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精霊星の物語 ~精霊島の物語~  作者: uki yoe
第一部 精霊島の物語
34/65

レスリーの謝辞

「パパ、僕もパパ色に染まりたい」

「ダメー。サフィが先でしょー」


話の流れである程度は予想していたが、バビとサフィが寄って来た。

う~ん、俺色ねぇ。

バビちゃん、その言葉は無防備すぎやしませんか?

だが、バビに言われても、俺にラーンほどの刺激はない。

やっぱりバビとは親子だからかな。

そんな事を思いつつ、バビとサフィにふっかける。


「バビ、サフィ、俺の何色がいいんだ?金色とかどう?」

「そんな素体ないでしょー。ユーキのいじわる」


鋭いサフィの突っ込み。

こいつ、相当バビから突き上げられているな。

いつもの軽いノリが感じられない。

ちょっとサフィが可哀そうになってきた。

何とかしてあげたいけど、ラーンみたいに時空間素を充ててやればいいのかな?


「パパ、ボク何色でもいい、パパの色なら何でもいい」


バビちゃん、君って子はいい子に育つんだろうな。

親の顔を見てみたい……って俺か。

かたやサフィ。


「白かなー、赤かなー、それとも黄色かなー」


ちょっと痛いぞ、サフィ。

このまま俺、日本に帰っちゃって大丈夫かな。

サフィの姿が得られないまま帰っちゃったら、毎晩見る夢にサフィが出てきそうで怖いぞ。

『あ~か~か~、き~い~ろ~か~、ユ~キいろ~~』とか。

怖っわ。

えらいこっちゃ。

このままだと枕を高くして寝られねぇ。


「おい、サフィ」


と声をかけてサフィを手で包み込みながら引き寄せると、俺の持つ11の全ての属性、黄金則と呼ばれる力を発現させる。


「いっそ、全色ってのはどうだ?」

「いーの?……ユーキ……いーの?」

「サフィが何色がいいか決めらんないんならこうするのが一番だろう。うまくいくか分かんないけど取りあえずな……サフィ先生」

「……うん……あはは、うまくいっちゃったら私も王様になっちゃうねー」


サフィの声がサフィらしい。

良し、サフィはこうでなくちゃな。


「パーパ、僕もー」

「私もいいですか?」

「ユーキ、私も、混ざりた、い」


風の精霊=風属性のサフィ。

水の精霊=水属性のラーン。

闇の精霊=闇属性のテネア。

土の精霊=土属性のバビ。


外界より断絶された失われた島、コルニアの大事な4精霊。

よぉーし、皆おいで寄ってきな。

これで最後だ、思い残すことなくやれることをやってやる。


笑いながら力を放出していくと、精霊たちの輝きも増してくる。


白銀龍レスカリウスが目を細めてこの様子を眺めている。

他人事だと思っているな?

