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精霊星の物語 ~精霊島の物語~  作者: uki yoe
第一部 精霊島の物語
33/65

ハンターのユーキ

人外の力を用いて、時の流れを超えて来た俺とラーン。

『行ってきます』と『ただいま』の間に、さしたるタイムラグはなかった。

俺の時空間魔法は完璧だ。


「エー?、ラーン?すごく綺麗だよ」

「おめでと、ラーン。良かった、ね」

「お主も姿を得たか……変わった素体色だな」

「ラ、ララ、ラ、ラーン?」


ちょっとした喧騒。

ラーンを取り巻く精霊ズ。

サフィの慌てっぷりがプクク(笑)って感じだ。


そんな中、現在時間に戻って来たばかりの俺に顔をやり、レスカリウスは尋ねて来る。


「それで、そなたの星へ帰る気持ちは変わらなかったか」と。


一応、聞いてくれてありがとう、レスリー。


「変わらないよレスリー。俺にカイラルプスの時空間結界への注意事項を教えてくれ」

「分かった」


答えは短く早かった。

『分かった』の一言にレスリーの生きた時間を垣間見る。

こんな奴は日本でもそういない。

短いコルニアでの滞在時間の中で、俺は日を追うごとにレスリーへの尊敬の念を深めている。

憧れとでも言っていい。

男の中の男。

女の中の女だ。


ただ、白銀龍の短い応えには、俺の気持ちの中でちょっぴり寂しい思いも生じて来る。

旅先で出会った地元の親切でカッコいい姐御龍。

正直に言うと、離れたくない思いの方が今は強い。




レスリーは空を見上げる。

見上げる先はコルニアの空。

精霊王カイラルプスの創りたもうた奇跡の結界。

超‐広域‐時空間結界。

この龍は何度となくあの結界を超え、外界へ出向いているのだ。

見上げた顔を静かに戻した彼女が告げる。


「そなたが向かう先はこの空の向こうではなかったな」


ああ、そうだ。

俺が向かう先。

そこはこのコルニアを覆う結界の中ではない。

俺が向かうのはコルニアの中央、コルニア三連山の一つ、ビボック山の十字洞窟。

あの半透明の壁の先。


遠く離れた日本の森。




「ユーキよ、我はそなたか潜り抜けてきたあの洞窟内の結界を利用したことがない。なれば、我が申す事はそなたが行く先で同じ道理が成り立つ保証はない。注意しておけ」


慎重にならざるを得ない言葉が告げられる。


「あの結界はそなたがあの場所へ現れるまで、あそこには存在していなかった。少なくとも我はあの様な結界があった事実を知らなんだ」

「あんなの無かったよ」

「無かったです」

「突然、生まれたの」

「僕、もともと知らない」


何だ?


「つまり……どういう事?」

「うむ。あの結界はそなたがここへ来る為に用意された、そなた専用の時空間結界ではなかろうか」


レスリー達のあの『壁』への認識。

ここへ来て、初めて聞いた告白。

そして、その内容に違和感を感じない俺。


俺専用の時空間結界…それもはるか遠い数百~数千万光年離れている場所から、1人の人間を連れてくるほどの極めて特殊なタイプに特化した時空間結界か……十分にありえる話だ。


あの壁は、コルニア内界とコルニアの外界である、リテラの大地と縁を切る為に存在するものではない。

どう考えても不必要な場所に存在しているのだ。

しかも、俺が来るまでは其処に存在してさえいなかったとか……。

あやしすぎるな。

これは何かあると思っておいて間違いない。

結界内に突入して何も起こら無かったら幸いだ。

何かが起こると思って行動しておいた方がいいだろう。




「パパ、帰らなくてもいいんじゃない?」


バビが―思わず―といった感じで口を挟む。

……そういう訳にはいかないんだって……


「そうだなあ、どうしようかなあ……」

「残っちゃえ、残っちゃえー」

「残って欲しいです」

「ユーキ、帰らない、で」


うわ~、隙を見せるんじゃなかった。


「とは言ってもなぁ、俺にも向こうの生活があるしなぁ」


『やっぱり帰る』と告げる俺。

シュンと気落ちする精霊ズ。

ビシッと言うと強すぎるし、やんわり構えるとつけ込まれるし、俺いったいどうしたらいいのよ。




「注意しろとは申したが、あの結界は恐らくカイラルプスの創りたもうた黄金則を持つ者だけの為に組み合わされた独自の結界だ。お主ならば何の問題もなく利用できる事であろう。なにせそなたはあの結界を利用して此方へ参られたのだからな」


そうだった。

その事で俺はレスリーに聞いておかねばならない確認事項があったのだ。


「な、レスリー。貴方は以前、あの洞窟内の結界がすぐには利用出来ないと言うような事を言っていましたよね?」

「その様な事を我が申したか?」

「ええ…言っていましたよ?俺がここへ来た最初の日に……だからすぐには帰れないとか……あれ?違ったっけ?そんな様な事を言っていたような気がするんだけどなぁ……」

「そうか?そなたが参られた時、もしかしたらそのような事を我は申したかも知れんのか…確かに……このコルニアを覆うカイラルプスの時空間結界は一度通り抜けると、立て続けに通り抜けることが叶わんからな。……ユーキよ、仮に我がそのような事を申したとして、その時の我の言葉はおおむね正しいぞ。我はもしかしたらその事を念頭にそなたにそのような話をしたのかも知れん」

「カイラルプスの創った時空間結界は、連続して通り抜ける事が出来ないって事ですか?」

「そうだ。カイラルプスの時空間結界は11属性全ての素体の力を利用する必要がある。それらの素体を使う我の素体力も然り、カイラルプスの複雑極まりない結界も然り、短時間で再度突入するには問題が大きすぎるのだ」


はーん。

そうだったのか。

確かに俺が初めてこのコルニアへ来た時に触った十字洞窟のあの壁は、一度は俺の手を呑み込みはしたけれども、腕の途中で止まってしまい、それ以上の入り込みを拒まれたような感じを持った。


「あれは結界が安定していなかったと言う事なのかな?」


もしその解釈が正しいのであれば、あれから随分と時間は経っているのだ。

俺があの結界を利用する事にはなんの問題もないと受け取れる。

何の問題もなくあの壁の向こうへ行けるはず……だ。

そう言う事になる。


うーむ。

見えて来たかな?

