人に向けて大声を張り上げた。


「カイラルプスっ、何とかしろっっ。あんたの力で創られた結界なんだろっ!あんたが護るべき精霊達が苦しんでいるんだっ。人を勝手に呼んでおいて、今日の今日まで黙りこくってんじゃねーぞっっ。俺はどうすりゃいいんだっ!!」


結界が壊れるのではないかと思われる程にビリビリと発現される俺の黄金則。

そのエネルギーは凄まじい。

世界を創造し破壊するかの如く、あらん限りの力となって結界内にほとばしる。

これで何の反応もないのならば、俺は本当に俺自身の力で、この状況を解決しなければならない。

その時、俺が取るであろう選択は、地球へ帰ることでは決してない。

このまま精霊達を犠牲にしてまで日本へ戻る事を決行するほど、俺は冷酷ではない。

腕の中にいる大切な精霊達の事を考えれば、俺はコルニアへ戻らざるを得ないのだ。

この子達を犠牲にしてまで日本へ帰ろうとは思わない。


だが……いや、だからこそだ。


「答えろっ、カイラルプス。この状況はお前の本意なのかっ」


お前の意志はどこにある。

こたえろ。

精霊王。


「……」


俺の左手の指先にピリリとした感覚が走る。

!?

何?

ハッとして見る、目線の先の俺の指。

その指先から粒子が伸びる。

8つの色をした黄金則の光の粒子。

初めは小さく、次第に大きく。

一つの線となって、光の粒子は伸びていく。




この粒子は俺のモノではない。

俺の力が関与しているモノではない。

俺の体から出ているモノであるのに、俺のモノではない、黄金則、8つの色の力の粒子……。

蘇る記憶。

カイラルプスの精霊晶に触れた時の一瞬の違和感。

あの時のフラグ。


「感じる。ユーキ。王様、を感じる」

「ええ、この感じ…王様」

「懐かしいね、王様の力」

「僕も分かるよ、優しい感じ」


そして……。

ゆっくりと、人型をとりつつある素体の光。

俺達の目の前に、精霊王と呼ばれたその人は現れる。


「カイラルプス」


俺は思わず、目の前に形作られる精霊王の名を呟いた。

今、正に顕現されようとしている、本物の精霊王の意識体。

少しばかりの安堵感と若干の興奮に包まれる俺。

不安と、期待が交差する。




そして、ぼんやりとした素体の光の中からカイラルプスであろう意識体は、俺に向かって話しかけてきた。


「会えて光栄です。新しき精霊王。……私は待っていました……長い、永い年月を待っていました。貴方にお逢いしたかった。新しき精霊王。私の後継者たるべき存在……異界の人よ」



―――――――――――――――



次回サブタイトル予告です。

~精霊王カイラルプスの意識体~

お楽しみに。

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