このままレスリーも巻き込んでやるか。

俺はさらに力を出してみる。

11種類の各属性素体。

黄金則のその力。


この結果がどうなるかは知らんけど……。

勢いとノリだ。

コルニア万歳。

皆に万歳。


さあ、皆でぇー、わっしょ~い。



―――――――――――――――



時は来る。

俺のバカンスの終わりの刻。

俺がコルニアを去る時だ。


では、そろそろ行くとするかな。




精霊と白銀龍との宴を終えた俺は『じゃあ行くわ』と一言漏らし、十字洞窟へ向かうべく空間転移魔法の力を発動させた。


ビボック山の十字洞窟。


洞窟内にそそり立つ半透明な『壁』の前、『壁』の前に居並ぶ1人の男と4精霊と白銀龍。

俺はココへ来た時の事を思い出す。

あの時俺は、この壁の向こうから這いつくばってやって来た。

あの時は一人だった。

人の住む社会から逃げ出して、この大地へ迷い込んだのだった。


今、この時、ここにいるのは俺一人ではない。

この星に司る、大変レアな精霊様達と祖龍と呼ばれる偉大な龍。

そんなビッグな奴らが見送ってくれる。

こんなに幸せな事はない。

こんなにありがたい事はない。


人型を持った二人の精霊体とフヨフヨした二つの精霊体。


結局、姿を得る事が出来なかった風の精霊サフィ。

サフィの素体は8つの色に染まりあがっている。

サフィだけではなく、ここにいる全員の素体色が全て8色へと変貌している。

ここにいる皆がみんな、黄金則の素体持ち。


ま、そうなるわな。


サフィに姿が得られるのであれば良かったが、そう何でもかんでも上手くとは限らない。

ノリと勢いで皆に俺の素体を浴びさせてやった結果が、たまたまこうだったという訳だ。

レスリーを含めたコルニアの精霊全員が、黄金則の属性素体を身に纏っている。


彼女達を構成している本来の属性素体とは違うのだ。

この変化は多分ほんの一時の変化にすぎないだろう。

時間が経てば、かさぶたが取れていくように素体の力は落ちていくと思われる。

だが、一時的であるとはいえ、8色の素体力を得る事になったコルニアの精霊と白銀龍。


「ユーキ、ありがとう。私、全ての属性を持った大精霊になったみたい。すごーく綺麗になっちゃった」

「ユーキよ、我までも変えてくれたな」

「パパ、僕、目が回るよ。どうなっちゃったんだろう」

「なんだか、私じゃ、ないみたい。気持ちが昂る気がする、の」

「ユーキには責任をとって欲しいです。私をこんな体にして……」


それでも良かったのだろうか?と問うまでもなく、喜んでいたのがサフィのみっていう、このさじ加減。

実に俺らしい結果だ。

まあ良しとしておこう。


しかしラーン。

責任取れって言われても……『まあ、ついて来られるなら責任取ってもいいんだけど…』って言いそうになって慌てて言葉を飲み込んだ。

ラーンはさっき、俺の過去にまでついて来た。

ラーンはやりかねない。

俺の行く先は精霊のいない地球なのだ。

ラーン達リテラの精霊が俺と一緒になって地球へ行って、無事でいられる保証は何もない。


~~~~~~~

前略 

ラーンさん。

ラーンさんを初め、皆さんの体をやりたい放題ヤッテしまった俺をお許し下さい。

責任は全てサフィ氏にあると思われます。

この際、愚性ぐせいはやり逃げさせていただきます。

くれぐれも後は追わないで下さい。

では。

早々

~~~~~~~


怒・どんだけひでぇ野郎だ。

俺がラーンの父親ならば、こんな文を書いた奴は地の果てまで追いかけて、胸ぐらつかんでぶん殴って、土下座させたるところだぞ。

――バビちゃんは?――

知らない

……

……って訳にもいかないなぁ。


――元に戻せと言われても俺には無理だし、そのうち時間が経てば戻るだろう――

そう思いつつ、その場をうやむやにした俺。

神聖な気配を漂わせるカイラルプスが創りたもうた、地球とリテラを結ぶ為の超長距離時空間回廊(俺命名・適当)を目の前にし、改めて皆を眺め見る。

レスリーの素体色はさほど目立った感じはしないが他の4精霊達の素体色は……。


11属性の力が素体を通して溢れ出ている、彼女たち。

品の良い見方をすれば、時間ごとに色が変わるクリスマスに飾る電飾みたい。

品を悪くすると、どこかのお祭りでお子様がお土産で買ってもらいそうな、色の変わるオモチャな感じ。

せっかくのビッグ4が、電装のオモチャのように見える姿。

こりゃ、何の冗談だ。

俺がやっといて何だけど、この発色はかなり胡散臭い。

素体の統一感全く無し。

1つの色にしていられないのか?