俺の進むべき道……。


あのカイラルプスの時空間結界の中に入り込みつつ、地球の場所と時間、日本のあの森と夜の時間を探し出せばいいのだろうか?

とりあえずその先の事は、あの十字洞窟の結界の壁の中に入り込めてから考えればいいのかな?



―――――――――――――――



「ねえラーン。僕も姿を得たいのだけれど……どうしたら得られるのかな」


俺の考えに結論が見えてきた頃、バビ達がこなれた会話をし始める。


「ちょっとー!バビー。それは都合が良すぎるよー。サフィだってまだ姿を得ていないんだよ」

「バビはまだ、ずっと、先」

「僕、早く姿を得たいなあ……」

「バビ、私だって姿が欲しんだよ。ユーキに初めて会ったのはサフィなんだから、サフィが一番に姿を得たって全然おかしくないんだよー。もう、何で私変わらないんだろうねー」

「うふふっ。私はユーキにキスされて変わったのです。それは甘い、甘いキスでした。…うふふっ」


ピシッ!とした気配の後の4匹の驚き。


「っっっうええええーーー!」精霊×3匹

「っえーーーー!」俺×1匹


ペロッて舌を出して、ラーン……。

その言い方ワザとかよ。

俺からキスって、そんな事言ってたら人目もはばからずしまくっちゃうぞ。

いいのかよ、ラーン。

キラーンと光を放つ俺の瞳。

飢えた俺に狙われてしまったラーン。

獲物を狙うハンターは精霊王の力を持ち、世界樹の枝棒を片手に持った、なんちゃってチート人、俺だ!


さあ、さあ、さあさあ、覚悟しいやラーン。

今からその可憐な唇を……ゴクリ(のどが鳴る音)。


『タッタラッターン…』どこからともなく狩りのテーマが流れてくる。

忘れ物はないか?

ない。

砂漠には街をも壊す怪物がいるぞ。

大丈夫だ。

火山には夫婦で生きるドラゴンもいる。

問題ない。

俺は出来る。

やれば出来る。

3匹のお供もついて来る。


本日のハントはコルニアの空の女王、白銀の鱗を持つアネゴドラゴンだ。

『数多の龍のその上の』って嘔われるアネゴ龍。

今日もエフェクトが眩しいぜ。

狙うは唇。

今日こそはあの素敵な唇に……?

あれ?

もう少しであの唇に……。

ちょっと濡れて光って見えるあの大きな牙の……。

あれ?

レスリーに突撃していく猫耳テネアが健気に言霊(ことだま)爆弾を投げつけ、サフィは地面でがさごそガサゴソ、龍フン探し……ふン(鼻笑)。

モヤッたバビが虫のようだ。

網に引っ掛かるなよ…って…ん?ん?。

――フンか?いい肥やしになるよな。

いや、あれれ?…違う、違うぞ?

レスリーの唇狙って……どうすんの?

ラーンの唇……。

ラーンの唇は?


「そう言えばラーン、お主のその素体の色は何なのだ。我には時空間素の色が混ざっているように見えるのだが」


ああ、あ…危ない。

楽しい世界に飛んでいた。

脳内で時空間転移が発動していたようだ。

――単なる妄想な――

レスリーの声で現実に戻ってくる俺。

レスリーに近づくラーンに、先の脳内映像がリンクする。

猫耳だったテネア。

猫耳ね。

血肉の通ったモフモフの耳……ピョコピョコ動いたりして。

たぶんラーンも似合うのだろうな。

ぬいぐるみでいいから一体欲しい。

ん?

俺と目が合ったテネア。

『ユーキ、どうした、の?』と言わんばかりに、顔が近づく。

近い、近い。

顔近い。

襲っちゃうぞ、コラ。

俺の18禁な妄想を余所に会話は進む。


「そうなのです。私はユーキの色に染まってしまったのです。今の私は水を司る精霊でありながら時間素と空間素を得てしまっているようなのです」

「むう、何とした事よ。よもやと思って見てはいたが、精霊王、黄金則の力とはやはりものすごい物であるな。精霊晶を通さずに別属性の素体を宿させるなど前代未聞だぞ。我においても聞いたことが無い」


テネアの顔が近くて、人の話を話半分で聞いていた俺。

大事な言葉を耳にした気がする。

そうだ。

精霊晶の価値は己の素体を透して、別の属性魔法を発現させるものだった。

普通であればラーンの変化は、精霊晶を用いなければ不可能な事なのだろう。

テネアとラーンの唇と猫耳に後ろ髪を引かれるような、相当な未練を感じつつも、俺は自分の力に改めて感じ入る。


なんちゃってどころではない。

本当にチートなんだな、この力。


次回サブタイトル予告です。

~レスリーの謝辞~

いつも通り、深夜の1時に投稿します。

お楽しみに。

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