残念すぎる――オモチャらズ――

ピッカリ、ピカリ、ピカ、ピカリ。


ふっ(笑い)。


いかん。

笑ってしまった。

バビの目が回るって言うのは正しいのだろう。

こりゃ、謝っておかなければなるまいて。


しっかし最後の最後にやらかしちゃったなあ、俺。




そそり立つ半透明な壁の前、神聖な気配で俺を見守るオモチャらズ。

ここに立つ俺の気持ちは随分と楽だ。

もっと、しんみりしてしまうものかと思っていたが、俺自身がやらかした出来事のせいで気持ちが明るい。

俺の気持ちに暗い気配が全くない。

せっかくだ。

この明るい気持ちのまま、これまでの礼と先ほどの謝罪をしておこう。


「皆、今日まで本当にありがとう。バビ、その色なかなかいいよ。テネアもラーンもとても良く似合っているな」

――!?――

「うん。パパ、ボクこの素体にもう慣れた。もう大丈夫」

「私も、慣れた。自然体。こんな私も、悪くない」

「本当に似合っているのですか?ユーキはズルいですねー」


――謝罪を転換したぁ!おい、無駄に会話スキルが上がっていないか?――

すまん、チョロインズ。


そのかわり、サフィにはしっかり謝っておこう。


「サフィ、姿、得られなかったな。……力になれなくてごめんな」

「いーよ。私もうしばらくこの形でいる。ユーキ、私の為に気を使わないで」

「いや、その黄金則の力もじきに無くなってしまうだろ。そうしたらサフィ寂しくならないか?」

「へーき。私ね、多分。本当にあとちょっとなんだよ。ユーキがいなくなったらすぐに姿を得られるかも知れないよ。……サフィねぇ、そんな気がするんだ」


そうか。

サフィ、そう答えてくれるか。

ありがとう。

お前の気持ちに甘えさせてもらうよ。

俺は黙ってうなずいた。


では最後にレスリーだ。

眩いばかりに白く輝く、白銀の巨大龍。

俺の心の神様。

姐御先輩。

俺は白銀龍を仰ぎ見る。


「レスリー、貴方がいなかったら今の俺はいません。おかげで自分を取り戻せました。貴方と一緒に生きたこの数日を俺は決して忘れません。今日まで本当にありがとう……さよならだ」

「ユーキ、我も忘れん。そなたがしてくれたこのコルニアの浄化。これはそなたでなければかなわぬ事であった。今は亡き精霊王、カイラルプスの願いも幾分かは成就された事だろう。彼の王御霊も幾分かは鎮まれた事だろうよ。…ユーキ、そなたから承った精霊晶。これは大事に、我が責任を持って使わせてもらうぞ。……できればそなたにはこのままココに残っていてほしいのだが……そうも参らぬのだな……。そなたにはそなたの地での生がある。我は無理に引き止めはせん。だが……いやいや、我らの方こそ礼を言わねばならんのだ。そなたがこの星に来て助かったのは我らの方だ。この大地を、この星を、これから生まれるであろう、我らの多くの同族を…そなたは救ってくれたのだ。我らの方こそ、そなたに助けられ、救われたのだよ。ユーキ、ここにいる我ら、コルニアを、ひいてはリテラを代表して礼を言うておくぞ。誠にもって、ありがとう」


まさか、白銀龍レスカリウスから、こんなありがたい言葉をもらえるとは思ってもみなかった。

俺の気持ちは言わずもがなだ。

俺は2度、静かに頷いて、レスカリウスの言った事を全て肯定して見せた。




別れの時。


俺は俺が利用して来たはずの地球との懸け橋、超長距離時空間回廊の塊である半透明の壁を一歩踏み込めば入るほどの距離に置き、コルニアに住まう者達に別れの為の声をかける。


「レスリー、サフィ、ラーン、テネア、バビ、さよならだ。いつか機会があるならまた会おう」

「ユーキ」

「王様」

「パパ」

「さらばだ、ユーキ」


ああ、そうだ一つ忘れていた。


「レスリー、バビの教育を宜しくお願いします。俺に代わって、いい事と悪い事をしっかり教えてやってくれ」

「是非もない。任されよう」


よし、今度こそ何もない。

これで安心だ。

後は、俺のやるべき事をやるのみだ。

俺はくるりと壁に向き直り、壁やった手にそっと力を押し付ける。

トプンと波打ちながら手を飲み込む壁。

壁なのに水のようだ。

前回来た時に感じる抵抗感は全くない。

これは、このまま入っていける?


俺は飲み込まれる感の腕を一度止まらせると、控えた精霊たちに向かって片手を挙げて、これで最後と洞窟内に響かんばかりの声を掛けていた。


「じゃあな、皆、元気でな。レスリー、サフィ、ラーン、テネア、バビ……バイバイ」



―――――――――――――――



次回サブタイトル予告です。

~追っかけの4精霊~

お楽しみに。

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